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アーキテクトルーム

■住まいの話題[616]:家づくりの理由
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どうして家を建てるのか
家を建てる人と初めてお会いする際、まずは顔合わせ。ヒアリングと称していろいろとお話をさせていただきます。もちろん、私たちのことを知っていただきたいということもありますが、同じくらい重要だと思っていることがあります。それは「なぜ家を建てるか」という理由を知ることです。

家を建てる理由は、お施主様によって様々です。子供が小学校に上がるので部屋数が足りなくなったとか、娘が結婚して同居することになったので二世帯住宅にしたいとか、いろいろあります。あるいは、初対面ではなかなかいいにくい家庭の事情があるかもしれません。
必然性の有無
理由には大きく分けて、必然性のある場合とない場合が考えられます。「ある」場合とは、絶対に家を建てなければならない状況、たとえば天災などの不慮の事故で家を失った、または相続の関係で敷地を分割して建て直さなければならない状況などが考えられます。「ない」場合では、マンションか家を建てるのに迷っていてたまたまよい土地があるので建てようかとか、親の敷地に余裕があるので将来的なことを考えこちらに計画しようかなどがあります。

どちらも、家づくりのきっかけとしては一般的なものですが、ここでの大きな違いは何かというと、家づくりを考えはじめる時期・余裕ではないかと思います。必然性がある場合は比較的時間の制約があり、またその現実に直面してからスタートするケースがあるので、期間を意識して進める必要があると思います。逆に必然性がない場合は、その制約がないことも多く、ゆったりと進めることが可能です。
建築前の風景:
相続のために建替えることになった敷地
建築後の風景:
昔の擁壁が以前の面影として残っていく
共同作業が鍵
では、その必然性によって設計者が設計の考え方(手法)を変えることがあるでしょうか? どんなプロジェクトでも時間の制限がないものはほとんどありませんし、全体工程をにらんでのスケジュール調整は当然のこととなります。必然性がどうであれ、設計手法にはあまり影響しないのではないかというのが私の考えです。

なぜなら、お施主様一人一人の個性は違っていて、たとえ時間的制約があったとしても、家づくりに情熱をもやして逆に短期間で集中していいものを作っていこうという人もいるし、また時間があるが故にただ漫然と家造りをとらえている人もいるからです(そういった場合はなかなかうまくいきませんが・・・)。

ではなぜ私が「家づくりの理由」に注目するのか。それは、家づくりが設計者とお施主様との共同作業であるがゆえに、なぜ家をたてるのか?を知ることこそが、共同作業の第一歩だと思っているからです。家は芸術作品ではなく、そこに住まうこと、使うことで成り立っていくものです。その基点となる部分(どうして家を建てることになったのか?)は、長い年月を経て貴重な思い出になるものです。だからこそ、できるだけ深くそのことを掘り下げ、そして想像するかで、出来上がる建物はずいぶんと違ったものになるはずです。

家づくりは多くの人が介在して成り立っています。特に設計者は形作っていくという意味で責任ある立場です。提案をしていく中で、時にはお施主様と意見を戦わせることもあるでしょう。いろいろな出来事がありながら最終的に満足いただけるレベルの建物にすることが設計者の努め、また求められる作品性の高さにつながるものだと信じています。

家づくりの理由は必然性の有無に関わらず、その奥にはもっと深いものがあると思います。それを常に想像しながら、家づくりの視点を見定めて設計していきたいと思います。
住まいの話題[616]執筆者
■朝倉 元(あさくら はじめ)/ a.m.a design建築設計事務所



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