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Case 22:

いこうファームのキッチン・ラウンジ

設計:PEA.../落合建築設計事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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箱(建物)をつくることプラスアルファで、人と人、人とまちのつながり方を模索する実験的プロジェクト。

PEA.../落合建築設計事務所の落合正行氏が手掛けているのは貸農園のコモンスペースだ。計画地は東京都足立区にある。以前、周辺は農地が広がっていたが、現在は沿線開発で宅地化され、人口が増えている。

ここで幼少期を過ごした50代のクライアントは土地を相続し資産運用をしていくにあたり、「農は人と人がつながっていく接着剤になるのではないか。知らない人がどんどん移り住んできて、隣近所もわからないようなまちであるよりは顔が見える場所があった方がいい」という思いを持った。そして地域全体のイメージアップの必要性を感じ、2014年3月、落合氏に所有する木賃アパートと自宅のある敷地の空間活用のアイデアとデザインを求めた。
落合氏が最初に手掛けた木賃アパート「ワカミヤハイツ」は築40年の建物だ。2棟8住戸からなっているが、3住戸のみの入居という状況だった。
そこで8住戸の中の1階の1住戸を「コモンスペース」と位置づけ、7住戸の居住者の共同作業ができ、まちとの接点になるようなプラスアルファの活用ができる共同キッチン・ラウンジにした。また敷地内の路面のコンクリートをはがし菜園にし、さらにバルコニーは取り払い、出入りできるようにした。
入居者は20代から40代の女性の単身者の割合が多い。入居者が組合をつくり、管理・運営していくコレクティブハウジングの動きも始まっている。
「暮らし方や人が地域にどう関わるかに興味がある。箱をつくることプラスアルファの、その中で何が行われていくか、どう地域に根差して住んでいくか、を考えたい」と落合氏は話す。

集合住宅内のコモンスペース、敷地内に設けた貸農園は、人が地域と関わるための仕掛け。プライベートな場所をパブリックに開けば、暮らしの中の満足度は上がる。

次に手掛けている自宅のある敷地を対象にしたプロジェクトは「いこうファームのキッチン・ラウンジ」と名付けられている。敷地の周辺はマンションや賃貸アパートなどが建っているが、神社などもあり、ゆったりとした環境にある。そこでクライアントは敷地内の元ビニルハウスだった場所を樹木や目立たない柵で仕切り、44区画からなる体験型の貸農園にした。周辺に積極的に開くとともに景色としてどう見えるかを重視したのである。それに合わせて有機農法を取り入れている。

敷地には自宅、母屋、納屋が建っており、納屋を活用して草木染のワークショップ、マルシェ、自然農法のセミナーなどのイベントを行っている。
現在、検討中の計画は自宅の横にコモンスペースをつくるプロジェクトだ。1階は共同キッチン、土間、上がり、風呂などを備える。2階にはクライアントの家族の子供部屋をつくる。貸農園の利用者もクライアントの家族も使える中間的な建物にする予定だ。
落合氏は「東京で地域と関係を持つ」という実験をしたいと思っている。
「人が減っている時代に合った暮らしの中の満足度を上げる方法が必要になっている。自分から出向いて知り合うのではなく、自己紹介をする感覚で自分から開く。住宅に余地をつくり、自由に使える場所にする。そこに水回りがあれば一緒に食事をするなど滞在時間が長くなる。プライベートな場所をパブリックに開くと満足度は上がっていく」。
私有地を地域に開くことは勇気がいる。その仕組みをつくろうとしている。

いこうファームのキッチン・ラウンジ
所在地: 東京都足立区伊興
用途: 共用施設および住宅
設計: PEA.../落合建築設計事務所
建築面積: 33.64㎡
延床面積: 64.37㎡
階数: 地上2階
主体構造: 木造
工事予定期間: 未定
落合正行

落合 正行 (おちあい まさゆき)
1980年 三重県生まれ。
2005年日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了後、株式会社山中新太郎建築設計事務所を経て、2011年PEA.../落合建築設計事務所設立。2014年より日本大学理工学部まちづくり工学科で助手を務める。2016年「第2回これからの建築士賞」を受賞。