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Case 26:

紫泥堂ファームレストラン

設計:Studio YY
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

作品画像


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建物と人、建物と自然が近くなれるような建築、そこでしか体験できない空間にすることで、その空間がアイデンティティを再認識する場所になる。

Studio YYの中本剛志氏と田中裕一氏が手掛けているのはコンバージョンのプロジェクトだ。対象となる建物は中国・広州市の元製糖工場エリアの中にある。香港からフェリーで約2時間の位置だ。

このエリアは中国の企業家グループが投資を行い、開発を進めており、他の建物もホテル、飲食店、ブティックなどにコンバージョンされており、建築学校やアートゾーンなどの計画もある。クライアントはこのエリア内で有機野菜の観光農園を運営している日本企業だ。
製糖工場の事務所だった3階建てのレンガ組積造の建物をレストランにコンバージョンする。1階の室内は4つの部屋に分けられていた。広く使えるようにするため、間仕切りの構造壁の一部を壊した後に門型の鉄骨フレームを挿入し、2、3階の荷重を支える。仕上げは壁に塗られていた漆喰をはがして組積造が見えるようにし、床ははがしたタイルを張り直す。1階の設備はオープンキッチンにしてライブ感を持たせ、調理の様子を見せるとともに食の安全をアピールする。2階は高級レストランと陶器のギャラリーにして、3階は個室にする。
建物の前面に竹を編んだパーゴラをかけたテラスを設けている。現地に竹を曲げて家具をつくる職人がおり、その技術を活用する。パーゴラは元々あった樹木を避けながら設けており、パーゴラと木々の下に日陰を生み出している。パーゴラの柱を手掛かりとしながらテーブルもつくる。またパーゴラは1階の内部まで挿入され、天井を構成している。

工場事務所だった建物をレストランにコンバージョンするプロジェクト。考えたのは「現地の気候と文化をどう建築に読み込むか、どう引き立たせるか」。

「現地の気候と文化をどう建築に読み込むか、どう引き立たせるかを考えた。暑い地域であり、木の下や大きな塀の下の日陰になっているところで人が気持ち良さそうに休んでいた。素直にそういう場所をつくったらいいと思った。全体的に日陰の気持ちのいいスペースになることをめざしている」(田中氏)。

建物はゾーンの入口の正面に位置しており、パーゴラをかけたテラスは客の視線を引き込むことも意図している。
「ファサードが組積造なので開口部が小さく、室内が見づらい。また建物を保存しようとしているのでファサードには手を入れない。テラスとパーゴラのみを加えることにした。テラスで顔出しをすることでどういう場所かがわかり、人がいるという安心感が生まれる。そのような連鎖が生まれるような場所にするための空間をつくる」(中本氏)。
中本氏と田中氏は年齢も性格も異なるが、目指すところは同じだという。
「人と接点を持つところを柔らかくし、風や光とのフィルターになるようなことをしたい。そうすることで光や風を感じやすくする」(田中氏)。

「建物と人、建物と自然が近くなれるような建築を信条にしている。なるべく地域にある文化や伝統をすくいあげて、建築をつくる。そうすることでそこでしかできないような体験やテクスチャーなど空間に入らないとわからないことが実現できる。アイデンティティを再認識してもらう場所になればという思いがある」(中本氏)。
これからも2つの異なる個性がぶつかり合い、融合しながら試みが行われることだろう。

紫泥堂ファームレストラン
所在地: 中国 広東省 仏山市 順徳区
用途: 飲食(複合施設)
構造: 組積造+鉄骨補強
設計: Studio YY
建築面積: 232㎡
延床面積: 569.6㎡
竣工予定: 2017年3月
中本氏・田中氏

中本 剛志 (なかもと つよし)
1977年鳥取県生まれ。
カリフォルニア州立工科大学卒業後、
Asymptote, REX, OMA を経て帰国。
NAP建築設計事務所勤務後、
Studio YY設立。

田中 裕一 (たなか ゆういち)
1982年福島県生まれ。
横浜国立大学院Y-GSA卒業後、
オランダNL Architects、
NAP建築設計事務所を経て、
Studio YY設立。

Studio YY
2014年設立
2016年 SD Review 朝倉賞受賞