金沢21世紀美術館には全面ガラス壁で囲まれた4つの中庭がある。そのガラス壁にはフレームもリブも巾木も無く、光に満ちたガラス・キューブが館内に差し込まれているようなデザインが実現している。そのためにガラス壁を天井と床の2辺のみの支持となっている。垂直方向の目地は約18mmのクリアランスをとって突き合わせの上コーキング。ガラスの荷重はすべて下辺が負い、上辺はガラスを固定する役割を担っているが、垂直方向のサイズが大きくなるとガラスの自重でのタワミ発生のリスクが増大する。合わせガラス製造時の自然タワミ量(反り)はJIS規格では長さの0.3%以内に抑えることを求められているが、縦フレームのない場合には反りや施工時のタワミが相互に影響し、全くの平面を構成するのが難しい。隣り合わせるガラスに目違いが生じ、きれいな平面にならないのである。これを回避するためには、サッシで垂直方向も支持するか、縦リブを設置することが一般的だが、この中庭のフレームレス施工では、それぞれのガラスの反り方向を確認し目違いが強調されない組み合わせや方向を事前に計画するなど、高度な施工技術を駆使している。ここでは15ミリ+15ミリの合わせガラスの仕様、最大寸法一枚あたりの重量は約1350kgとなっている。 |