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光とガラス
公開日 2025.09.01

空間の美しさを惹きたて、人の行動心理にも影響する低反射効果

空間の美しさを惹きたて、人の行動心理にも影響する低反射効果

はじめに

建築物には窓ガラスがある。。。

私たちユーザーは、窓ガラスを身近な存在・当たり前の存在として認識しています。一方で、その窓ガラスが空間にどのような影響を与えるか、人間の健康や活動にどのように関わっているかまで深く考えることはありません。

実は「空間に自然光を取り込み、外と内をつなぐ唯一の外皮」である窓ガラスは、人間に対する感覚的・心理的・生理的な様々な影響を与えます。
関連記事:HG-001 窓ガラスの情緒的価値って何だろう

今回は、ガラスに関連する視覚情報の制御が人間の行動心理にどのように影響を与えるかについて考えます。

空間設計において、ガラスの役割は非常に重要です。

ガラスは光を取り込み、空間を広げる効果がありますが、その反射によって視覚的なノイズが生じて、ガラス越しの景色が見えにくいことがあります。

そこで注目されるのが「低反射効果」です。低反射効果を持つガラスは、空間の透明感を高め、視覚的なノイズを抑えることで、より美しい空間を創り出します。本稿では、低反射効果による空間づくりや心理的効果についてご紹介します。

動的空間と静的空間の演出

ガラスは、空間の光をコントロールすることで、動的空間静的空間を演出することができます。

動的空間は、広くて開放的で、明るい環境の中で、ポジティブな気分を引き起こします。
例えば、店舗のショールームでは、ガラスを使用し空間を明るく視認性を高めることで、商品の魅力を最大限に引き出し、顧客の購買意欲を高めます。また、人が集まる、美味しく感じる、会話が弾むなどの動的空間づくりに効果があります。

一方、静的空間は、スペースが広過ぎず明る過ぎない環境の中で、冷静で落ち着いた雰囲気を作り出します。
オフィスなどの集中スペースや読書スペース、商談スペースでは、冷静に落ち着いて物事を考えるために、光を抑えた落ち着いた空間づくりをしたりします。

ガラスの反射が「空間の視覚的ノイズ」になる

店舗のガラスファサードや窓ガラスは、店舗内部に人の視線を集め、思わずその空間に入ってみたくなるような状況を作ってくれます。そして、店舗の内部空間は自然光によって明るさが確保され、その開放的な空間は人の購買を促す動的な空間としての印象を与えます。

しかし、屋外から店舗内部を見ると、実際はガラス面に反射像が映ってしまい、店舗の内部がよく見えない状況が起こることがあります。

通常のフロート板ガラスは、表面・裏面それぞれに約4%の可視光反射率を有し、ガラスに入射した約8%の光を反射します。そして約90%はガラスを透過し、透過した内部空間で吸収されたり再度反射されたりします。

約8%という反射率の数値は低く感じますが、日中の屋外の自然光のエネルギーは屋内の空間から屋外へ漏れる光より強いため、その8%の反射は視認しやすく、結果として視覚的なノイズとして干渉します。

このような現象は、ガラスで仕切られている2つの空間の照度の違いによって、ガラス面反射の感じ方や空間の視認性が大きく変わります。

日中のガラスに景色が反射して屋内の内部空間がはっきりと見えない店舗などのケースとは逆に、夜間では屋内の光がガラス面に反射することで夜景などの屋外の視認性を損なう場合があります。
展望エリアや高層マンションでは、夜景の視認性を確保するために、屋内照明を調整し照度を低めにする対策がなされるケースもあります。

空間の魅せたいものをより美しく表現するには、ガラスの可視光反射率を抑制し、空間の視覚的ノイズを抑えると効果的です。は、ガラスの可視光反射率を抑制し、空間の視覚的ノイズを抑える必要があります。

