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Case 2:

ライゾマティクス新オフィス移転計画

設計:中川エリカ建築設計事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)



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働く人が働き方に合わせて空間をつくり変えていく。新しいクリエイティブ・ワークプレイスの提案

ワークプレイスのテーマのひとつは組織的知識創造の場をつくることだ。社員のモチベーションの向上、スタッフ間のコミュニケーションの活性化、知識の融合や一体感などが期待されている。そのような空間はクリエイティブ・ワークプレイスなどと表現されている。クリエイティブ・ワークプレイスをつくる時の重要なポイントは、働く人が働き方に合わせて空間をつくり変えていく余地を残すことだ。

建築家の中川エリカ氏が取り組んでいるのは、WEBや映像制作、ドローンやシステム開発などを業務とするクリエイティブ集団、ライゾマティクスのワークプレイスだ。20代から30代の個性的なスタッフ約35名が働く、執務スペースとスタジオで構成された空間である。その設計テーマは「様々な個性が集まっていること自体がおもしろいと体感できる状態をつくる」「持続性」などである。
ベースとなる空間はRC9階建の1階にある倉庫だ。最高天井高約5.7m、奥行き約30m、延べ床面積は約400㎡ある。東京都渋谷区、恵比寿にほど近い用途が混合している地域にあり、倉庫の2階から上は、住居とオフィス、住居も単身者用と世帯用が混ざった集合住宅である。
倉庫というラフな場所をタフに使い倒している。ワンルームという空間を活かしてひとつの空気感をつくろうとしている。既存の床と壁、天井はそのままだ。大きな柱があるという躯体の構成と天井高を活かして「ビッグテーブル(大きな机)」と表現された中2階を加えている。「ビッグテーブル」は木造在来であり、120角の柱で鉛直方向の力を負担し、水平力は既存の躯体に持たせる。「ビッグテーブル」の上のスペースは共用の打ち合わせの場所や作業場所になる。さらに「ビッグテーブル」のまわりに回遊性のある動線を意識的に入れている。

プログラムでゾーニングするのではなく、すべての場所をフラットにして、働く人が運用しながら自分たちの場所にしていくオフィス。

ひとりひとりが個性をもって働きながらスタッフ間のコミュニケーションの機会が多くなるように、スタッフ数の専用席以上に席を増やして配置している。ひとりあたり2、3席を用意することで場所を選びながら使っていくことができる。また、執務と打ち合わせスペースに差をつくっていないため、例えばクライアントとのブレストやスタッフ間の打ち合わせ、個人作業が同じテーブルで行われることになる。使い方が重なり合う余地があることで集まる機会も増えるという読みだ。プログラムでゾーニングするのではなく、すべての場所をフラットにし個人の使い方や集まり方によって場所が生まれ混合していくような空間にしているのだ。

この集まり方に合った什器は使用者であるライゾマティクスのスタッフも設計者と共に考える。クリエイターの什器は個性があってもいいのではないか、ワークプレイスは働く人の働き方や考え方など個性を反映している場所であるべきではないか、という中川氏の問題意識から協働することになった。

組織は固定化されない。人が入れ替わると集まり方も変わる。このプロジェクトで、中川氏は「使うという創造性」の一歩目を設定している。使用者は一歩目がわからないと踏み出せない。ただ中川氏は全てを設定していない。つくる側と使う側が異なることから、かならずずれが生じ、持続性の限界を迎える時が訪れるからだ。
使用者が一歩目の設定を咀嚼し、運用しながら自分たちの場所にしていく。そして人が入れ替りながら更新されていくのだ。


発注者: 株式会社ライゾマティクス
所在地: 東京都渋谷区
主用途: 事務所
既存面積: 388.18㎡
ビッグテーブル: 95.90㎡
構造: 既存RC造リノベーション
(リノベーション部分:木造在来)
完成時期: 2015年4月
設計者: 中川エリカ建築設計事務所
設計協力者: 小西泰孝建築構造設計
中川エリカ

中川エリカ(なかがわえりか)
1983年東京都生まれ。2005年横浜国立大学建築学部建築学コース卒業、 2007年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了、オンデザイン勤務を経て、 2014年中川エリカ建築設計事務所設立。2012年JIA新人賞受賞。 2014年~横浜国立大学大学院(Y-GSA)設計助手。





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