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アーキテクトルーム

■住まいの話題[735]:「敷地」としてとらえる
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住宅の改修を計画する場合、多くの人が「間取」という言葉を用いて話を進めるかと思います。間取、それは考えていくのは楽しく大事なものですが、改修の計画を進める場合、どうしても機能優先の話に陥りがちです。

例えば、キッチンと洗面室の位置関係がこうであった方がよい、など。考えれば考えるほど、風や光といった人が心地よいと思う感覚が後回しになったり、そこで過ごしたい時間が何であったか、忘れられてしまうこともあります。

まずは、もっとおおらかに進めてもよいのです。現時点での完璧な間取も、経過する時間には抵抗できません。人のカラダや家族の構成・関係は変わってゆくものです。
まずはじっくり観察
改修の計画を立てるには、建物が持つ「素」の状態を知ることが、空間を豊かにする最初のポイントだと考えています。構造のフレーム、つまりスケルトンのみをイメージし、単純に屋根のかかった「敷地」として見るのです。RC造のマンションであれば、あえてこんな感想で現状を語ります。

接道:「接道位置(つまり玄関)が部屋の中心なのか・・・」。水道・電気・ガスなどのインフラ:「この土地はガスなし、と」。高さ制限:「お、一部高さ2,800mmまでいける(ここに隠れ部屋をつくろうか・・・)けど北側は2,100mmまでか」。日当り:「西側の建物が低く、光が入ってきそうだ」。風通し:「ここは南西方向からの風が入ってきて気持いいね」。
暮らしのシーンをいろいろ妄想
ちょっとバカみたいですが、楽しくなってきせんか。そこから自分あるいは私たち家族、の暮らしを考えていきます。例えば、お風呂で過ごす時間を最初に考えたりしてもよいでしょう。どんな位置にお風呂を置いて、外を眺め気持ちよく過ごすかと。

住宅をつくるとは、間取を組合わせるだけではなく、眠る、食べる、話す、読む、見る・・・、そういった人が暮らす基本が、どうあってほしいかを考えることです。サッシの位置よりも後退させた空間を「庭」とし、寝転がったり映画みたり、そこに面して「縁側」を設定してくつろぎたい、なんて計画が考えられるかもしれません。そのうちバルコニーから庭にお客さんがやってきて、縁側でお茶をするなんて風景があったらおもしろいですね。ひとつ事例を挙げてみたいと思います。
ときわ台の住宅:内観 ときわ台の住宅:改修前後の平面図
ときわ台の住宅の改修では、正面のスペースを外部のように扱い、右手は母屋、左手は離れ、としています。そしてその中間が玄関と中庭を兼ねたような空間になる。飛び石で2つの棟をつないだりと、スケルトンの中に「平屋」を配置するような感覚です。現在は家族の趣味の空間として機能していますが、将来は書斎になったり、子供部屋が計画されるかもしれません。
豊かな暮らしをつくるために
あえていろいろ言葉を置き換えずとも、当たり前の要素として捕らえている方もいますし、実際マンションの区分所有の間取、という空間から解放されたような事例もみられるようになってきていると思います。しかし、ここで書いてきたような「住まいを編集して住みこなす」といったことが、まだまだ一般的に浸透しているとは言えません。

これからは、経済情勢も含め、身のまわりを取りまく環境から、かつてのように多くの人が理想の敷地を手に入れ、理想の住宅を新築する、という目標を持つことはできないかもしれません。ですがこのように、限られた空間であっても、実際の敷地に見立てるなど、想像力を働かせ、自分にとっての心地よい生活とは何かを考え、計画することで、「住む」「暮らす」ということをもっと楽しく豊かに広げてくれる可能性があると思っています。
住まいの話題[735]執筆者
■石井 大吾(いしい だいご)/ Daigo Ishii Design



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