空間の美しさを惹きたてる低反射効果

ガラスの反射による空間の視覚的ノイズには、低反射ガラスが効果的です。

外装にも使える建築用低反射ガラス<クリアサイトⅡ>は、可視光反射率を約0.9%に抑え、空間に生じる視覚的ノイズを極限まで低減し、空間に澄んだ透明感を与えます。

模型実験画像:一般のガラス
模型実験画像:建築用低反射ガラス クリアサイトII

<クリアサイトⅡ>は、ガラス表面(両面)に特殊な多層コーティングを施し、光の干渉作用により反射を抑制した低反射ガラスです。

この特殊なコーティングは、屋外の環境で使われても、その低反射効果を持続できるよう高い耐久性に設計されており、他の低反射ガラスと比べてより高い耐久性を有しています。


これまで、低反射ガラスは美術館やショーケースなど、主に視認性が強く求められる内装空間に多く用いられてきました。

さらに外装用途での展開が可能なったことにより、カフェやレストラン、ブランドショップ、カーディーラーなど、動的空間を作るガラスファサードや窓ガラスとして使用用途が拡大しています。

静嘉堂文庫美術館

空間の「視覚的ノイズ」が「心理的ノイズ」になる?

店舗などのガラスファサードや窓のガラス面反射を抑えることは、内部空間への空間視認性が高まり、人の視線をその空間に集めやすくなります。

このガラス反射による空間の視覚的ノイズを抑制することは、空間の視認性を上げることだけではなく、人の行動心理にも影響すると言われています。

模型実験画像:一般のガラス
模型実験画像:建築用低反射ガラス クリアサイトII

関連記事:HN-005 透明性がもたらす安心の科学

透明性に関連する人の行動心理には、以下のような要素があります。

•人間は、本来「先が見えない場所」に対して警戒感を抱く傾向があります。これは進化の過程で培われた危険回避の本能とも言われています。壁で完全に仕切られた向こう側は、未知の領域として脳が捉えやすいため、不安や緊張を感じる原因になる場合があります。

•環境心理学で知られるProspect-Refuge理論によれば、人は「遠くを見渡せる(Prospect)+身を寄せられる(Refuge)」場所を好む傾向があります。

•視線が通る空間は、実際の面積以上に広く感じられるだけでなく、人の行動を積極的に誘導します。

•情報フォレージング理論(Information Foraging Theory: IFT)によれば、生物は得られるエネルギー(情報)を最大化しながら、探索にかかるコストを最小化する行動をとると考えられています。人間でも同様に、空間内で手に入る視覚情報が多ければ多いほど「目的地までの見通し」が立てやすくなり、行動範囲が広がりやすくなります。

動画:低反射ガラスに用いた視認性改善による空間の心理的ノイズの抑制

店舗、展示場・商業施設などの空間は、人をその空間にひきつけるために、ディスプレイや案内板や看板などで、内装デザインを工夫したりします。

実は、この空間に人をひきつけるための障壁として、透明であるはずのガラスの影響があります。
一般のガラスの僅か8%の可視光反射率は、内部空間の視認性を低下させ、空間の認知の妨げとなる場合があります。
そして、その反射が空間に入る心理的ノイズになる可能性もあります。

低反射ガラスは外装使いが可能となり、ガラスファサードや窓として魅力的な空間を人に伝えるための重要なアイテムとして広がり始めています。

まとめ

低反射効果を持つガラスは、空間の美しさを最大限に引き出し、視覚的・心理的なノイズを低減することで、空間に新たな可能性を提供します。
店舗のショーケースやショップフロントに低反射ガラスを採用することで、より魅力的で入りやすい空間を創り出し、顧客の心を惹きつけることができます。

AGCの低反射ガラス「クリアサイトII」は、空間デザインの幅を広げ、動的空間を演出することができるため、様々な用途に対応可能です。ぜひクリアサイトIIを活用して、空間の美しさと機能性を両立させたデザインの実現にお役立てください。


著者:ミライヲテラス編集部

AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。

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