file.6 アーティスティック・ガラス GLASS&ARCHITECTURE Design Files
case1:金沢21世紀美術館
[常設展示『レアンドロのプール』] Top
金沢21世紀美術館平面図 金沢21世紀美術館概略 設計者インタビュー
金沢市21世紀美術館建設事務局インタビュー
アート作品に使われる長期の耐圧仕様
常設展示のひとつ『レアンドロのプール』。何の変哲もない小さな屋外プールだが、そのプールの底には意外な秘密が隠されていた……。
DATA
■『レアンドロのプール』ガラス仕様
種別:高透過強化合わせガラス
板厚:19ミリ+19ミリ
サイズ:約3000mm×6000mm
南西側外壁
『レアンドロのプール』の底からの見上げ
(作品:"The Swimming Pool", 2004, Leandro Erlich)
 金沢21世紀美術館にはいくつかのインスタレーションが常設展示されている。そのうちのひとつが光庭1に設置されている『レアンドロのプール』。一見何の変哲も無い小さな屋外プール。しかし、そのプールの底には意外な仕掛けが施されているのだ。この作品は光庭に立って眺めるだけではなく、もうひとつの鑑賞ポイントがある。それは地階からアプローチして行き着くプールの底。鑑賞者は知らずにプールの底に立っている。もちろん服は着たまま、水には濡れずに空気も吸える。実はこのプール、水面下約15cmの位置に全面にガラスが張られていて、水があるのはその上だけ。
 この作品の技術的な要となっているのが、水面下に張られた高透過強化合わせガラスで、多くの機能が求められた。まずは長期の耐圧性能。水圧はもちろん、メインテナンスのために人が乗る荷重にも絶える必要がある。しかし最も重要なのが積雪に耐えること。金沢の屋外施設にはすべて必要な条件で、今回は4トンを超える荷重に耐える設計がなされている。外壁の設定風圧の約4倍の荷重だ。このような水平設置で常時圧力のかかるような使用方法はガラスにとってもっとも厳しい条件のひとつである。
 作家は以前韓国でも同様の作品を作っている。そこでは一般的なフロートガラスが用いられており、プール底から見るイメージにガラス色のフィルターがかかってしまった。しかし今回は高透過ガラスが用いられて、空、雲、日光の色がリアルにプール底まで届き、作品の完成度は高まった。
南東側外壁
光庭1に設置されている『レアンドロのプール』(屋外部分)。
水流が起こされて人口的なさざ波がつくられ、適度な視覚的マスキング効果がもたらされている。
高透過強化ガラスとプール壁面の納まり(プール水抜き時) 高透過強化ガラスとプール壁面の納まり(プール水抜き時) 『レアンドロのプール』構成概念図 『レアンドロのプール』構成概念図