Case 29:

レッドウッド
南港ディストリビューションセンター2
KLÜBB エリア

設計:タカトタマガミデザイン
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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巨大化する物流施設に「人のための空間」をつくる。決め手のひとつは、天井のデザインか。

タカトタマガミデザインの玉上貴人氏が手掛けているのは巨大なマルチテナント型の物流施設のアメニティスペースだ。

計画地は大阪湾に面した大阪市住之江区南港中にあり、周辺には倉庫が立ち並んでいる。物流施設は隣接した2棟からなり、レッドウッド南港ディストリビューションセンター2(DC2)はレッドウッド南港ディストリビューションセンター1(DC1)に対して直角に配置されており、エントランスが向かい合うような格好になっている。またDC2の西側には港に面した緑地帯が設けられている。DC1は約12万㎡、DC2は約16万㎡という巨大さだ。DC1は2016年11月に完成しており、DC2は2018年2月に完成予定である。
近年、全国に巨大な物流施設が次々と建設されており、各社はテナントを誘致するのに工夫を凝らしている。
クライアントのESRは「ヒューマンセントリックデザイン」というテーマを掲げ、人を中心としたデザインを謳っている。それを象徴する空間である休憩ラウンジや託児所をつくるにあたり、デザインに力を入れている事務所の力を借りたいと玉上氏に声がかかった。
DC1はアプローチやメインエントランスホール、ファサードなども玉上氏がデザインした。エントランスホールのファサード側に動線を配置し、それに沿って託児所や売店、喫煙室などを並べており、売店の向かい側には休憩スペースや中庭を設けている。
DC2はDC1から緑地に休憩に行く時に立ち寄ることも想定したつくりにする。雨にぬれずに利用できるようにと壁面をセットバックさせ、ピロティ状の空間をつくり、外部に面して託児所と売店を設ける。

託児所は子供のスケールに合わせて天井を全体的に下げ、「包み込む」をテーマに居場所を包み込むことでこぢんまり感を演出。

「天井高が5mもある巨大な空間で働いている人たちがくつろげる空間の天井は低い方が落ち着けるのではないか。DC1では物流施設はモノが積まれている場所であることから『積層』をメタファーにし、人がたまる場所の上部のそれぞれに『コンテナ』をモチーフにした箱をぶら下げ、天井を約半分の高さにしている。DC2は『包み込み』をテーマとして居場所を包み込むことでこぢんまり感を出そうと考えている」(玉上氏)。

DC1の「コンテナ」の素材はガルバリウム鋼板であり、売店は黒、託児所は緑、喫煙所はシルバーの3種類を使用し、波の形状も変化をつけている。DC2の託児所も子供のスケールに合わせて天井を全体的に下げている。部分的に折り上げて天井に変化をつけ、床、壁、天井ともにコルク材で包み込む予定だ。
DC1、DC2ともに休憩ラウンジは4階にあり、24時間利用でき、港を見ながらくつろげる。DC1はキャンチレバーでテラスを張り出したが、DC2はインナーテラスにする。DC2は外壁にALCを使っているため間柱があり、その間柱を逆に生かして 列柱に見立てている。DC1は大きな軒と床に切り取られた「和」が、DC2は「洋」がテーマである。
DC2の休憩ラウンジの室内は折り曲げた天井にして、折り曲げ方と高さが異なる様々な居場所をつくろうとしている。床も波打ったような形状にし、すべての席から海が見えるように奥に行くにしたがって高くする。
物流施設は巨大化するとともに機械化が進み、女性が働くようになるなど大きく変化している。ただ倉庫は人のための空間ではない。その中に人のための空間をつくる時の決め手のひとつは天井のデザインにあるようだ。

レッドウッド南港ディストリビューションセンター2
KLÜBB エリア
所在地: 大阪府大阪市
施主: ESR株式会社
用途: 物流施設内の休憩ラウンジ、
託児所及び売店
設計: タカトタマガミデザイン
設計協力: hyphen
施工: 前田建設工業
床面積: 547.7㎡
竣工: 2018年2月
玉上氏

玉上 貴人 (たまがみ たかと)
1973年横浜生まれ。
明治大学で建築を学び、設計事務所勤務、欧州建築を巡る旅の後、2002年にタカトタマガミデザインを設立。
現在、日本大学理工学部非常勤講師を兼任。手がけるプロジェクトの規模や用途は多岐にわたる。
2015年には作品集『TAKATO TAMAGAMI ARCHITECTURAL DESIGN』を出版。