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Case 27:

京都市美術館再整備計画

設計:青木淳・西澤徹夫設計共同体
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

作品画像

〈南東鳥瞰図〉



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日本最古の公立美術館の改修、新館建設による再整備計画。「可逆性」で将来を見据えつつ、時代のニーズに応えることをめざしたプロジェクト。

西澤徹夫氏が手掛けているのは京都市美術館の再整備計画だ。2015年に京都市が実施した公募型プロポーザルに青木淳氏との共同設計体で応募し、設計者に選ばれた。

現美術館は1933年に建てられた国内最古の公立美術館であり、帝冠様式の本館や収蔵庫、日本庭園などからなる。平安神宮や京都国立近代美術館、京都市動物園などがある岡崎地域に立地する。
プロポーザルでは本館の改修とともに本館西側(正面)の地下空間に現代美術の展示室や収蔵庫、ロビーなどからなる新棟を設けること、中庭の屋内化などが求められた。
ただプロポーザル後に予算や空間の制約などから現代美術の展示室の地下化は断念された。現収蔵庫が老朽化していることもあり、それを建て替えるという形で、地上に現代美術の展示室、地下に新しい収蔵庫をつくるという新館計画に変更された。
京都市美術館では大型の巡回展や公募展など複数の展覧会が同時に開催されることもある。現在のクラシカルで趣があるロビー空間ではそのような時に人をさばけないという課題もある。
来館者は本館西側(正面)を1層分掘り込んだ地下に入るスロープ広場からアプローチし、ガラスのファサード「ガラスリボン」に迎え入れられる。現代と80年以上前のクラシカルなファサードが上下に立面として現われ、その水平性を強調したファサードから新しい活動を感じることができる。
現美術館の1階にある大陳列室の床の一部を開けて地下から上がる動線を設けており、来館者は展示もできるロビー的な空間にした大展示室に出る。そしてここから本館と新館の各展示室に向かう。

クラシカルな本館に現代的なガラスのファサード、素材は変えながらも色調を合わせた新館外壁など、オリジナルを尊重しながら大胆なデザインも。

「提案で強調したのは文化財として保存するために既存の躯体を傷めないことだ。かつ50年後100年後に要件が変わって別のものをつくらなければならないといった時のことを考慮し、新設との完全な一体化など元に戻せない状況をつくらないようにした。つまり可逆性をテーマした。このようにオリジナルは残そうと考えているが、大胆に手も入れる」(西澤氏)。

新館の外壁は本館とは異なる素材にする。同じレンガタイルを使用するとオリジナルのシンメトリーの象徴性が失われるからだ。セメント系に金属系の素材を織り交ぜたものを使う予定だ。ただ色のトーンは合わせる。近くで見るとテクスチャアが明らかに異なるが、遠目で見た時にはまとまりのある見え方になる。
新館は現代美術の展示室の上に事務所・管理スペースを載せており、屋上庭園も設ける。大きなボリュームになるため既存の日本庭園に圧迫感がないようにセットバックさせている。また周辺にあるホテルの客室から機械室や室外機が見えないようにそれらを囲う。
内部空間にはチーク材のドアや木と石の巾木などのクラシカルなデザインが残っている。それらをできるだけ再利用、再制作する。例えばドアの場合、防火扉を義務付けられるためオリジナルは飾りとして残すという対応をする。
「80年間愛されてきたという価値がある。当時にベストと思ってつくったものがいまのベストとどのように適合できるかと考える方が合理的だ。次の人もいちばん合理的なこと、かつ文化的なことを考えればいい」(西澤氏)。
時代のニーズに合わせてデザインを連鎖させていくととともに、「可逆性」で将来を見据える。成熟した社会の建築のつくり方のひとつである。

京都市美術館再整備計画
所在地: 京都府京都市左京区岡崎
用途: 美術館
構造: 本館:鉄筋コンクリート造、
    一部SRC造、鉄骨造
    地下1階、地上2階

新館:鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
    地下1階、地上2階
設計: 青木淳・西澤徹夫設計共同体
建築面積: 8,441㎡
延床面積: 約19,950㎡
竣工予定: 平成31年度
西澤氏

西澤 徹夫 (にしざわ てつお)
1974年 京都府生まれ
2000年 東京藝術大学美術研究科建築専攻修了
2000-2005年 青木淳建築計画事務所
2007年 西澤徹夫建築事務所開設
東京国立近代美術館所蔵品ギャラリーリニューアル(2012年)、京都市美術館再整備計画(2015年~)、八戸市新美術館基本設計(2017年~)、展覧会会場デザイン多数