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光とガラス
公開日 2026.05.25

窓辺の空間での暮らし「健康と幸せを感じる情緒的な空間」を実現するには ―Low-E複層ガラスの日射熱取得率による空間快適性の変化(2)―

窓辺の空間での暮らし「健康と幸せを感じる情緒的な空間」を実現するには ―Low-E複層ガラスの日射熱取得率による空間快適性の変化(2)―

はじめに

私たちの周りに建てられる新築住宅は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たす高断熱住宅が増えています。高断熱住宅は、省エネの促進が図れるだけでなく、快適性や健康への寄与という面でも期待できると考えられています。

住まい手や設計者に向けて、「住まい方」と連動して整理された住宅設計の考え方に関する資料「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド※」が発行されており、断熱性の高い住宅性能を発揮させるための住まい方や住みこなし方の理解も深まりつつあります。
※令和7年3月発行:一般社団法人:環境共生まちづくり協会、編集協力:国土交通省 住宅局

ミライヲテラスでは、窓から室内空間に射し込む自然光のパワーについて着目しています。
そのパワーは人間のココロとカラダの健康に強く関わっていると考えられています。
優れた断熱性を有する高断熱住宅は、省エネと快適な室温を両立するだけでなく、使用する窓ガラスの品種を工夫すれば、窓辺でさえ居心地がよく、健康と幸せを感じる空間をつくることができ、情緒的価値の高い「住まい方」の一つとして提案できるのではと考えています。

今回は、特に窓からの日射の影響を受けやすい冬期(暖房期間)において、ココロとカラダにポジティブな影響を与える自然光を浴びることができる“窓辺の温熱環境”について考察してみます。

窓辺で暮らす生理的・心理的な相乗効果

窓は、自然光を室内空間に取り込み、ココロとカラダの健康に関わる生理的な作用をもたらします。また、窓からの眺望は自然を眺めることによるバイオフィリア効果など、空間の感じ方を変える心理的な作用もあります。​

・会話が自然に生まれる、楽しく明るいリビング
・窓辺のひと息が、私を前向きにする
・暮らしの中の最高のワークプレイスで良いアイデアが浮かぶ
・人生に寄り添い、何気ない日常も深める

実はこんなシーンに、窓ガラスからの光が大きく関連していたりします。

自然光に含まれる青色光は、脳内のホルモンであるセロトニンの分泌を促し、人間のココロとカラダに様々な影響をもたらします。

幸せホルモン「セロトニン」は、感情処理変化(ポジティブ感情処理)、認知機能向上、注意力の向上、行動力の向上、知育・脳育成(妊娠期含む幼児の脳発達)などの働きがあると言われています。私たちのストレスを和らげ、幸せな気持ちにしてくれたり、記憶力や集中力を高めることにも関連していると言われています。
また、セロトニンの一部は、眠りのホルモン「メラトニン」へと変換されます。この過程は光によって調節され、暗闇でメラトニン合成が促進され、逆に光を受けると抑制されます。つまり、日中は光を取りこみセロトニンで覚醒し、夜はそのセロトニンがメラトニンに変換され良質な睡眠を促します。日中のセロトニンの分泌は、覚醒と睡眠リズム(サーカディアンリズム)のコントロールにも深く関わっているのです。
これらは人間のココロとカラダの健康に大きく関わっており、私たちが充実した日々や時間を過ごすために不可欠なホルモンとも言えます。

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セロトニン分泌に関わる青色光は、窓から室内空間に射し込む自然光に多く含まれており、窓辺はセロトニンを効率よくチャージできる天然のサプリゾーンでもあります。
別記事(HG-003HG-004)にて、住空間における窓辺に到達する自然光をシミュレーション解析しましたが、そちらで使用した建物モデルの、東京の南向きの部屋においては、窓から2mまでの範囲が良好な自然光による光環境であることが分かります。

-窓辺の空間で暮らす(健康と幸せを感じる情緒的な空間)-

窓は、高断熱住宅において、健康や幸せを感じられる情緒的価値の高い「住まい方」を支える大切な住空間設計の要素です。​
窓ガラスがあることによって発動する自然光由来の不思議なパワーを受け、これを私たちのウェルビーイングに活かしていきたいものです。

健康と幸せを感じる窓辺を実現するための窓ガラスとは?

