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アーキテクトルーム

■住まいの話題[677]:創造力より想像力
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建築って作品ですか?
たいていの建築家は自分の設計した建築のことを「作品」って呼びます。住宅なら住宅作品とか…。でも、私はこの言い方に少し抵抗を感じています。人の金で人のためにつくる=純粋芸術ではないから? そういう理由もありますが、私の場合はもう少し建築家としての個人的なスタンスの問題があって、この「作品」という言葉を使うことを避けています。

数年前までは、私も「普通?の建築家として作品を創り上げるのだ!」と思っていました。でも、他より抜きんでることに精力を傾けているように見える建築界に疑問を感じ、同時にそういったことを目指していたはずの自分の設計指針の軸が揺らぐことに…。この問題は今後の自分の人生を考える上でも重要だぞ!と感じた私は、とりあえず15年間勤めていた設計事務所を辞め、いろんなものを見たり聞いたり読んだりしながらこの問題についてじっくり考えることにしました。

そしてその結論とは、(まだうまく説明はできないのですが)新しいものを「創る」よりも、そこに在るべき答えを「探す」という気持ちで設計に取り組むということ。当然「作品性」なるものは薄まり、気付かれないことを善とするデザインという一見矛盾するような姿勢なのですが…。でもこの地味~なスタンスで私はいくのだ! それでいいのだ!とバカボンのパパと同い年の41歳になった時に決めたのでした。

因みに、独立して最初に手掛けた住宅(鎌倉T邸)の設計スタート時に「作品はつくりません!」と住まい手に宣言したところ、住まい手の眉がハの字に…。ローコストだから、条件が厳しいから「作品」はできないという意味と思われたようです。最後は私の言わんとすることを理解し共感して頂き、出来上がった住まいと家族の想いがマッチした生活をしており、(今のところ)私のスタンスが間違っていなかったと思える良い経験となりました。
鎌倉T邸:外観 鎌倉T邸:リビング
デザインって何ですか?
似たような話ですが、例えば見た目はちょっとカッコ良く、だけど使い勝手はイマイチだったり、お値段が割高だったりするモノがありますよね。そういう時に多くの人はこう言います。「それはデザイン重視だから…」と。でもこの言い方はデザインの意味を取り間違えていると思う。仮にこの使い方が正解なら、私はデザイナーではない!と言いたい。ところが、ほとんどの人は「デザイン」という言葉を上記のようにとらえ、そして建築家をその意味で「デザイナー」だと思っている。家づくりを考えている一部の人、いや大半の人が、建築家による設計を敬遠する理由ってこういうところにあるんじゃないでしょうか。

ここで前半の話に戻りますが、「作品」をつくるという気持ちが強過ぎる建築家は、上述した意味の「デザイナー」に陥り易いように思います。私から見ても、特に建築雑誌を賑わすような「住宅作品」に限ってこの意味の「デザイン」が多い? でもそういう建物は少数で、少なくとも私の廻りの建築家は地に足の着いた本当の意味のデザイナーが大半なので、もっと建築家の設計する家のシェアは広がるべきだと思っているのですが…。

そのためにも、建築家は自分の「作風」とか「個性」とかを声高に言わないで、住まい手や敷地環境などあらゆる設計条件の中から必然的に出てくるデザインをイメージし答えを探し出すという姿勢で取り組んだほうが、社会的に正当な理解を得る上でも有効なのではないかと…。

でもまぁ~、建築家も人それぞれ。とりあえず私としては、住宅の在るべき姿をより深く正確にイメージできるようになりたい。だから今、私の住宅デザインにとって大切なのは、創造力よりも想像力だと思っています。
住まいの話題[677]執筆者
■遠藤 誠(えんどう まこと)/遠藤誠建築設計事務所



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