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光とガラス
公開日 2025.09.01

店舗における低反射効果の検証/ショーケースの視認性改善による人の行動心理の変化

店舗における低反射効果の検証/ショーケースの視認性改善による人の行動心理の変化

はじめに

ガラスは透明素材として認知されていますが、その表面の僅かな反射率が空間の視覚的ノイズとなり、その視認性の低下は空間に入る際の心理的なノイズになることがあります。

店舗などのガラスファサードや窓のガラス面反射を抑えることは、内部空間への空間視認性が高まり、人の視線をその空間に集めやすくなります。
このガラス反射による空間の視覚的ノイズを抑制することは、空間の視認性を上げることだけではなく、人の行動心理にも影響すると言われています。

関連記事:HG-005 空間の美しさを惹きたて、人の行動心理にも影響する低反射効果

そこで今回、店舗のショーケースに低反射ガラスを用いてガラス反射を抑え、ショーケース内部の視認性を改善することが、人の行動にどのような変化を与えるのか実験してみました。

ショーケースの視認性比較に用いたガラス

ショーケースに用いるガラスは、一般的なフロート板ガラスまたはそのフロートガラスを熱処理した強化ガラス、飛散防止性を有する2枚のフロート板ガラスに中間膜を挟み込んだ合わせガラスなどが用いられます。

今回の店舗では、合わせガラス仕様で検証を実施しました。

<一般のガラス>
一般合わせガラス
 6ミリ厚さ(FL3+PVB30+FL3)
 可視光線反射率 8%


<低反射ガラス>
クリアサイトⅡ合わせガラス仕様
 6ミリ厚さ(ARQFS3+PVB30+ARQFS3)
 可視光線反射率 0.9%

検証場所と解析方法

株式会社ドンク様のご協力を得て、ベーカリーショップ ドンク東京大丸店のショーケースのガラスを入れ替え、株式会社丹青社様の人流解析技術を用いてショーケースの視認性変化による効果を検証しています。

検証期間は、ガラス以外の集客変動要素の差が生じないように、イベントによる集客変化や土日祝の日数に差が出ないよう、計測時期と計測日を設定しています。

設置場所/株式会社ドンク DONQ東京大丸店(ドンク/ミニワン)

設置期間/
一般合わせガラス
 2023年11月16日~11月29日※
 ※11/23(祝)は除く合計13日間を人流解析の対象とする

低反射ガラス クリアサイトⅡ合わせガラス仕様
 2023年12月2日~15日※
 ※12/14は除く合計13日間を人流解析の対象とする

ショーケース(ガラス入れ替え)
 写真の黄色で囲んだショーケース
  (正面ショーケースおよび背面キャビネット)

解析方法は、株式会社丹青社の空間データプラットフォーム「FAC+」(ファクタス)の人流解析技術を用い、それぞれのガラスを使った対象期間における人流データと売上変化などを解析した。

株式会社丹青社:空間データプラットフォーム「FAC+」

検証結果(FAC+人流解析結果)

結果は下表の通りとなりました。

低反射ガラスを使うことで、以下がプラスの効果として表れました。

・ショーケースを見る人が増えた
・ショーケースを見る時間が増えた
・ショーケースをじっくり見る人が増えた
・購入者数が増えた
・客単価が上がった

この結果は、店舗前の通行人数が平均で延べ約8000人/日と多く、統計学検定法においてもこの検証結果は偶然ではないと評価されるものになります。

低反射効果により、ショーケース内部への視覚的ノイズが減少し、視認性が高くなったことが、人間の購買行動に変化を与えたことが考えられます。

本結果は一定期間での結果ですが、丹青社様ではさらに解析し、年間効果として200万円強の売り上げ増加が見込まれると推定されています。

なお、本結果はショーケース内部のドンク様のパンの商品性が高いことによって得られた結果になります。
その商品性を引き立てる可能性として、ショーケースのガラスの反射を抑えることが効果として表れたものと考えられます。

低反射による視認性の改善

今回の検証において、ドンク様関係者より、一般合わせガラスはガラス面に反射像が映っていたが、低反射ガラスはほとんど反射がなく、ガラスが無いようにも見えたと評価されました。

低反射ガラスによるショーケースの視覚的ノイズを軽減することで、「焼き目が綺麗に見えて、商品に立体感や躍動感を感じる」といった声も寄せられました。

この美味しく見える効果が、人の視線を集め、そして購買行動への変化に影響したのかもしれません。

おわりに

ガラスは透明素材として認知されていますが、その表面の僅かな反射率が空間の視覚的ノイズとなり、その視認性の低下は空間に入る際の心理的なノイズになったりします。

今回は、パンのショーケースにおける低反射ガラスを使って空間の視覚情報を制御することが、視認性の改善だけでなく人間の行動心理に影響する結果をご紹介しました。

このような低反射ガラスの効果は、夜景が見えるホテルなどでも検証をしております。
今後、他の使用用途での検証結果についても掲載する予定です。

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著者:ミライヲテラス編集部

AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。

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