「窓辺の自然光による天然サプリゾーン」で、心地良く過ごすためには、光環境だけでなく熱的にも快適な環境をつくる必要があります。それには、窓ガラスから室内に入る日射エネルギーを適切にコントロールすることが重要になります。
より具体的には、セロトニンチャージに必要な青色光(可視光線に含まれる)は室内に取りこみ、熱的作用のある赤外線は適度に遮蔽することが、居心地の良い「窓辺の自然光による天然サプリゾーン」には不可欠になります。

ここで大事なのが、断熱窓に使うLow-E複層ガラスの日射熱取得率の違いによる窓辺の温熱環境変化です。ミライヲテラスでは、窓辺の温熱環境シミュレーションを実施し、どのような窓ガラスが熱的に快適になるかを研究しています。以下に、その研究内容の一部を紹介します。

下表に示す性能の異なる窓ガラスを使った場合、健康と幸せを感じる窓辺の空間の温熱環境がどう変化するか、シミュレーション解析データを用いて、特に窓からの日射の影響が大きい暖房期間について考察してみましょう。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

今回は、以下に示す断熱等級6<地域:東京>の住宅モデルの1Fのリビングの窓辺の温熱環境をシミュレーションしています。なお、窓の役割である情緒的価値(光による生理的な作用、眺望などの心理的な作用)を得ることを目的とし、レースカーテンと窓の組み合わせで評価を実施しています。

ガラスの仕様は4種類を評価します。ガラス単体の日射熱取得率は、仕様➀0.80、仕様➁0.66、仕様➂0.54、仕様➃0.38とし、仕様➁~➃はLow-E複層ガラスで仕様➁と➂が日射取得型、仕様➃が日射遮蔽型になります。レースカーテンは透過率55%とし、レースカーテンが閉まっている状態としています。
なお、仕様➂はAGCのサンバランス ピュアクリア(日射取得型)、仕様➃はサンバランス アクアグリーン(日射遮蔽型)を想定したガラス品種になります。

次に評価指標は、日射の影響を含めた作用温度OTを算出し、それを日中作用温度OTsolarと表記して評価しています。なお、解析方法の詳細については、HG-007に記載しています。

(1)窓辺の温度分布評価

それでは、窓辺(窓から0.7~3m)の位置に座る人間に感じる日中作用温度OTsolarの分布を見てみましょう。
選定するガラスの日射熱取得率の違いによって、窓辺の温熱環境は大きく変化することが分かります。

窓辺は、日射の影響を受けやすいため、窓からの距離が近いほど日中作用温度OTsolarは高く、快適温度を22℃レベルに設定する暖房期間の着衣量を考慮すると、暑いと感じる26℃を超える時間が増えることが分かります。

仕様➃のLow-E複層ガラス(日射遮蔽型)は、仕様➁と➂のLow-E複層ガラス(日射取得型)と比べると明確に窓辺の温熱環境を快適な範囲(エアコン設定温度±2℃レベル)に制御できることが分かります。
Low-E複層ガラス(日射取得型)では、仕様➁と➂の比較から、日射熱取得率の低いガラスを選定した方が、窓辺の温度環境を快適に保つことができる時間割合が高くなる傾向にあります。逆にLow-E複層ガラスの日射熱取得率を高くし過ぎると、快適な温度を大きく超える時間が増え、断熱性の低い仕様➀透明複層ガラスの窓辺の温熱環境レベルまで温度変化が大きくなってしまうリスクがあります。

(2)窓辺の日中温度変動

住宅内の温度差によるヒートショックが高齢者の健康リスクとして認識されるようになり、家全体が均一に適温以上を確保できるZEHや断熱等級6や7の高断熱住宅への関心が高まっています。これらの高断熱住宅の温度安定性は、平均室温を用いて評価されています。
一方、窓辺については日射の影響を受けやすいため、高断熱住宅であっても使用するガラスの日射熱取得率の違いによっては窓辺の作用温度が日中に大きく変動してしまいます。

そこで、暖房期間の窓辺(窓から0.7~3m)における日中作用温度OTsolarの、窓辺の一日の温度変動(日中の寒暖差)とその割合をまとめました。

天候が良い日は、窓辺は日射の影響を受けやすいため、窓からの距離が近いほど日中の温度変動が非常に大きいことが分かります。窓辺は日中の時間において10℃以上の温度差が生じたり、日によっては15℃以上の大きな温度差が生じることが分かります。また、使用するガラスによって、その差が大きく変動する傾向にあります。

