無限にリサイクルできるガラス
いろいろな素材はどのようにリサイクルされているのか
私たちが身近に感じるリサイクルは、資源ごみとして回収される鉄・アルミ缶、PETボトル、瓶ガラスなどだと思います。
これらの素材は、多様な製法によって作られています。
例えば鉄鋼材料にはふたつの製法があります。原料から鉄を取り出す工程において、鉄鉱石から銑鉄を作る高炉法とスクラップ鉄を原料として電気で溶融する電炉法があります。鉄は様々な成分を調整することで発揮する機能を作り込むので、本当に純度の高い鉄を作るには高炉が欠かせません。一方で、基本的に鉄は磁石で他の金属から容易に分別でき、電炉によってスクラップから鉄へと再生されます。
アルミニウムも多種の合金があるためリサイクルには制約があり、純度の高いアルミは海外でボーキサイトから製造される地金が必要です。その新地金(一次アルミ)をつくるには大量の電気エネルギーが必要となります。アルミも鉄と同じようにスクラップからアルミ地金の再生することが可能です。リサイクルアルミは、新地金アルミ比でエネルギー使用量を約95%削減、CO₂排出量を約97%削減できると言われています。昨今の環境意識の高まりから、積極的に再生アルミに取り組むメーカーが日本国内に多数存在しています。
ガラスのリサイクルの場合
私たちの身の回りにあるガラスには、実は色々な種類のガラスがあります。ソーダライム、無アルカリ、硼珪酸、石英などが代表的なものです。これらは、主たる成分が異なります。

このため、ガラスの種類によってガラスを溶かす専用の窯が必要になります。
建築用のソーダライムガラスは、IH調理器などに使われるガラス天板のカレットを混ぜると融点が高い硼硅酸ガラスが溶けずに残って品質不良となってしまいます。また、液晶ディスプレーに使われる無アルカリガラスは、ガラスから液晶基板へのアルカリ溶出が問題を起こすため、アルカリ成分を持つ一般的な建築用のガラスカレットは消費できません。
つまり、異なる種類のガラスを混ぜ合わせることは出来ないのですが、同じ種類の廃ガラスであれば、成分分布をしっかり管理すれば、再び原材料として消費できます。ガラスは、廃ガラスをリサイクルしても品位を落とすことなく純度の高いガラスを繰り返し作り続けることが出来るユニークな素材なのです。実は廃自動車から回収したカレットでも、ソーダライム系のガラスなので建築用のガラスの原料として使うことができるのです。
電炉や二次製錬・精製のようにスクラップを主原料とする異なる設備を持つ鉄やアルミと違って、ガラスは既存の製造設備で、天然原料、廃ガラス、どちらも原料として利用できる点が大きな特徴です。
ガラスのリサイクルの大きな可能性と乗り越えねばならない課題
リサイクルするための特別な設備を持たなくてよいということは、実生産ラインで大量に廃ガラスを消費できるということになります。現在は解体される建築物や太陽光発電パネルからの廃ガラスの消費量が少ないですが、将来的に廃ガラスの回収が進めば格段に多い廃ガラスを受け入れることができます。一方で、組成管理に失敗すると実生産に大きな影響が出てしまいます。このため、成分管理は勿論のこと、廃ガラス回収の過程で混入してしまいがちな異物を取り除くことが必須になります。
異物混入は、ガラスに限らず他の素材でもリサイクルするための大きな課題となっています。
建築や自動車用のガラスは、板ガラスの中で一番量の多いソーダライムガラスになります。一言でソーダライムガラスといっても、実はこの中でも組成の違う種類がいくつもあります。多くの場合、含まれている微量成分のバランスが違うだけなので、消費するカレットの管理さえしっかりされていれば問題は起きません。ただし、太陽光発電パネルのカバーガラスにはフロート板ガラス製造工程で発色(透明でなくなる)を起こす厄介な成分が入っています。


