Case 3:

ローライフカフェ

設計:ツバメアーキテクツ
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

キッチン、スクールからカフェ側を見る。キッチンは床レベルが上がっている。またスクールからは街を見下ろせる。


    …クリックすると具体的な詳細が表示されます。

衣・食・住(建築)に健康と快適性を求める現代人。ツバメアーキテクツの新作は、新しい食生活の体験と伝達のためのスペース。

衣・食・住(建築)は人々が生活するために必要なものであり、時代によって求めるものは変化していく。現代の人々は衣・食・住(建築)に健康と快適性を求めているようであり、この2つの視点から生活を見直すきっかけも求めている。

ツバメアーキテクツが取り組んでいるのは新しい食生活の体験と伝達のためのスペースだ。クライアントのローライフデザイン株式会社はローフード(生の食べ物)の体験学習の機会をつくり、その普及を目指している団体である。日本全国にローフードマイスターの認定講座と検定のための認定校(料理教室)を展開しており、ローライフカフェはそのフラッグシップであり、初めてローフードを提供するカフェの営業も行う。
場所は東京・銀座の8階建雑居ビルの7階にある。広さは95.18㎡だ。プランは田の字型であり、基本はカフェ・スペース、カフェ用のキッチンと料理教室用のキッチンからなる。田の字型のグリッドに合わせて長押を設けて引き戸で仕切るようにしており、仕切り方によってカフェ、料理教室、レクチャー、カウンセリング、品評会などの様々な使い方にフレキシブルに対応できる空間構成にしている。
内装はカフェ・スペースとキッチンを高さで領域を分け、さらにエントランス側と奥で天井の高さに変化をつけている。このシンプルな空間に野菜・果物が入ったメイソンジャー(ねじ蓋がある保存用のガラス瓶)を棚に取り込み、またスプラウト(野菜の芽)を瓶のなかで育てて料理の材料に使うことからそれらの瓶を窓辺に置くしつらえにする。このようなアイテムの色彩も合わせて空間の全体像が完成することを目指している。

時間帯によって人の集まり方が異なる様々な活動に対して、建具や家具の配置による空間的な変化で対応する。コンセプトは「可変は構築である」。

今回、ツバメアーキテクツが掲げた空間デザインのテーマは可変性であり、可変は構築であるというのがコンセプトだ。具体的には料理教室やカフェなどの活動の流れをひとつの場所でデザインすることを試みており、重要視しているのは時間と構成の関係だ。活動の流れから時間帯によって人の集まり方は変化する。その変化に対して建具や家具の配置による空間的な変化で対応する。同じシナリオでありながら使い方で変わる空間を構築している。

クライアントのスタイルやコミュニティの質や性格を重視して設計するというのがツバメアーキテクツのスタンスだ。ただクライアントのスタイルと異なるスタイルを持つ人やコミュニティに属さない人から見て、排他的にならないようにしたいという思いがある。クラアントやコミュニティ側に立ちすぎるとその外側ができる。そうならないためには他者が入ってこられるように建築家として決めるべきところは決めておくが、つくり込まずに自由に使える余白をつくる。特定の人たちのための空間だが、他者も使えるようにするのだ。他者は空間と活動を経験することによってクライアントのスタイルやコミュニティのあり方に親和性を感じ、そのスタイルやあり方を持ち帰る可能性が高くなると確信しているようだ。生活の見直しの時代に合った建築家像と手法である。

設計: ツバメアーキテクツ
施工: TANK
用途: 飲食店oお料理教室
所在地: 中央区銀座
面積: 95㎡
工事予定期間: 2015年3月~4月
ツバメアーキテクツ

ツバメアーキテクツ
山道拓人、千葉元生、西川日満里、澤田航、西川博美による建築ユニット。東京工業大学の塚本由晴研究室を卒業し、チリのアレハンドロ・アラヴェナに師事した山道、同大学の坂本一成研究室と塚本由晴研究室、及びスイス連邦工科大学で建築を学んだ千葉、横浜国立大学大学院などで建築を学びCAtで勤務した西川日満里が2013年10月に設立。澤田はロンドン芸術大学、AAスクールで建築を学び、能作文徳建築設計事務所で勤務したのち2014年に参画。以上4人は86年生まれ。西川博美は90年生まれで横浜国立大学大学院修了後、2015年から参画。空間設計のほか研究開発やまちづくりを行う。



※関連コンテンツ: AGC studio WEB デザインフォーラムレポート 
第65回 「新しい建築の楽しさ2015」展 連動企画②「親和性を生み出す領域」