仕様➃のLow-E複層ガラス(日射遮蔽型)は、仕様➁と➂のLow-E複層ガラス(日射取得型)と比べると明確に窓辺の日中温度差を小さく抑えられています。窓から0.7mで温度差10℃以上になるのは暖房期間の10%日数程度に抑えられ、窓から2m離れればほとんど発生していません。
仕様➁と➂のLow-E複層ガラス(日射取得型)は、窓辺は日中の温度差が大きくなるものとして考えた方がよさそうです。仕様➁と➂の比較から、日射熱取得型であっても日射熱取得率の低いガラスを選定した方が窓辺の温度差を小さく抑えられる傾向にあります。逆にLow-E複層ガラスの日射熱取得率を高くし過ぎると、断熱性の低い仕様➀透明複層ガラスの窓辺の温熱環境レベルに近いものになってしまうとも言えそうです。

日中の温度差が大きいと、以下のような行動変化が考えられます。

■窓辺に滞在する
温度上昇時:暖房期間の着衣から暑い時間は着衣量を減らす。
温度下降時:直達日射が無くなると急に寒く感じるため、着衣量を増やすか、温冷感度が高くなるため室温がある程度高くともエアコンの設定温度を高めに設定したりする。

■窓辺から移動する
日射の影響を受けにくい窓から極力離れた場所に移動する

■窓を遮光する
窓の付属部材(カーテンやブラインド、アウターシェードなど)で遮ると、自然光による明るさが弱まり、室内照明で補う必要が生じる。​
また、眺望性が低下するとともに、光環境の変化によりセロトニン分泌への影響も小さくなる可能性がある。​

窓辺の日中の温度差が小さければ、人間の行動変化によるカラダやココロへの影響も小さく抑えられるかもしれません。
「健康と幸せを感じる情緒的な空間」を実現するために、窓辺の空間での暮らしを意識したい場合は、日射遮蔽型のLow-E複層ガラスがおすすめです。

まとめ:健康と幸せを感じる窓辺 南側の“日射遮蔽型”の良さ

高断熱住宅は、省エネの促進が図れるだけでなく、快適性や健康への寄与という面でも期待できると考えられています。
建築物の外皮は、省エネや快適性を支える重要な部位であり、その一つである「窓」には大切な役割があります。窓は自然光を室内空間に取り込み、ココロとカラダの健康に関わる生理的な作用をもたらします。そして、窓からの眺望は自然を眺めることによるバイオフィリア効果など、空間の感じ方を変える心理的な作用もあります。​

住まい手や設計者に向けて、「住まい方」と連動して整理された住宅設計の考え方に関する資料「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド※」に、等級6の住宅を想定した場合の地域別・方位別の窓の種類の目安について、下図の方位別の日射制御のガイドが掲載されています。

※出典 省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド(令和7年3月発行:一般社団法人:環境共生まちづくり協会、編集協力:国土交通省 住宅局)

これは基本的な考え方を示したもので、敷地条件や気候条件等に応じて相応しい窓を選択することが必要とされています。また、等級 7 の場合、温暖地や寒冷地の南面は、冬期のオーバーヒートを考慮して、「日射遮蔽型」とすることも考えられるとされています。

ミライヲテラスでは、さらに「窓辺の自然光による天然サプリゾーン」に着目し、人間のココロとカラダの健康に強い関連性がある心地良い自然光が射しこむ 「健康と幸せを感じる窓辺の生活空間」 を実現したい場合にどのような窓ガラスが適しているか研究しており、温暖地域・蒸暑地域における方位別のLow-E複層ガラスの使い分けは以下のように、南面も「日射遮蔽型」が好ましいと考えています。

優れた断熱性を有する高断熱住宅は、省エネと快適な室温を両立するだけでなく、使用する窓ガラスの品種を工夫すれば、ココロとカラダにポジティブな影響を与える自然光を浴びることができる“窓辺”でさえ居心地がよい空間をつくることができるかもしれません。

情緒的価値の高い「住まい方」の一つとして、自然光のパワーを使った「健康と幸せを感じる窓辺」の提案を考えてみませんか。


話者:ミライヲテラス編集部

AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。

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