ガラスの豆知識VOL.15 熱割れについて

今回の豆知識は、『ガラスの熱割れ』についての解説です。

熱割れ現象
窓ガラスのうち日射が直接当たる部分は、吸熱して高温となり膨張します。一方、ガラスの周辺部はサッシに呑み込まれているため日射を受けず、またサッシや躯体くたい への放熱もあり、低温のままになり膨張しません。このため、高温部の熱膨張を周辺部が拘束する状態になります。これをガラス内部の力の状態でいうと、ガラス周辺部に引張応力が発生していることになります。この引張応力(熱応力ともいう)は、直接当たる部分と周辺部との温度差に比例し、ガラスのエッジ強度を超える引張応力が発生するとガラスが破壊します。この現象を一般に熱割れと呼んでいます。(この熱割れは物理現象のため、完全に防ぐことは現状では極めて困難です。)
 
熱割れの特徴
熱割れは基本的には、ガラスの日の当たる高温部と周辺の低温部との温度差が著しい場合に生じるのですが、施工状態が悪くエッジ強度が低下している場合には、さらに起こりやすくなります。また、熱応力の大きさは、窓の方位やガラスの品種、ガラスの使われ方によって違いがあるほかにも、日影の状態、カーテンの影響、サッシの取り付け状態、ガラスの大きさにも左右されます。以下に、ガラスの熱割れの主な特徴を示します。
  1. ガラスの熱割れが発生しやすいのは、冬期の晴れた日の午前中です。特に建物の東面や南面への日射量が大きくなる一方、サッシ周辺の温度は低下しているので、高温部と低温部の温度差が広がり、熱応力も大きくなります。
  2. ガラスの熱割れは、下図のように、ガラスのエッジから始まり、まずエッジ辺に直角に走り、それから蛇行していることが特徴です。
  3. ガラスの熱割れには、クラックが1本だけ入る非分岐破壊と、クラックが2本以上入る分岐破壊とがあります。 (右図(a)、(b))非分岐破壊は、一般に、小さな熱応力で熱割れが発生したことを示し、分岐破壊は、比較的大きな熱応力で熱割れが発生したことを示します。

ガラスが熱により伸びる割合は、「線膨張率」として示されます。線膨張率が小さな値ほど、熱による伸びが少なく熱割れしにくいガラスと言えます。
バイコールガラス : 0.8×10-6/℃ (試験管等で使用)
パイレックスガラス : 3×10-6/℃ (耐熱食器等で使用)
ソーダライムガラス : 9×10-6/℃ (一般の建築用板ガラス)



Vol.15 熱割れについて(1) ・ Vol.16 熱割れについて(2)

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