あいちトリエンナーレ2016
豊橋会場プロジェクト
設計:山岸綾 / サイクル・アーキテクツ文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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まちなかを会場とする芸術祭とは、アートをテーマに仮設の街をつくること。建築家は、様々な仮設の街を試みることができる。
サイクル・アーキテクツの山岸綾氏が手掛けているのは、あいちトリエンナーレ2016の豊橋会場だ。あいちトリエンナーレは2010年から始まった愛知県で開催される現代美術と舞台芸術からなるアートの祭典だ。
山岸氏は越後妻有アートトリエンナーレで古い木造校舎をコンバージョンした 「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」などを手掛けている。2つの芸術祭の違いを次のように語る。
「妻有は作品間の距離がある。途中の景色を楽しみながらポイントで記憶に残っていく。豊橋はコンパクトで建物内外の差が小さく、内外が接続されているという印象がある。まちなかを歩くことと一緒に楽しむことになるため、それぞれの会場が最初に目にどう入ってくるかという観点から建物内外の動線を検討している」。
訪問者はまちなかの雑踏から芸術祭の時期だけに現れる大小様々な異空間に入っていく。そして、訪問者にも街にも変化が起こる。
豊橋会場で使用される民間ビルは大豊ビル、開発ビル、はざまビル大場の3つだ。大豊ビルは3階(一部4階)建て長屋であり、両サイドにアーケードがついており、1階の店舗は両側から出入りできるつくりになっている。地元で「水上ビル」と言われているビル群のひとつであり、高度経済成長期に農業用水路にふたをして建てられた。「水上ビル」全体は約8mの用水路の幅のまま、約800mの長さで細長く板状に建ち並んでいる。開発ビルは、元は下がデパートで上はボウリング場だったが、現在は貸オフィス、店舗、小さなホールなどになっている。 階によって印象が異なり、迷宮感があるそうだ。はざまビル大場は店舗併用住宅であり、1、2階が店舗になっている。
訪問者はまちなかの雑踏から芸術祭の時期だけに現れる大小様々な異空間に入っていくことになる。
中崎 隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー。1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆、ならびに展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。
あいちトリエンナーレ2016 豊橋会場プロジェクト
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所在地: | 愛知県豊橋市(PLAT会場、水上ビル会場、豊橋駅前大通会場) |
事業主: | あいちトリエンナーレ実行委員会 |
用途: | 国際芸術祭の会場 |
整備面積: | 約3,700㎡ |
工事予定期間: | 2016年8月完成予定 |

山岸 綾 (やまぎし あや)
1973 宮城県生まれ
1996 早稲田大学理工学研究科修士課程修了
1997-2006 原広司+アトリエ・ファイ建築研究所
2006 サイクル・アーキテクツ設立
2010-2013 早稲田大学非常勤講師
2013-2016 千葉大学非常勤講師
2014- 工学院大学非常勤講師
2015- 法政大学非常勤講師
http://www.cycle-architects.com