有限な地球の資源
地産地消だったガラス
1907年に岩崎俊彌(三菱財閥の2代目総帥・岩崎彌之助の次男)によって創業された旭硝子株式会社(現:AGC株式会社)は、2年後に手吹円筒法により日本で初めて板ガラスの工業生産を開始しています。当時はリスクの高い事業として三菱の称号が許されなかったことをご存じの方もいらっしゃるかもしれません。創業から10年で板ガラスの主原料であるソーダ灰の自社生産を開始しています。1938年には西伊豆で国産珪砂の自社採掘を始めています。
当時は、日本で採掘・製造された原材料を用いてガラスを造り販売していたのです。原材料も地産地消、そうやってできたガラス製品も地産地消でした。

原料調達の現在

原料の国産化は、調達リスクや輸送費を考えると自然な戦略です。
さて、現在はどうでしょうか? 珪砂は主にオーストラリアから、ソーダ灰はアメリカから遠路輸入しています。年間で40万トン余とこの二つの主原料だけでも膨大な量です。いずれの産地も巨大な生産能力を持ち、スケールメリットを活かして多くの顧客に供給しているため、コスト競争力があります。写真は別の原料の小さなバラ積船ですが、これで6000トン、珪砂やソーダ灰なら1週間も持ちません。
しかし、それだけが輸入している理由ではありません。
国内の珪砂鉱脈が枯渇してしまったのです。諺で「いつまでもあると思うな親と金」という警句がありますが、当時はまさか鉱脈が枯渇するとは思っていなかったのでしょう。現実には半世紀経った1989年に、西伊豆でのガラス原料としての珪砂採掘は終了しています。


世界の砂事情
世界的な都市化に伴い、砂の需要が増加し、砂の争奪戦 ”サンドウォーズ” が広がっています。
砂は、ガラスだけでなく、コンクリートにも使われています。都市建設やインフラ構築に大量の砂が使用され、他国からの輸入も行われています。国連環境計画(UNEP)などの報告によると、年間500億トン以上の砂が採取されており、持続可能な採掘が追いつかなくなっているとも言われています。特に問題となっているのが、川砂や海砂の過剰採取です。砂漠の砂は粒子が細かくてほぼ均一な粒度でコンクリートやガラスの材料に適さなかったことから、川砂や海砂が争奪戦の対象となっているのです。
これにより、砂の乱掘により島が消失したり、環境に悪影響を及ぼし、生息地や生態系の破壊、生物多様性の喪失が起こることもあります。
※詳しくは下記リンクを参照ください。
UNEP Report: 50 Billion Tons of Sand cannot be Extracted per Year without Serious Consequences – Invest In Latam
有限な地球の天然資源
地球上の鉱物資源には限りがあります。化石燃料、珪砂、トロナ鉱物、これら全て地球が数百万年もの長い年月をかけて作り上げているもので、私たちはこれら資源を産業革命以降の200年余で急ピッチに地中から掘り起こして消費しています。資源が枯渇するまで何年残っているかということには諸説あります。これは使う側の効率の向上や、例えば燃料で言えばシェールガスの開発などのように採掘コストが掛かる資源を使うようになるからです。ですが、短い期間で鉱物資源が作られることは無く、確実に消費がリサイクルなどを含むインプットを上回るので、人類が消費できる天然資源が有限であることに変わりはありません。
これに加えて、日本のように輸入原燃料に依存している国は、天候、紛争やそのほかの不可抗力という調達リスクに常に晒されています。大きな地球というレベルでのマテリアルバランス、日本という国家レベルでの経済安全保障、企業レベルでの事業リスクの課題に常に直面しています。
増えている資源?
一方で、人間が大量に作り出しているものはあります。ごみ、です。
燃やされたり、埋め立てられたり、一部には資源ごみとして回収されリサイクルされるものもあります。東京都で言えば7~8割のごみが燃やされ熱や電気を得たりもしていますが、5%は埋立地に運ばれます。埋立地に行くごみの量は年々その絶対量も割合も減ってきてはいます。

改善されているのは良いことのように感じますが、資源と同じで、埋立地も有限であることを私たちは忘れてはなりません。23区の埋め立てゴミが向かう中央防波堤埋立処分場は、あと50年はもつとは言われています。これを長いというのか短いというのかは人によると思いますが、鉱物資源と同様に、待ったなしの状況であることには変わりません。
日本の各地で、違法投棄が問題になっていますが、ごみは適切に処理しモニタリングしないと、土砂崩れや環境問題を起こしてしまうので、管理が必要です。このため、埋立地の容量の限界は、私たちの社会にとって致命的な問題になるのです。
廃棄物を減らすには何をすれば良いのか
3R(リデュース、リユース、リサイクル)という言葉は半世紀前ほどにアメリカで使われ始めたと言われ、2005年のG8サミットで取り上げられ、日本でもなじまれてきました。

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そもそも廃棄物をできるだけ生まないこと(リデュース)は、東京都の例でも廃棄量が年々減っていることに反映されています。
廃棄物にしてしまう前に立ち止まって考えること(リユース)は、最近の古着ブームをみると世の中に浸透してきたかなと感じます。
それでも使えないと判断した場合、一度資源に戻し再利用しよう(リサイクル)ということになります。東京都の廃棄物を例にとると、20年間で一般ごみのリサイクル率は15%から24%まで上昇しています。ごみも再び資源になることができるのです。
廃棄物と温室効果ガス
天然資源もごみの埋立場も有限だというお話をしてきました。リサイクルは、非効率な天然資源の使用を抑え、ごみの埋立場の寿命を延ばすことになります。これは同時に、温室効果ガス(GHG)の排出をも減らすことにも大きく関係してきます。

東京都23区の家庭からのごみは一般廃棄物全体の約6割と言われています。事業系と併せてその7~8割が焼却処分されます。家庭から出てくる燃やすごみの中で一番多いのが生ごみで、これが三分の一程度です。私たちの最も身近な食品のGHG排出は、決して少なくありません。例えば、豚肉1キロに対し11キロ程度の排出*を伴うと言われています。育て精肉にする過程から、こうやって最終処分に至るまで、GHGを排出しています。
*公的機関資料に基づくLCA研究では約11kg‑CO₂e/㎏と報告されています
食品ロスは色々な角度から社会問題として取り上げられますが、地球温暖化への影響も大きいことを心の片隅に留めておきたいものです。
次は、さまざまなリサイクルの方法をおさらいし、今日の資源循環の実際について考えてみます。

著者:ミライヲテラス編集部
AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。