異物混入による影響は、様々です。溶けないことによってガラスに未溶融欠点として残ってしまうと品質基準に合格しません。50センチ離れたところから、0.5㍉から1㍉までの異物が1平方メートルあたり平均1.1個を超えて視認できてしまうと製品として不合格になります*。溶けない異物によって、原料を高温で溶かしてできたガラスを冷やす工程(徐々に冷やすので徐冷工程といいます)でバリバリと割れて生産できなくなってしまうことも起きます。
*: どのような試験方法があるか詳しくお知りになりたい方は板硝子協会からの刊行物「ガラスのきず」ガイドを参照ください。https://www.itakyo.or.jp/upload/kenchiku25.pdf
このように困難でも課題が明確になっているということは問題が半分解けた状態とも言えます。関係者が一体となって、解体から分別、再利用へと繋がる廃ガラスのサプライチェーンを通して、成分を管理し、異物を取り除いていく仕組みを構築・維持していくことで、ガラスの水平リサイクルが前進していきます。

ガラスの水平リサイクルは地球にどれくらい優しいのか?
板ガラスから板ガラスへの廃ガラスの再利用(これを水平リサイクルと言います)は、地球温暖化対策に大きなインパクトを持ちます。
廃ガラス(カレット)1トンの利用により、温室効果ガス(GHG)排出を約0.6トン下げることができるのです。廃ガラスは既にいちど溶かされているのでソーダ灰(Na2CO3)などの天然資源が溶けるときに原料に含まれるCO2の放出がないこと、天然資源よりカレットの方が溶ける温度が低いので化石燃料の消費が減ること、天然資源から原料を製造するときに例えば焼成工程があればその過程で排出するCO2や、船やトラックで輸送する時に出るCO2排出も無くなります。
それだけではありません。枯渇していく資源の有効活用にもなります。カレット1トンの利用で、天然資源の利用が1.2トン減ります。また、今まで埋立地で処理されていた廃ガラスの量が無くなるので、再利用分の1トン相当の埋め立て量も減るのです。

もちろん、廃ガラスを取り外し、回収し、資源化できるように選別する際にもコストやCO2排出も発生するのですが、何度でも繰り返しリサイクルできるガラスだからこそ、地球にとって大きなメリットを生み出せる素材と言えましょう。
ガラスのリユースはできるのか
ガラスをそもそもリユースすれば良いではないか、と考える方もいらっしゃると思います。
ガラスが使われるサイズは実にバラエティーに富んでいます。大きな掃き出し窓、腰高窓、小さめの天窓・地窓、中には天窓のある住宅もあります。ビルであれば、建築家の想いを意匠で実現しますが、窓ガラスは、それらの大事な一要素になり、実に多種多様です。

このような中で、ガラスをそのままリユースするのは、多くの制約を乗り越える必要があります。更に、例えば30年も使われたガラスの表面の細かな傷、取り外しの時に起こりかねないガラスの縁へのダメージが、ガラスが割れてしまうリスクを増やしてしまいます。目に見えないだけに厄介で、住まわれる方の安全を考えると、リユースも難易度の相当高いアプローチになります。
水平リサイクルのエコシステムを求めて
今は多くの窓が、複層ガラスだったり、強化・合わせガラスといった加工された製品です。このため、ガラスと部材のリサイクルも簡単ではありません。品質を保ちながら何度でも再資源化できるガラスの良さを活かすためにAGCは、多くのビジネスパートナーと共に、ガラスという資源が循環するエコシステムの実現に向けての挑戦に取り組んでいます。

話者:ミライヲテラス編集部
AGC建築ガラス アジアカンパニーでマーケティングのお仕事をしているチーム。
窓ガラスなど光をコントロールする建築ガラス製品が、人間のココロやカラダに大きく関連し、人の活動や行動にも影響を与えることを知り、調査を開始。
知れば知るほど、この情報を建築に関わる、建築に興味がある全ての人に伝えたい思いが強くなり、「ミライヲテラス」を開設。