静嘉堂文庫美術館様
導入インタビュー

採用商品:クリアサイト®

静嘉堂文庫美術館 館内写真

貴重な文化遺産を
次代に継承していくという使命。
低反射ガラスはそのために、
大きな役割を果たしてくれます。

公益財団法人 静嘉堂
静嘉堂文庫 静嘉堂文庫美術館 学芸部長
小池 富雄様

1892年以来、岩﨑彌之助氏(三菱第二代社長)と岩﨑小彌太氏(三菱第四代社長)の父子二代によって創設・拡充されてきた「静嘉堂」。〈曜変天目〉をはじめとする国宝7件、重要文化財84件を含むおよそ20万冊の古典籍、約6,500件の東洋古美術品など、日本・東洋美術史を網羅する正統的かつ希少な美術品の数々が収蔵されています。

それらの美術品は、1977年より静嘉堂文庫に併設された展示館で一般公開がはじまり、1992年からは静嘉堂創設100周年を記念して新設された静嘉堂文庫美術館にて、世田谷岡本の地で2021年まで展覧会が開催されてきました。

そして創設130周年を迎えた2022年、東京都心の中枢・丸の内の明治生命館内に場所を移し、「静嘉堂@丸の内」として、展示活動がはじまりました。

この度は、国宝をはじめとする美術品の展示のために採用されたAGCの低反射ガラス「クリアサイト®Ⅱ」について、美術館移転に尽力され、学芸員として永年「展示」のクオリティにこだわってこられた静嘉堂文庫美術館の学芸部長・小池富雄氏にお話を伺いました。

歴史ある「静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)」移転・開館に至るまで、大変なご苦労があったと思います。無事開館された、現在の率直なお気持ちをお聞かせください。

私は名古屋で36年間学芸員を務め、鶴見大学で8年間教鞭をとった後、「移転のために協力してください」とのお話をいただき、ここ静嘉堂文庫美術館に2年務めております。単身赴任が長く、妻と二人三脚で歩める定年退職の機会が2度もあったのですが、今は「定年退職して籠っていなくてよかった、この仕事に参画してよかった」と感じています。静嘉堂が収蔵する、希少性が高く、美しい作品の数々を、丸の内のこの地で、ぜひ多くの方々にご覧いただきたいです。

また、当館では、作品がより美しく見えるよう展示ケースのガラスや照明などの設備においても様々な工夫を凝らしました。そのような点も含めて、当館の見どころをアピールしていきたいです。

静嘉堂文庫美術館のエントランスにて
「静嘉堂 @ 丸の内」が加わった銘板と小池 富雄氏

「静嘉堂@丸の内」が持つ意義・価値とは、どのようなものですか?

何よりも、世界でもトップレベルである当館の収蔵品を、より多くの方々に、より容易にご覧いただけるようになったということです。従前まで、世田谷岡本にあるどちらかといえば知る人ぞ知る、隠れ家的な場所で展示してきたのを、都心のど真ん中、新幹線を降りてすぐの場所でご覧いただくことができるようになりました。また、駅からの道のりも平坦なため、例えば車椅子でお越しになられる方にも容易にご来場いただくことができます。

昔でしたら、王侯貴族が生涯に数回封印を解くように覗き見るような希少品を、誰もがご覧いただけるようになったわけです。幸いなことに、遠方からも多くの方にご来場いただいています。是非世界中の方にご覧いただきたいと思います。

そのような重要な意義を持つ「静嘉堂@丸の内」に、この度低反射ガラス「クリアサイト®Ⅱ」をご採用いただきました。ご採用になられた理由はどのような点にあったのでしょうか?

先程、「誰もがご覧いただけるようになった」と申し上げました。そのためには、防犯性をはじめとする多様な環境整備がまず必要であり、そして「より美しく見せる」ということが課題となります。その答えとして、この度は高透過の合わせガラスで、そのうえ反射による映り込みがほとんどない低反射ガラスであるクリアサイト®Ⅱに行き着きました。

実は、はじめの設計段階では単板のフロート板ガラスに文化庁指導に基づく飛散防止フィルムを貼付する、という方針でした。しかし、最終的に「ガラスと照明については、コスト面を優先するのではなくベストの展示を追求しよう」と皆様に言っていただき、より高性能なクリアサイト®Ⅱを採用することにいたしました。

(写真左) 【国宝】 曜変天目(稲葉天目)建窯

静嘉堂文庫美術館 展示品

(写真右) 撮影:木奥惠三 写真提供:静嘉堂文庫美術館

実際にクリアサイト®Ⅱを導入されてのご感想はいかがでしょうか?

反射による映り込みがほとんどなく、大変満足しております。

低反射によって鮮明に見えることで、今まで気づくことができなかった繊細な色彩や、作品の細部に施された工夫の数々を感じることができるようになりました。例えば、酒井抱一が描いた「波図屏風」は、墨絵の波の一部に淡い青色が使われているのですが、それを鮮明に感じることができるようになりました。また、波頭に散りばめられた白い絵の具の立体感を感じることもできます。

更に、ただ単に反射率が低いだけではなく、展示ケースが重なって見える環境においても違いをもたらしています。他の低反射ガラスですと、独立ケースがいくつか重なる状況において、寒々しい印象を受けてしまうのですが、クリアサイト®Ⅱの場合はそういった印象を受けることなく、遠くまでクリアに見通すことができます。

クリアサイト®Ⅱが、様々な面から鑑賞体験の豊かさに寄与しているということを感じています。

静嘉堂文庫美術館 展示品

撮影:木奥惠三 写真提供:静嘉堂文庫美術館

お客さまやミュージアムに携わる方からの、展示に対する反応や評判はいかがでしょうか?

大勢の方の反応をお聞きして、大変な満足を得ています。首都圏の美術館・博物館の関係者の方には概ね見に来ていただいていますが、工夫を凝らした部分については高い評価を得ていますし、専門家の方は、ガラスの製品・メーカーについて必ずお聞きになります。

また、反射による映り込みがないため、取材時の写真撮影などでもありがたがられることがあります。SNS時代である現在は、展示品を撮影してお見せすることが欠かせません。通常取材時は、反射による映り込みを避けるために、時にはガラスを「開けてください」という要求があるのですが、当館の取材においてはガラスケースを開閉することなく撮影することが可能です。それは作品に余計な負荷やリスクをかけないことにもつながります。クリアサイト®Ⅱを採用したことで、美しく撮影できる点も大きなメリットであると感じています。

長年学芸員として美術品の研究や展覧会に携わられてきた御立場から、今一度ガラスの重要性についてお聞かせください。

静嘉堂文庫美術館 展示品

撮影:木奥惠三 写真提供:静嘉堂文庫美術館

素晴らしいガラス、照明、そして素晴らしい建築のもと、良質な作品を見るということはこんなにも満足度が高いものなのかと実感しています。

先ほど申し上げましたように、高透過の低反射ガラスと調光・調色LED照明の組み合わせによって、作品の新しい顔をお見せすることができるようになりました。ところが、建築予算が豊富な美術館などは別として、美術館業界においても、まだまだ低反射ガラスの普及度は低いのが実情です。

文化遺産を次の時代に継承するという願いがあります。また、日本文化には世界の方々を魅了する力があります。当館は130周年を期に開館しました。次の130年を考えるうえでも、当館の魅力を世界の人に伝えることは大変に意義のあることだと考えています。「静嘉堂@丸の内」をたくさんの方にご覧いただくことが、同時にクリアサイト®Ⅱの素晴らしさの発信になれば、私としても嬉しく思います。

静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)

〒100-0005
東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F

https://www.seikado.or.jp