file.2 透明度を高める GLASS&ARCHITECTURE Design Files
case1:金沢21世紀美術館
〔エントランス〕 Top
金沢21世紀美術館平面図 金沢21世紀美術館概略 設計者インタビュー
金沢市21世紀美術館建設事務局インタビュー
重なり合っても緑色になりにくい。透明度を追求しガラスの存在感を希薄化する。
美術館入り口からの視線が正面の壁に当たるまでに通過するガラスの厚みは、入り口自動ドア12ミリ+風除室自動ドア12ミリ+光庭前面15+15ミリ+光庭後面15+15ミリ=合計84ミリ——その透明度は?
DATA
■風除室および光庭ガラス仕様
種別:高透過ガラス『クラリティア』
板厚:(光庭)15ミリ×2——合わせガラス
サイズ:約3000mm×4500mm
ホワイエから展示室14を見る
ホワイエから展示室14を見る 写真:新建築社
 美術館東側のエントランスはもっとも広範囲に、そして奥深く美術館内部に視線を通すことができるポイントだ。遊歩道からアプローチ通路に下りてまっすぐ進むと、そこが本多通り口エントランス。そこから、ロビーと光庭1を通して円形の展示室14の白い壁面まで視覚を遮るものはなにも無いが、この壁面にいたるまで何重ものガラス壁が存在する。視線は合計何ミリのガラスを透過して、展示室壁面に到達するのだろうか。入り口自動ドア12ミリ+風除室自動ドア12ミリ+光庭前面15+15ミリ+光庭後面15+15ミリ=合計84ミリ。そのときのイメージは写真の通りのクリアな透明感が得られている。通常のフロートガラスでは、かなり強い緑のフィルターがかけられたような色がつくが、ここでは全てに高透過ガラス『クラリティア』を使用しているため透明度が高い。仮にこのガラスを全て一般的なフロート板ガラスに置き換えると、(あくまで計算上だが)入口ドアから展示室14までの可視光透過率は約44%。クラリティアの場合は約66%と、相当の差がつくことになる。
 合わせガラスの中間膜の透明性についても検討され、ここでは透明性に優れるPVB膜の使用が望ましいところだが、外壁に使用する合わせガラスであるため耐水性に優れるAB膜(特殊EVA膜)約1.6ミリが採用されることとなった。
<参考> 各種15ミリ合わせガラスの可視光線透過率比較
クラリティア15+15 PVB膜(60ミル=約1.5ミリ)の場合→約91%
クラリティア15+15 AB膜(特殊EVA膜 約1.6ミリ)の場合→約89%
フロート15+15 PVB膜(60ミル=約1.5ミリ)の場合→約77%
遊歩道から本多通り口エントランスを見る 本多通り口エントランス
遊歩道から本多通り口エントランスを見る   本多通り口エントランス
この階段室とエレベーターはすべてフロートガラスで構成されている。高透過ではないため、緑色がかって見える。 この階段室とエ
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てフロートガラス
で構成されている。
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