Javascript is disabled.


アーキテクトルーム

■住まいの話題[613]:共生する家
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
求められる住宅の形は時代によって様々ですが、私が日々の住宅設計を通して感じている事を「共生」というキーワードで考えてみたいと思います。

「共生」という言葉は、生物学の用語から派生して様々な「共に生きている」場面で広く使われています。「共に生きる=共に棲む」家に当てはめた場合、二世帯住宅やペット共生住宅、環境共生などの言葉が浮かんできます。多様な個性や価値観がある一定の空間の中で共生するためには、お互いがストレスを感じない程度のちょっとした気遣いと思いやりで皆が快適に暮らせる事が重要で、個々がくつろげプライバシーが守れる個のための場と、共に棲む事によって生まれる新たなエネルギーや活気を楽しめる共有の場を明確にする事が大切と考えます。ここでは「共生」をテーマとした2件の家を紹介してみたいと思います。
ペットとの共生
「荻窪の家」は2匹のワンちゃんとご夫妻のための家です。珪藻土の壁・天井、無垢材のフローリングなどで空気環境と居住性・メンテナンス性を高め、毎日の散歩用に玄関脇の足洗い場や、皆のあつまるLDの一角にワンちゃんのケージコーナーを設ける事で、快適に楽しく共生生活を送っていらっしゃいます。いつも一緒にいたいワンちゃん達も眠くなると、自らケージに入っていくそうですので安心できる場なのでしょう。

「日吉台の家」では、ネコちゃんが家中どこでも自由に行き来できるようにしているので、季節や気分によってその時一番快適な居場所を自ら探し当てています。彼女の居るところは本当にいつも気持ちがよいです。工夫した点は、何かの時に逃げ込める隠れ家を高い所(ロフト)に作る事と、落ち着けるトイレの置き場所です。
荻窪の家:緩やかに領域を
示すことで街並みと共生する。
日吉台の家:夜は家の中のあかりが
行灯のようにやわらかく周囲を照らす。
街並みとの共生
「荻窪の家」は、比較的密集した住宅街の北と東が道路に面した角地に新築した家です。南側木戸の奥には、周囲からの視線を気にせずに居られるウッドデッキや物干し場のあるプライベートガーデンを、道路沿いには、四季折々に楽しめる木々や草花を植えた塀のない開放的なオープンガーデンを計画しました。周囲に対し垣根を設けなかった事で既設の街並みに広がりを与えると同時に、散歩中の方や近所の方達とも自然にコミュニケーションの輪が広がっているようです。

対照的に「日吉台の家」は、周囲に対して閉じながら街並みと共生する家です。長年住んでいた敷地を分割して元は庭だった道路側部分の建替えです。周囲を見下ろす雛壇状雍壁の上に位置しているため、互いの視線の交錯と道路からの音を遮るために壁で覆う計画としていますが、コーナーをガラスブロック壁とする事で透過性をもたせ、また重量感を消すことで周囲に溶け込ませたいと考えました。竣工間近のある日、近隣にお住まいの方から「通勤で毎日通っていますが角を曲がって明かりがついているとホッとします。でき上がるのを楽しみにしています」と声を掛けて頂いた事をうれしく思い出します。

また、建物周囲は可能な限り植栽スペースとし、建替え以前の土地の記憶として近隣の方からも親しまれていた桜の木を新たに植えました。植栽計画はまだまだ進化中で、コンクリート剥き出しとなってしまった雍壁には、ツル性の植物を誘引して近隣の緑と繋がるグリーンのカーテンが成長しつつあります。

住まう場所を決めるときには気に入った街並みや雰囲気があると思いますが、住み始めたら今度はその景観をつくる一員となります。皆が少しの気遣いや思いやりで街並みとの共生を考えていけば、どんどん素敵な街並みが広がっていきそうです。

様々な空間を内包する「家」もまた、都市や街並みの中で周囲と共生していると考えられます。周囲に与える影響、其処に住まう人と人あるいは動植物との関係性。各々個性を発揮しつつ良い意味で影響しあっていく、内も外も皆が気持ち良く暮らしていける「家」を造っていきたいと思っています。
住まいの話題[613]執筆者
■朝倉 美穂(あさくら みほ)/ a.m.a design建築設計事務所



ページTOPへ