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アーキテクトルーム

■住まいの話題[734]:憧れの高台
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小さい頃に映画「魔女の宅急便」を観て以来、主人公キキが下宿するパン屋さんにずっと憧れを抱いてきました。あの高台に位置し、眼下には街並みと海が広がる景色の見えるところに住みたいと。

おそらく「太陽」や「風」や「眺望」などの爽快感や開放感に、純粋に気持ちよさを感じているからかもしれません。そして、旅や出張で行く先々で、「あ、ここはあの風景に近いな」とか「やっぱり高台は気持ちいいな」と思うことが多いように感じます。

独立して間もない私ですが、幸いにも設計のご依頼をいただいている住宅がこの高台に位置し、街並みと海が広がる敷地なのです。それも2件も。
ひとつは「海を望む家」
敷地は福岡県福津市の高台に位置し、眼下には津屋崎の街と玄界灘の海を一望することができます。そこに普段はイタリアの田園地帯に住むオーナーの日本の別荘としての計画です。

絶景を見てくれと言わんばかりのこの土地に、オーナーは当然のごとく一日中どの部屋からも海景色を見ていられる家にして欲しいと要望をされました。私もこれには強く共感するとともに、こんな最高の敷地で設計ができることに喜びを感じました。

そこで私が考えた案は、隣地境界なりに扇形に開く大きな2枚の壁を立て、その間に奥行きの異なる2枚のスラブを架け渡し、海に向かってラッパように広がった形状のトンネルにすることで、隣家や前面道路からの気配を気にせず、ただただ広がる景色を望むことができる家です。

どの部屋からも平等に景色が眺められるように、景色と並行に各室を並べています。トンネルになっているので、どの部屋にも陽の光と風が抜け、まさに爽快な生活ができます。景色や太陽や風を感じながらここで生活することで、住まい手はその場所に溶け込んで一体となる感覚を得られるかもしれません。
海を望む家 牛窓の縦格子
もうひとつは「牛窓の縦格子」
敷地は岡山県瀬戸内市の牛窓です。東京を離れ、この地へ移住する夫婦のための終の棲家の計画です。こちらも高台に位置し、眼下には牛窓の街が広がり、東・南・西に瀬戸内海が広がる敷地です。ゆったりとした瀬戸内の海と島々を眺めていると、時間が経つのを忘れてしまいます。

ここも当然ながら「自分が住みたいなぁ」と思ってしまうくらいの土地で、設計ができることに幸せを感じてしまいました。 ただし、こちらは設計をしていく上で慎重に解決しなければならないことがありました。

隣地とは南北に段々となった関係ではあるものの、いくらか隣家の視線は気になるところで、これを解決した上での設計が必要不可欠となりました。そこで私が考えた案は、メインの生活領域を南北の隣家の視線が通らない2階に上げ、南北に二枚の縦格子により構成される壁面を立て、細長い空間に各室を並べる構成としました。

そしてこの壁の縦格子は全て建物の柱の役割も兼ね、その柱と交互に梁を組む桁のない構造としています。これによって、室内には光と影の連続した輪が生まれ、住まい手は風景に溶け込んだ感覚を覚えることになり、南北の隣家との関係を曖昧にし、プライバシーを守りつつも周りに広がる海を感じることができるわけです。

また、屋根は切妻とし深い軒とすることで、夏の瀬戸内海の強い陽射しを遮りつつ、内外を緩やかに繋ぐ役割を果たします。 牛窓の穏やかな気候、海からの風、ゆったりとした時間の流れを感じながら、これからの夫婦の人生を堪能できる家となることを望んで設計を進めています。

以上のように、2件も憧れの条件の土地で設計ができることは幸せなことだと感じつつ、住まい手に感謝し、お互いに幸せを共有できることを楽しみにしている今日この頃です。
住まいの話題[734]執筆者
■原田 将史(はらだ まさふみ)/ レインボーアーキテクツ



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