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アーキテクトルーム

■住まいの話題[746]:住宅の決まり方
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建築家とどのように住宅を決めていくのか? 誰もが不安に感じる点ではないでしょうか。最近設計した住宅の打合せの様子を少し踏まえながら、住宅の決まり方の1例を紹介してみたいと思います。
≪予算としての住宅の決まり方≫
僕は不動産会社に勤めていたこともあり、知人を介してマンション購入で相談を受けたことが、後にクライアントとなるご夫妻との最初の出会いでした。幾つかマンションを内覧したものの、皆似ていてパッとしていない様子でした。しばらくお伺いして住まいに関する高い興味が既知の不動産に満足感を得られないのだと感じました。スキーが趣味で車を保有していたため、マンションでは車庫代が別途必要になることから、月2万円の20年分ということで、500万の追加予算を見込むことで、土地を購入し建物を設計する方向で考えてみたらいかがでしょうか?と相談しました。予算的に建築家に依頼することを予想もしていなかったこともあり、驚いていらっしゃいましたが、できるならお願いしますということになりました。
≪不動産としての住宅の決まり方≫
予算に適し環境の良い土地を探すことは簡単ではありません。建築基準法を照らして建物の規模や予算を考えるのは不動産屋さんにはできないため、僕らが土地探しをご協力することは少なくありません。東京・千葉・神奈川を横断縦断しながら、50箇所程度見て回りおよそ1年間が過ぎました。大きな公園を臨む、7m道路に接した25坪の土地が見つかりました。無事購入となり、正式に設計のオファーを頂き、住宅を土地+建物+設計という不動産として進めることが決まりました。
≪打合せとしての住宅の決まり方≫
土地探しで1年間何度もお会いし、親しくなっていくに連れ、多くのコミュニケーションを取ることができました。ご夫妻も建築にかなり興味をお持ちになり、僕の会話にでてきた本を読み、独自に建築セミナーに参加するなど、建築がそんなこともできるのか、そういう建築もあるのかと深く学習されたようです。そこまでされるクライアントは少ないですが、僕はできる限り共に悩み共に設計していくような打合せを心がけています。住まいへのご要望は、家族を感じられるワンルーム的な家、楽しく感じる段差、大きなキッチンということでした。そして、アデザインの代表作になるような設計をして欲しいという難しいご依頼も加わりました。この信頼や期待は、どこかで見たようなモダンな住宅というよりは、現代的な住宅というテーマを与えられたように感じました。
梅島の建物:外観 梅島の建物:アクソメ図
≪非近代としての住宅の決まり方≫
現代を定義するために、そもそもご夫妻がパッとしなかったマンションなる建築を少し考えてみます。現在のマンションは基本的に近代思想の産物と言えます。一つにはインターナショナルスタイル(国際水準化された様式)が挙げられ、これは地域性や環境をおざなりにしていると言えます。もう一つに食寝分離(51C型等)から派生したnLDKが挙げられ、今回のように家族をワンルーム的に感じたいという時に最適な形式ではなくなる場合があります。
≪環境としての住宅の決まり方≫
僕は、ご夫妻にこの住宅が建って環境が良くなったと言われるような建物が良いと説明しました。そのために目の前の公園に影を落としたり圧迫感を与えないように自発的に建物をナナメにカットしました。公園側だけでなく近隣に陽が入るようにもカットもしました。かなり自虐的な行為に見えますが、公園や近隣は、使われていることで、治安を悪化させず、生き生きとした環境となります。我が物顔で公園と対峙するのではなく、公園の付属施設のように建つことを提案しました。
≪空間としての住宅の決まり方≫
リビングや寝室という室名や行為を決めていくのではなく、窓が大きな空間、窓がない空間、天井の高い空間、天井の低い空間、景色の良い空間、朝陽の入る空間といった異なる性格の室内空間を用意し、今日は朝陽が入る場所で朝ご飯しようとか、夏は涼しい場所で寝ようと暮らしや行為を空間に委ねてみたらどうでしょうか?と提案しました。

乱筆ではありますが、こうして梅島の建物がまとまっていきました。当初建築家に頼もうと想像もしかったご夫妻が、マンション購入の予定から車庫付き1戸建てで希望が詰まった住まいを手に入れるまでの様子が少しはお伝えできたと思います。住まいに関心のある方は、一度建築家に相談されることをお勧め致します。
住まいの話題[746]執筆者
■斎藤 由和(さいとう ゆわ)/ アデザイン有限会社



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