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アーキテクトルーム

■住まいの話題[654]:住宅と家具
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私が住宅を設計する時に、とても大切にしているプロセスがあります。それは施主と一緒に「家具」を探すことです。ダイニングテーブル、椅子、ソファといった「家具」を探すこと・・・完成した新居に「家具」を新調するのは当たり前に聞こえるかもしれませんが、私の設計の場合は”普通”とちょっと違うんです。

設計する前に家具を選ぶ?
何が違うのか? それは家具を選び始める”時期”なんです。設計のご依頼があって、建物のおおまかな形が決まるかどうかの頃、つまり、かなり早い時期に一緒に「家具選び」に出かけます。

ショールームに行くことが多いのですが、それに限らずアンティークショップや、中古家具のお店に行くこともしばしば。一日に複数のお店をまわったり、翌週にも他のお店に行ったり、場合によっては首都圏以外にも出かけて行きます(必要とあらば日本から出ても良いと思っています)。
街に出ること
本来であれば設計作業に集中しなければいけない時期に、わざわざ家具を見に行くのか。その理由はいたって簡単。家具選びを通じて施主を理解するとても良い機会だからです。つまり家具選びは、家具選定が目的ではなく、私にとっては大切な「聞き取り作業」の時間なんです。

部屋の中で、聞き取りをしていると、まるで警察の「取り調べ」のような時間になってしまいますが、一緒に街に出てたくさんの椅子やソファ、楽しいデザインプロダクトや豊かな空間に囲まれながら、自然とお互いに自由な会話が始まってきます。私は家具が好きですので、その家具の歴史やデザインの話など、話すネタが尽きることはありません。また合間にカフェで休憩でもしながら、設計とは関係のない話に花が咲くことも多々あります。
「小日向の仕事場」ダイニング:天井高や
窓の大きさ・位置を家具との関係で慎重に検討
施行中の「南沢の小住宅」内観イメージ:
ダイニングテーブルは家具デザイナーに依頼
世界観を理解すること
そんな一見、無駄な時間が住宅設計には必要なんです。また、家具を通じてその人の好みもよくわかるのです。例えばソファひとつとっても、「深く沈み、包み込まれる心地よさ」がお好きな方もいれば、「固くてバウンドするようなしっかりとした」ものが好きだとおっしゃる方もいます。どちらも好みなので、私が強引にどちらかを勧めることはしません。

むしろ、家具を通じて、早い時期にその人の好みがわかると、「あぁ、こういった世界観が好みだったんだ!」と、心の中で「設計の軌道修正」ができるのです。そうすると、後々の床材や壁の色や材質といったご提案を、”外れなく”行うことができます。ダイニングの椅子やテーブルの話をしながら、いつのまにか照明の話をしていたり、子供の教育の話をしていたり、横道にそれながらも住宅の本質にせまる話をどんどんと聞き出せるのです。
建築+家具=空間
聞くばかりではなく、もちろん「家具」選びを通じて、私のイメージする空間を理解して頂きます。材料のサンプルを家具と並べてみたり、部屋の大きさをショールームで「再現」してみたりもします。また、椅子であれば座面の高さやテーブルの高さなど、家具は数ミリ~1センチ単位の感覚でできているので、建築にも同じようなセンチ単位の感覚をもって設計することになります。窓の高さや、天井高さ、照明の位置など様々な寸法体系の精度を上げてゆくことが必要です。さらに素材選びも重要になってきます。重たい無垢なのか、軽い化粧板なのか、素材の主張は空間設計を大きく左右させます。

そのように家具と建築の持つ世界観を双方織り交ぜながら設計すると、その境界線が消えて、新たな世界観をもつ”空間”となります。常に新しい世界観を持った空間を生み出し、本当に居心地の良い家をつくりたいと考えています。
住まいの話題[654]執筆者
■若原 一貴(わかはら かずき)/ (株)若原アトリエ



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