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Case 38:

Nプロジェクト

山下貴成建築設計事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)




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検診のメディカルツーリズムを想定したホテル、カフェ、スパ等からなるプログラム。自然環境を最大限生かして、建築を建てるのではなく敷地を建築化する。

山下貴成氏が手掛けているのは環境に同化した建築の試みである。

敷地は静岡県にある。企業の保養所跡地であり、周辺は高級別荘地だ。富士山を西側に、駿河湾を南西側に望むことができる。温泉が出る地域でもある。
まちの幹線道路沿いにある。敷地の広さは約4000坪もあるが、傾斜地を含んでいる。また市の開発規制で敷地面積の40%しか建物は建てられない。
クライアントは医療法人であり、プログラムの相談から始め、計画を検討している。
「周辺は森であり、敷地はくりぬかれているように見えた。また森の隙間から富士山が望めた。この切りとられた雄大な大地と、眺望のいい敷地の条件を活かしたいと考えた。平らな部分は、あえて空地として残し、傾斜地の部分に建築を建てることを提案している。そうすることで周辺の自然と近い関係がつくれる。建築があることで特徴が顕在化されるつくり方を見つけていきたい」(山下氏)。
土地を均して建物をつくるのではなく、コンター状に建物をつくる。つまり敷地形状をできるだけ変えずに、その形状の特徴を生かして建物をつくる。頂部の平らな部分は土のままにして、そのレベルに合わせて傾斜地部分の上部にコンクリートのスラブを張り、屋根・天井にする。スラブの上に土を盛り、庭をつくる。建物内部の床面は地形を残しながら、つくっていく。

約4000坪の敷地の形状をできるだけ変えず、大地を顕在化させながら、環境に同化した建物をつくる。

「地層が捲れただけというイメージだ。敷地を建築化するようなことをやってみたいと考えている。自然環境を最大限生かせるような建築にし、場所のポテンシャルを引き出して、環境に同化させる。建築を建てているというよりも環境をつくっているという意識だ」(山下氏)。

採用する構法や技術をこれから検討する。
「サイトスペシフィックな建築を考えながらも、壁や床、天井などの建築要素に新しい構法や技術を採り入れてみることで、いわゆる特殊解とは異なる建築にしたいと思っている」(山下氏)。
傾斜地を活かした棚田状のスパ、自然を感じられるホテル、気軽に利用できるレストラン・カフェなどからなるプログラムを提案している。
富士山を望む庭を通り、円形に切り抜かれた入り口からアプローチする。エントランス広場、ラウンジと続き、スパとレストラン・カフェに分かれる。
棚田状のスパは壁をガラスにして、眼前に森が広がるような雰囲気の空間にする。道路から見える位置に地域の住民も利用できるレストラン・カフェを配置する。ステージを設けてイベントを見えるようにして、その先に駿河湾が見える。
ホテルは森に囲まれたように10室の客室を配置する。海外からの観光客を含め、検診のメディカルツーリズムを想定している。近くにクライアントの医療施設があり、施設間で連携を行う。
「傾斜地にスラブをかけるだけの単純な操作で、富士山や駿河湾を望む、庭を楽しむ、森を感じるなど、様々なシーンが発生する」(山下氏)。
2020年度に新東名高速道路のインタージェンジが近くに開通予定だ。今後、プログラムの変更もあるだろうが、3年後の完成を目指す。

Nプロジェクト
所在地: 静岡県
用途 スパ施設、宿泊施設、飲食施設
建築設計: 山下貴成建築設計事務所
ランドスケープ: 戸村英子設計事務所
構造設計: 平岩構造計画
敷地面積: 12,484.92㎡
建築面積: 4993.97㎡
延床面積: 6903.97㎡
階数: 地上1階、地下1階
構造: S造+RC造
山下氏

山下貴成(やました たかしげ)
1980年福岡県生まれ。
2002年東海大学工学部建築学科(吉松秀樹研究室)卒業。
2005年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻(六角鬼丈研究室)修了。
2005-2015年SANAA勤務。
2015年山下貴成建築設計事務所設立。
現在、東海大学、日本工業大学非常勤講師。