ガラスが変わると暮らしがかわります。
ガラスに求められている機能や性能に関する知識をご提供します。
ガラスとは?
透明板ガラスを通して室内から明るい屋外を見ている場合を考えてみましょう。(ここでいう光は「目に見える光=可視光」です。)
屋外の風景はありのままに見えますが、正確にいうと、室内側に透過してくる光は5ミリ厚の透明フロート板ガラスの場合89.5%です。つまりガラスがない場合に比べ約1割暗い風景を見ているのです。残りの10.5%は、反射(8%)と、ガラスの中に吸収される光(2.5%)に分けられます(図1)。
(図1) |
ガラスを通ってくる光は約90% |
透明板ガラス5ミリ厚の場合 |
この「透過率」、「反射率」、「吸収率」の3つの数値は板ガラスの厚さによって異なりますが、3数値の合計は常に100%です(表1)。
種別 | 板厚(ミリ) | 可視光(%) | ||
透過率 | 反射率 | (吸収率) | ||
単板 |
3 |
90.4 | 8.1 | 1.5 |
5 | 89.5 | 8.0 | 2.5 | |
8 | 89.0 | 7.8 | 3.2 | |
10 | 88.3 | 7.7 | 4.0 | |
12 | 87.1 | 7.5 |
5.4 |
|
15 |
86.2 |
7.4 | 6.4 | |
19 | 84.9 | 6.9 | 8.2 | |
複層ガラス | 3+A+3 |
82.2 |
14.8 | 3.0 |
5+A+5 |
80.6 |
14.5 | 4.9 | |
8+A+8 | 79.6 | 14.1 | 6.3 |
(表1) |
透明板ガラスの光の透過・反射・吸収の割合 |
|
板厚は抜粋です。複層ガラスのAは空気層を示します。 |
従ってどれかひとつの数値が大きくなると、ほかの数値が小さくなる関係にあります。
同じ板ガラスならば、どこに使われていても表1に示した固有の数値は変わりません。しかし反射光で向こうが見にくかったり、ガラスがあることに気づかずぶつかったりするのはなぜでしょうか。
これは、ガラスは置かれた明るさ環境によって見え方が変わってくるからです。
私たちはガラスの存在を主に「反射」で認識しています。そしてこの反射に視覚的な強弱が生じるのは、ガラスのこちら側と向こう側の明るさの差や背面の明度の違いが関係しています(図2)。
(図2) |
こちら側と向こう側の明るさによって見え方が変わる |
太陽光の反射が眩しい時も、ショーウインドウの中がスッキリ見える時も、常に5ミリ透明板ガラスの反射率は8%なのですが、向こう側が明るいとその8%が意識できないのです。
表1で板ガラスの反射率に注目してみると、ガラス厚が厚くなるほどわずかですが反射率が低下しています。ガラスは表面での反射率は一定ですが、表面だけでなく裏面でも反射が起きていて、裏面からの反射はガラス内で一部が吸収され減衰して出てくるため、吸収率の大きな厚いガラスほど全体としての反射率が低くなるというわけです。
一方、2枚の板ガラスで構成される複層ガラスでは反射も2枚分になり14.5%(5ミリ厚2枚の場合)と大きくなります。
そして2枚それぞれに反射が起きるため斜めから見ると反射像が2重に見えてきます。
透明板ガラスが内部で光を吸収する値は、厚くなるほど大きくなります。視覚的にはこの吸収率はガラスの色の濃さとして見えてきます。厚いガラスほど固有の緑色が増してくるわけです。そして色が濃くなる(吸収率が高くなる)と透過率と反射率は低くなります。
余談ですが、透明板ガラスがわずかに緑色に見えるのは、原料にもともと微量の酸化鉄が含まれていることによります。この酸化鉄が光の緑色付近以外の波長を吸収するためガラスを透過する光は薄い緑色に見えます。
また面よりエッジの方が濃い緑色に見えるのは、エッジから見るとガラスの奥行きをより深く見ることになるからです。
さて、ここまでの話は透明板ガラスのことでしたが、透過・反射・吸収のうち、どれかの値を様々な加工によって変えることで視覚的印象に加えて熱などに対する機能を持たせることができます。
参考までに透明板ガラス以外の代表的な機能商品の可視光3数値を(表2)に挙げておきます。
一般名称 | 商品名 | 板厚 (ミリ) |
可視光(%) | ||
透過率 | 反射率 | (吸収率) | |||
熱線吸収板ガラス |
サンユーロ |
6 |
49.9 |
5.2 | 44.9 |
サンユーロ グリーン |
6 |
75.3 | 6.7 | 18.0 | |
熱線反射ガラス | サンカットΣクリア | 6 | 62.8 | 33.5 | 3.7 |
高遮蔽性能熱線 反射ガラス |
サンルックスSS8 | 6 | 9.0 | 41.6 | 49.4 |
低反射ガラス | クリアサイトⅡ | 5 | 98.0 | 1.5 |
0.5 |
(表2) |
代表的な機能ガラスの光の透過・反射・吸収の割合 |
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ガラス種別および板厚は抜粋です。クリアサイトⅡの数値は高透過ガラス素板の場合です。 |
製造時に金属酸化物などを混入して吸収率を高めた透明色つきガラスは、透過率が低い暗いガラスになりますが、可視光だけでなく紫外線や太陽熱(赤外線域)の吸収も大きくなります。ビルの外装ガラスに使うと室内への熱流入を軽減する機能を持ちます。特有の色はビルの外装デザインとして使われることもあります。
また色が濃いと明るい側から暗い側が見にくく、プライバシーガラスとして乗用車に採用されています。
反射率を高める加工は、ガラス表面への反射コーティング技術によります。マジックミラー、ミラーガラス、などと呼ばれることがありますが太陽熱を反射して冷房負荷を軽減する遮熱目的で開発されたものを熱線反射ガラスと呼びます。ミラー効果が高く透過率は低いのでビル用のガラスとして使われます。
やや特殊な用途になりますが、一般透明板ガラスより反射率を低くする加工もあります。
この加工はコーティング技術で光の干渉を利用し反射光を消すものです。
これにより透過率が向上し、存在を意識させないガラスになります。美術館のケースや絵画等の額縁ガラスに使用されます。