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アーキテクトルーム

■住まいの話題[670]:様々な世界観の旅
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陶芸のこと
最近、陶芸教室に通いはじめました。陶芸教室というと、皿やコップ作りなどを習うイメージを持っていましたが、通っている所はとても自由な雰囲気で、私自身は家の形を模した「家型」のオブジェ作りをしています。

もともと家型が好きで、ライトビレッジというアクリル製の家型オブジェをデザインし、ミュージアムショップなどで販売しているのですが、ハンドメイドの一点ものに対する興味、また土の柔軟性にとても興味がわき、陶製の家型にトライしてみることにしたのです。土という素材で出来ることを考えると色々なアイデアが浮かび、毎回異なるパターンを試しながら陶製の家型に取組んでいます。
趣味は衣食住
ところで陶芸への興味は、もともとは食事をするための器に対する興味から始まりました。おいしい食事が器との組み合わせで様々に変化することに感動し(食べるのが大好きなのです)、器の楽しさにはまったことがきっかけです。

私の仕事は生活のための箱作りですが、設計の仕事を続けるにつれ、家具や物、食器などの、箱の中に置くものが生みだす雰囲気もまた大切で、そして面白いところなのではないかと、次第に強く感じるようになりました。例えばキッチンでいつもどのような料理を作り、それをどういった器に盛りつけるのか。テーブルに敷くクロスはどのようなものか? 要するに部屋を完成させる大切な仕上げは、衣食住そのものだと思うのです。そこには住まい手ごとにオリジナルで素敵な作法があるのだと思います。
陶製の家型 ライトビレッジ
様々な世界観との出会い
この仕事を通じて、自分が今までに持っていなかった衣食住の世界観に出会うことは本当に楽しい体験です。特に仕事で直接対話することになるお施主さんからは、設計を通じて様々な世界観を教わり、個性あふれる素敵な世界に連れていってもらっています。お施主さんとの対話を通じて自分の中で世界観が広がる瞬間ほど楽しいことはありません。時には少し変わった趣味、偏愛など、普通ではない部分に出会えたりし、深くかかわるからこそ出会えるユニークな世界観もまた格別なものがあります。

医者の不養生といってしまうとずるいのかもしれませんが、私自身はなかなか自分の理想的な生活が出来ているわけではありません。でもだからこそ、その人なりの生活を実現しようとしている方にとても共感し、設計者としてサポートしたいと感じています。
設計者の技術や表現力は後方支援に
ところで、独立前に私が勤めていた事務所の所長が言っていた話のなかに、こんな映画にまつわる話があります。私達が映画を見る際には、その作り方や撮り方、シーンの繋ぎ方などの映画にまつわる技術や方法を見ているわけではなく、純粋にストーリーや全体の世界観を楽しみますよね、という話です。これを私なりに建築の設計にあてはめると、設計者自身の思想や、技術、表現に対する癖や腕自慢みたいなものはとりあえず後ろに置いておき、その磨いた腕前を、お施主さんの世界観を実現するために徹底的に使うべきなのではないかと思うのです。

お施主さんからいただいた要望を、積極的に楽しみ、うまく取り込み表現として倍返ししたい。その倍返しを生み出す部分に、作り手としての爽快感があるように思います。

これからも難しい要望や、体験したことのないジャンルであるほど張り切って向かい合っていきます。それが、私に様々な世界観をもたらしてくれるお施主さんへの恩返しにもなるのだろうと感じています。
住まいの話題[670]執筆者
■寳神 尚史(ほうじん ひさし)/日吉坂事務所



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