春日大社宝物殿増改築プロジェクト
設計:弥田俊男設計建築事務所文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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谷口吉郎設計の春日大社宝物殿。20年に一度の式年造替に合わせて実施される増改築プロジェクトは、文化財の展示に若い感性を取り入れる先例となる。
訪日外国人旅行客数が年間1300万人を超え、政府は観光立国を掲げている。それを実現するには観光の魅力をもっと増やしていかなければならない。そのひとつは既存の文化財を活かしていくことだ。つまり観光立国は観光政策と文化政策を融合することによって達成できる。
増改築で目指したのは「残すべき価値のある建物を活かしながら、新しい意味を持たせる」こと。ファサードの表情と内部展示空間の再構築を試みる。
既存のファサードは四角い閉じた壁の上層部とPCaの縦格子の下層部で構成されている。今回の増改築では切妻の屋根の2棟をつなぐ棟の屋根を延長し、既存のファサードの表情に連続させて縦のスチールの格子を正面に並べる。縦にするのは南からの光をコントロールでき、適度に開くことで内部が見え、内部から外の風景が見えるという境界面にすることができるからだ。
中崎 隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー。1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆、ならびに展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。
春日大社宝物殿
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所在地: | 奈良県奈良市春日野町 |
発注主: | 春日大社 |
用途: | 美術館 |
設計: | 弥田俊男設計建築事務所 + 城田建築設計事務所 |
構造設計: | オーノJAPAN |
設備設計: | 森村設計 |
施工: | 大林組 |
建築面積: | 367.09㎡ |
延床面積: | 1,210.28㎡ |
階数: | 地上2階 |
構造: | 既存部RC造 + 増築部S造 |
工事期間: | 2015年7月~2016年6月 |

弥田 俊男 (やだ としお)
1974年 愛知県生まれ
1996年 京都大学工学部建築学科卒業
1998年 京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了
1998年~2011年 隈研吾建築都市設計事務所
2011年~ 弥田俊男設計建築事務所、岡山理科大学工学部建築学科准教授