光環境と幸せホルモン「セロトニン」と眠りのホルモン「メラトニン」

光環境の大切さ
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の検討と具体的な取組が進んでいます。
日本では年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しており(2019年度の温室効果ガス総排出量:12億1,200万トン(CO2換算))、2050年までにこれを実質ゼロすることを目標にロードマップ・法律の策定がなされています。
そして、私たちの周りでも本格的な脱炭素社会への移行を感じる場面が多くなっています。
ZEHやZEBの普及により、窓に断熱性や遮熱性に優れるLow-E複層ガラスが当たり前のように使われるようになってきました。窓の性能は向上した一方で、開口部は壁と比べると断熱性に劣るため、省エネ性を追求するあまりに開口率を下げる住宅や建物も見られるようになってきました。
では、窓の本来の役割は、何でしょうか?

窓ガラスは建物になくてはならない大切な部材の一つです。古来から「窓」には、眺望や採光、通風といった役割があり、欧州では石造りの建物が多く、壁や天井を切り欠くように「穿つ」ことで風(Wind)の目(ou)である「窓」Windowを設けてきました。
一方、日本の伝統的な木造建物は木の柱を立て屋根を付ける形式であり、柱と柱の間に障子窓が設けられ「間戸」と言われることもあります。この「窓」に透明部材である「窓ガラス」が加わることで、建物内に居ながら外を眺めることができ、太陽光を取り入れることができるようになりました。
そして、朝陽が昇り夕日が沈む日中の時流れを感じ、雨や雪、強い風など天候の変化を確認し、春夏秋冬の季節による自然の変化を味わうが室内でできるようになりました。
今日においてはこの窓ガラス本来の役割を保ちつつ、断熱性能や日射遮蔽性能をコントロールする高性能ガラス(Low-E複層ガラス等)や、防災と安全・防犯に役立つ合わせガラスなどが開発され建物に使われています。
近年、生活者の快適性、生理的・心理的な人間の幸せを中心に考えるウェルビーイングが注目されています。人生のうち80%は屋内で生活すると言われる現代人にとって、ウェルビーイングな空間デザインは必要不可欠です。そして、ウェルビーイングに大きく関わる「窓ガラス」によって創られる空間の光環境と温熱環境が注目され始め、その再評価の必要性が高まっています。
ミライヲテラスでは、窓の役割の一つ「採光性(光環境)」に着目しています。
それは窓ガラスから屋内に射し込む光が、幸せホルモンと言われる「セロトニン」と眠りのホルモンと言われる「メラトニン」に大きく関わっているからです。
幸せホルモン「セロトニン」と眠りのホルモン「メラトニン」
幸せホルモン「セロトニン」は、感情処理変化(ポジティブ感情処理)、認知機能向上、注意力の向上、行動力の向上、知育・脳育成(妊娠期含む幼児の脳発達)などの働きがあると言われています。また、セロトニンは眠りのホルモン「メラトニン」に変換され、覚醒と睡眠のリズムがコントロールされやすくなります。これらは人間のココロとカラダの健康に大きく関わっており、私たちが充実した日々や時間を過ごすために不可欠なホルモンとも言えます。

特に、起点になるのは幸せホルモン「セロトニン」。その生成を活性化させたり、メラトニンへの変換をコントロールしたりするのが青色光を中心とする可視光線です。そして、セロトニンの生成と代謝は、自然光を窓から取り入れることによって、照明などの電気エネルギーを使わなくとも効率的に行えるのです。
光は人のココロとカラダを豊かにする自然の最高の恵み
幸せホルモン「セロトニン」と眠りのホルモン「メラトニン」は光が関連し、その光の射す窓辺は天然のサプリゾーンとも考えることができます。光は人のココロとカラダを豊かにする自然の最高の恵みであり、「光環境」 と 「温熱環境」が整った窓辺こそ空間における最上質な場所であるとも言えるかもしれません。

LEED認証やWELL認証にも昼光利用や光に関するウェルビーイングについての内容が盛り込まれており、建築物の光環境は注目されていくことが予想されます。
ミライヲテラスでは脳科学のシュガー先生をお招きし、医学的実証論文などをベースに幸せホルモン「セロトニン」と眠りのホルモン「メラトニン」の分泌されるメカニズムやその役割・効果など詳しく解説していきます。
住宅やビルなどの建築物の屋内の光環境を設計する前に、光環境が人間に与える影響について理解を深めていくのもいいかもしれません。
では、この神秘のパワーについて迫ってみましょう!

著者:ミライヲテラス編集部
AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。