Case 25:

Bicycle Parking @ Commune

設計:山路哲生建築設計事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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遊休地を利用して、イベントスペースと自転車関連の商業施設を融合した自転車文化の発信地をつくる。目指したのは「仮設以上建築未満」。

山路哲生氏が手掛けているのはサイクル・パークだ。敷地は東京・表参道の交差点に近い。隣接地に屋台やカフェなどで構成された「コミューン246」がある。

敷地の前面道路は青山通りだが、旗竿形状のため開発が進まない遊休地であり、現在は東京都港区が運営する有料の駐輪場として使用されている。
クライアントは「コミューン246」の運営者である。サイクル・パークと「コミューン246」を融合させ、駐輪場の認知度を高めることで利用度を上げるとともにイベントスペースと自転車関連の商業施設を加え、自転車文化の発信地をつくろうという計画である。
2年間の期間限定の施設であり、建設費や借地料などを考慮した短期の事業収支計画を立てなければならない。そのため法的には常設でありながらもローコストかつ短期間で建設できる案を考えなければならなかった。
「全体的に広場としてにぎやかな状況をつくれないかと思った。低層に抑えて小さなものを点在させる。建物は2年間持てばいいので規模としても使われ方としても、またコストや材料としても、仮設以上建築未満の建物ができないかと考えた。仮設性とローコストの要件を実現させることを目指した」(山路氏)。
敷地全体を活用し、最大312台が収容できる有料の駐輪スペースを用意するとともに、「都市型オーディトリアム」をつくろうとしている。敷地中央に駐輪スペースを設け、その屋上をテントで覆ったステージとする。それと向かい合う「コミューン246」のカフェ側に大階段とバルコニーを設け、観客席とする。
その他に自転車関連ショップや自転車の修理工房、カフェ、駐輪スペースを配置している。

流通材、リユース材やコンテナを利用し、構造は簡易にするなどして、仮設性とローコストかつ短期間で建設という要件をクリア。

中央の屋外ステージを含めそれぞれは小規模な建物であり、自転車の修理工房やカフェはコンテナを利用している。
「間口が狭いのでひとつの建築としてつくろうとすると敷地割が難しい。コンテナは建築を減らすために使用している」(山路氏)。
敷地はすり鉢状であるとともに周囲をビルで囲まれている。周辺の建物を建物の外皮とし、中央ステージは木造建築物が上棟した後あたりでストップしてしまったような状態の、柱や梁が露出したままにしている。
コストを抑えるため、中央ステージは簡易な構造の建築物に対する防火規定緩和を利用した木構造フレームにし、ショップ棟は木造軸組み工法を採用している。難しいディティールはなくして105角の流通材と一般的な金物を使用する。
またデッキは足場材を利用する。使用したデッキ材をビンテージとして回収し、リユースをする会社があり、その会社からデッキ材は無償で借りる予定だ。
2009年に青山商店街連合会などが「自転車に優しい街」を目指す宣言をし、自転車関連のイベントを行っている。また外苑西通り沿いには自転車関連のショップが立ち並んでいる。表参道の交差点近くに新たな拠点ができれば東京・青山はより一層、自転車文化の発信エリアとなっていくことだろう。

Bicycle Parking @ Commune
所在地: 東京都港区
用途: 駐輪場兼商業施設
構造: 木造
設計: 山路哲生建築設計事務所
建築面積: 224.71㎡
述床面積: 312.91㎡
竣工予定: 2017年
山路 哲生

山路 哲生 (やまじ てつお)
1980年香川県生まれ。
2003年芝浦工業大学建築工学科卒業。
2005年Architect Christian Kerez。
2006年横浜国立大学大学院建築学コース修了。
2006-2008年SAKO 建築設計工社。
2010-2015年隈研吾建築都市設計事務所主任。
2015年山路哲生建築設計事務所主催。
2015年芝浦工業大学非常勤講師。