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光とガラス
公開日 2025.09.01

窓ガラスからの自然光で効率よくセロトニンチャージ(住宅編:春・夏)

窓ガラスからの自然光で効率よくセロトニンチャージ(住宅編:春・夏)

はじめに

私たちが目指す姿は、脱炭素とウェルビーイングの両立。
つまり、「地球の幸せ」と「人の幸せ」の両立を追求することと考えています。

ウェルビーイングを考える上で、私たちは窓の役割の一つである「採光」の重要性を理解しておく必要があります。
「空間に自然光を取り込み、外と内をつなぐ唯一の外皮」である窓ガラスは、人の幸せに影響する「自然光を活用した光環境」に大きく関連し、空間に様々な情緒的価値を生み出し、その空間の魅力を高められることが期待されます。
窓ガラスから屋内に射し込む自然光は、幸せホルモンと言われる「セロトニン」の分泌を促し、人間のココロとカラダに様々な良い効果を与えてくれます。

関連記事:HG-002 脱炭素とウェルビーイングを両立させる窓辺の環境を考える

では一体、窓ガラスが幸せホルモン「セロトニン」の分泌に関わる自然光を、空間にどの程度取り入れているのでしょうか?
今回は住空間における窓ガラスが関連する自然光の光環境についてシミュレーションし、考察してみます。

窓辺は天然のサプリゾーンでセロトニンチャージ

天然のサプリゾーンを実現するには、青色光を含む2500ルクス以上の照度が確保される光環境が必要となります。
効率よくセロトニンをチャージするには、2500ルクスの光を2時間程度浴びることが効果的です。

関連記事:HN-004 セロトニン合成に必要な光とは? 光の波長と照度について

今回は、住空間において部屋のどの位置に効率の良いセロトニンチャージができるエリアが存在するか、リビングの光環境をシミュレーションし、椅子に座る人体の顔面照度を算出して考察してみます。

顔面照度分布を使った窓辺の光環境の評価(算出条件)

今回は、地域は東京の住宅を想定しています。
隣接住戸の影響を受けず日射が確保しやすい「基準モデル」と、隣棟と堀の影響を受ける「密集地モデル」の2パターンを用いて、1階のリビングの自然光による光環境をシミュレーションします。


リビングの南面には、掃き出し窓の開口①と②を設け、東面には腰窓の開口③と④を設けています。
「基準モデル」は1階リビングの南側に1.5mの庇を設定し、「密集地モデル」は庇がないモデルとしています。


使用ソフトは以下の通りとなります。
顔面照度は、南面に向かって椅子に座る人間を想定し、床面から1.1mに視線に到達する自然光を算定しました。
顔面照度は季節別sDA50%とし、既定の照度に到達する時間割合が評価期間の50%を超えるエリアをマッピングしています。

窓辺の光環境の評価(春)

春は冬が明けて気温が上昇し、気持ちを上げていきたい季節です。
リビングの自然光による光環境は以下のようになりました。

春季に効率的にセロトニンチャージできる2500ルクス以上の顔面照度が得られるエリアは、隣棟の影響を受けない基準モデルでカーテンを開けた場合は54%、閉めた場合は16%となりました(背景の1マスは1m角)。
窓辺を中心に広がっており、ココロとカラダの健康に関連するウェルビーイングな光環境作りには、窓ガラスが大きく関連することが分かります。
また、ほぼ全域で500ルクス以上を確保しており、自然光で十分な部屋の明るさを満たしていることも分かります。

密集地モデルは、基準モデルに比べて効率的にセロトニンチャージできる2500ルクス以上の顔面照度を得るエリアは縮小しますが、窓辺は良好な環境を保持しています。

窓辺の光環境の評価(夏)

夏はさらに気温が上昇し、活動的になる季節です。一方で、地球沸騰化というワードや各地での観測史上最高気温などを耳にするように、近年の夏は少し状況が変わってきています。
日中屋外で過ごすことに危険を伴うこともあり、屋内で自然光を浴びる重要性が増しているかもしれません。

では夏季のリビングの自然光による光環境を見てみましょう。

夏季は、春季と同様に効率的にセロトニンチャージできる2500ルクス以上の顔面照度が得られるエリアは広く、隣棟の影響を受けない基準モデルでカーテンを開けた場合は48%、閉めた場合は14%となりました(背景の1マスは1m角)。
窓辺を中心に広がっており、太陽高度が高くなる夏季においてもココロとカラダの健康に関連しウェルビーイングな光環境作りには、窓ガラスが大きく関連することが分かります。
また、ほぼ全域で500ルクス以上の自然光による十分な部屋の明るさを満たしていることも分かります。

密集地モデルは、基準モデルに比べて効率的にセロトニンチャージできる2500ルクス以上の顔面照度を得るエリアは縮小しますが、窓辺は良好な環境を保持しています。

おわりに

春から夏にかけて、気温上昇とともに気持ちを上げていきたい季節です。
自然光によるリビングの光環境は、セロトニンの分泌を促し、ココロとカラダの健康とウェルビーイング環境を創り出します。

効率的にセロトニンチャージできる2500ルクス以上の顔面照度を得ることができるエリアは、窓ガラス周辺にあることが分かりました。
また、窓ガラスがあることで、500ルクス以上の自然光のみで十分な部屋の明るさを満たせることも確認ができました。

次回は秋から冬にかけての光環境をシミュレーションしてみます。

関連記事:HG-004 窓ガラスからの自然光で効率よくセロトニンチャージ(住宅編:秋・冬)

窓の役割りの一つである「採光」の重要性は、単に明るさの確保だけでなく、ココロとカラダの健康に関連し、人間の活動力の源にもなる「セロトニン」を効率よくチャージする点にもあります。
近年では、省エネだけを追求し窓が小さくなる傾向があります。
今後は、省エネだけではなくウェルビーイングな環境作りを空間に取り込んでいくことが強く求められ始めます。

窓ガラスは単なる外皮ではなく「空間に自然光を取り込み、外と内をつなぐ唯一の外皮」であり、人の幸せに影響する「自然光を活用した光環境」に大きく関連し、空間に様々な情緒的価値を生み出します。

ミライヲテラスでは、さらにその魅力について定量化や効果の検証を進めていきます。


著者:ミライヲテラス編集部

AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。

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