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アーキテクトルーム

■住まいの話題[726]:五感で感じること
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建築はシェルターである、と言われています。でもそれだけなのでしょうか?
自然の動きから
作業のしやすさ、動きやすさを指して「動線が良い・悪い」という言葉を使います。これは人間の“動き”に対して使われることがほとんどですが、自然界の“動き”にも注目してみることで、暮らしの豊かさは、ぐっと変わるのではないでしょうか? 生きることは自然と共存することでもあり、家は地球の上に建っているのですから。

例えば、家の中を風が抜ける心地良さ。これはどんな土地に、どんな建築が、どんな向きで、どんな開口があるのか、風が木々や水面を通って来たかによって、まったく違ったものになります。

私の事務所(左写真)では、夏の日に緑のパーゴラを抜けてくる風がとても涼しい。視覚的にもまぶしさが軽減されているし、何より空間がとても贅沢に感じられるのです。気候の良い時にその下で食事をするのが楽しみで、リゾート感覚満点なのです。まさに一石二鳥。そのおかげか、エアコンをあまり使わないので、環境に貢献している意味では一石三鳥ですね。
光と空間と素材から
スペインの、アルハンブラ宮殿内にあるパラドール(国営ホテル)に宿泊をした時のこと。その日はとても美しい月夜で、月明かりに照らされたパティオはシーンとした無音の世界で光につつまれるのみ。今でもあの感動は鮮明に残っています。

この緊張感はその土地の持っている力に加え、空間が囲われていること、仕上げの素材が白っぽいことも大きな要因であったと思うのです。あの床の石が黒かったら、芝生だったら、また全然違う印象だったに違いない。形の創り方や素材で、空間は色々な表情を持つのだということ、光というものは空間にドラマを与えてくれるものなのだ、ということを強く感じたのです。
アトリエ:古い一戸建てを一部改装。
緑に囲まれて心地良い風が吹き抜ける。
ATAMI VILLA:マンションリノベーション。
素材とテクスチャーで寛ぎを演出。
心地良さの連続から
ATAMI VILLA(右写真)はマンションリノベーションです。セカンドハウスなので、リゾートホテルのような心地良い空間を創りました。実をいうと私、「旅=ホテル」と言っていいくらい泊まるのを楽しみにしています。これは!というところにあたった時は大興奮で、メジャー片手に測量開始です。と余談はさておき、ここでは寛ぎ感を出す素材やテクスチャーにこだわりました。でもラフすぎない大人の空間。

ソファの生地は織りが大きい綿、壁も織りのクロスや左官で仕上げ、家具は無垢材、そして小型クッションは光沢の生地で作ってもらいました。空気を内包した柔らかさと凛とした光沢、1枚の大きな布でできたゆるやかなドレープのカーテンは、寛ぎを与えている大きな要素です。そして空間に色気も与えています。

無垢材のキャビネットは、ダイニングテーブルと窓の間に設置したため、高さをテーブルとあわせて70cmで製作しました。一般的に85cm以上の高さのキャビネットが多いのですが、ほんの15cm下げてあげるだけでダイニングチェアに座っていても、外とのつながりが遮られた感覚を避けることができるのです。

このような、ちょっとした感覚の積み重ねが空間の質を決めていくのです。心地良さの連続によって得ることができる感覚的な喜びこそ、暮らすことの愉しみであり豊かさだと考えています。五感をフルに活用しましょう。

建築は本当におもしろいですね。
住まいの話題[726]執筆者
■久保田 恵子(くぼた けいこ)/ 5’st(ゴダッシュエスティ)一級建築士事務所



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