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Case 17:

ショウワノート株式会社高岡工場

設計: 能作淳平建築設計事務所
佐藤工業株式会社一級建築士事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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工場に企業の歴史の変遷などを展示する機能を追加して情報発信機能をもたせる。既存の建物を参照しながら、新旧を全体として再編集する工場の拡張プロジェクト。

能作淳平氏が手掛けているのは工場の拡張計画だ。 それはショウワノート株式会社の本社工場で、北陸地方にある。昭和40年代に創業者がこの工場を建設した当初、周辺は農地だったが、現在は住宅地と農地が混在している。

これまで現工場を母体に増改築を繰り返しており、敷地には工場や事務所、倉庫、荷捌き場などが建ち並んでいる。現在は使用されていないが、立体倉庫も残っている。
クライアントの要望は生産ラインを止めずに増改築し、企業の歴史の変遷などを展示する機能を加えて情報を発信する拠点にしたいということだった。
旧立体倉庫をガラス張りにし、外に開かれた展示空間にコンバージョンする。現工場は残し、ワークショップのスペースと倉庫にする。旧立体倉庫にあったスチールラックや荷捌き用のパレットを間仕切りや展示台などに再利用する予定だ。
「戦後70年が経ち、企業や産業の歴史を振り返ることや建物の歴史を振り返ることができ始めている。素材なども重要だが、この敷地内で起こっていた歴史をどう編集するかがより重要だ」(能作氏)。

建築ができること。それは、空間を共有しているという感覚の豊かさ、時間を超える気持ちよさを生み出すこと。

現工場の形態を参照し全体を再構成する。現工場はRCの壁と鉄骨の梁からなる構造の片流れ屋根の建物であり、新工場も同じように片流れの屋根を並べることで、ノコギリ型の屋根のシルエットをつくる。旧立体倉庫を煙突に見立てて、アイコンとしてひとつの大きな工場として見せることで、地域の中に工場の風景をつくるというのが設計意図だ。

「それぞれを見るとバラバラだが、引いてみた時に一つに見える。ノコギリ屋根と煙突は統合するための見せ方だ。新旧を並走させながら全体をつくるという意識が必要だと考え、再編集する感覚で設計した」(能作氏)。
コンバージョンは新築ではつくることができない空間を生み出せているかで評価が決まる。またコンバージョンは空間と時間の再編集作業である。原稿を編集するだけの編集者ではなく、関わる人々の思いを調整し、まとめることができる編集者のような能力がないとできない。
「例えば住宅はひとつの家族が建物を占有して、ひとつの機能として働く。そして建物が改築されて所有者や使い方が変わると、その建物はひとつの家族が過ごす時間を超え、所有者や機能から自立したものになっていく。建物が家族や機能の時間から建物やモノの時間に移行していくのだ。さらに改築が繰り返されると、まちや地域、文化的な時間になると思っている」(能作氏)。
工場や倉庫は閉じられた建物だ。基本的には従業員や取引先など関係者しか訪れないし、利用しない。工場見学などは予約制になる。だから工場や倉庫のコンバージョンは従業員が会社に誇りを持ち、取引先がその企業を信頼できると感じられるような空間にすることが基本となる。さらに建築家に期待されているのは工場見学に訪れた人々に感動を与えることだろう。
「空間を共有しているという感覚の豊かさが生まれればいい。身体的な気持ちよさと、時間を飛び越える気持ちよさが建築にできることだ。長寿命でいろいろな人が共有できる建築ができたらいい」(能作氏)。

ショウワノート株式会社高岡工場
所在地: 富山県
設計者: 能作建築設計事務所
佐藤工業株式会社一級建築士事務所
主要用途: 工場
建築面積: 6059.97㎡
延床面積: 7929.93㎡
構造形式: RC造 鉄骨造
規模: 地上5階建て
能作 淳平

能作 淳平 (のうさく じゅんぺい)
1983年 富山県生まれ
2006年 武蔵工業大学(現・東京都市大学)建築学科卒業
2006-10年 長谷川豪建築設計事務所勤務
2010年 ノウサク ジュンペイ アーキテクツ設立
2016年 東京大学非常勤講師 日本工業大学非常勤講師

受賞歴
2013年 SDレビュー2013鹿島賞受賞「高岡のゲストハウス」
2015年 東京建築士会住宅建築書受賞「ハウス・イン・ニュータウン」
2016年 第15回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展 審査員特別賞受賞
2016年 SDレビュー2016入選「富江図書館さんごさん」