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アーキテクトルーム

■住まいの話題[761]:気持ちのいい家って何でできている?
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気持ちがいい時
例えば、そよ風が桜の花びらを運び、さらさらと吹きぬける春の昼下がりに散歩をしている時。広い原っぱに大の字で寝っころがり大きな空を仰ぎ、ふわふわと流れる雲を見る時。真夏の海、浮き輪でぷかぷかと浮いて流れに身を任せている時。そんな時、気持ちよさを感じます。以下では、気持ちのいい空気をどのような方法ですくい囲うことができるのか少し考えてみます。
やさしく囲う方法
伝統的に受け継がれている建築的手法は、環境を上手く取り入れつつ、空気をやさしく囲ってあげることができる1つの方法なのかもしれません。例えば、軒はカーテン等とは違い、内部からの視界をさえぎることなく、外部とのつながりを維持したまま、日差しをコントロールすることができます。軒下の縁側は、太陽角度が浅くなる冬には日が入り暖かく、太陽角度が高くなる夏は日陰になり涼しい。四季を通して人が集まり憩いの場所ともなるでしょう。

敷地の形状や位置により、建物外周部に開口を設けることができない場合は、中庭を設ける方法もあります。町家には坪庭という通風を促すための換気装置としての中庭があります。周りの視線を気にせず、窓をあけ、風を取り入れることもできます。建蔽率(敷地に対して、建物が建てられる面積が法規的に定められています)のための空地を内側に取り込むことができ、屋根をかけることはできませんが、室内の延長として視界を広げることにも役立ちます。
中庭のメリットと階高さのメリハリ 水周りをまとめ、家族が集う大きなワンルームを作る
少し具体的に考えると、周囲に大きな開口を開くことも、中庭を作ることもできない場合もあります。そのような時は屋根に開口部を設ければ、より多くの日差しを取り入れることができます。天井高さをできるだけ高くして気積を大きくし、外周部には換気目的の小さな開口部を設けることができれば、まるで外にいるような風の吹き抜ける気持ちのよい空間も作ることができます。日差しだけではなく、風を感じられることも、広がりには重要だと思っています。

面積の縛りがある場合は、例えば、部屋を無理して多く作るようなことはせず、家族で一緒にいられる大きな空間を確保できるようにし、必要に応じて引き戸を活用することで、プライバシーに配慮しつつも、狭さを感じない空間を作ることができます。空間を広くすることができれば、同じ部屋にいながらも必要に応じて家族間の距離を保つこともできます。一緒に住まう家族において、お互いの存在を感じながら距離感の調整ができることは、とても大切だと思います。
やさしく囲うための設計
やさしさには丁寧な作業が最も不可欠だと考えています。設計の際はパソコンモニタに向かって図面を描くだけではなく、1/100~1/50スケールの模型をいくつも製作し検討します。最終的には1/30スケールの模型を製作し、空間のスタディーをします。場合によっては、実寸模型を製作し確認することも多々あります。空間は頭の中やパソコンの中に作るわけではなく、そこに存在させるものです。実際に作って確認・検証することが一番、正確であると考えています。

図面に関しても、昔ながらの方法ではありますが、特に詳細図は手で描きます。建築現場においては、実際に大工や職人が手で作り上げていくわけですから、それに近い状態で確認し作図することで、あらかじめ起こる事態などを考慮し、現場に対して細かな指示ができるようになります。的確な指示が出せれば、職人も丁寧な仕事をするようになります。
空間を満たすもの
家づくりにあたって、竣工は空間の完成ではありません。空間は育むことができます。それは家族の絆を緊密にするのと一緒かもしれません。どちらも目には見えませんが、そこに存在することを感じます。毎日毎日、ちょっとしたやさしさや、思いやり、気遣いの積み重ねで変化していくものだと思います。もしかしたら、物理的な方法論などではなく、どのような家でも、家族の絆が深く、大きくなって空間が満たされた時、本当に気持ちのいい家はでき上がるのかもしれません。そこに至る過程のお手伝いをさせていただければ、私たちも、とても光栄に思います。
住まいの話題[761]執筆者
■鈴木 宏亮(すずき こうすけ)/ 一級建築士事務所 す ず き



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