金沢21世紀美術館のガラスは基本的にフレームレスに見せるのがデザインコンセプト。できることなら継ぎ目の全く無い1枚の透明な膜で構成したいと意図しているかのようだ。館内は展示室の壁面以外は基本的にフレームレスなガラスの壁面で構成されているが、縦フレームのみならず水平方向のフレームも床と天井にビルトインされ、視覚的に副資材は徹底的に排除されているように見える。(展示室の壁は展示壁面としての必要性から、仕上げは内外とも塗装壁面であるが、ここにも巾木、廻り縁などはない)。
ガラススクリーンの納まりのシンプルさのために、施工は逆に複雑な工程を経る。ガラスは上下サッシへの呑み込み寸法が必要だが、水平サッシが天井や床に埋め込まれているということは、ガラスの縦方向の実寸法は天井高よりも上下の呑み込み分(約30mm)大きい。通常、ガラススクリーンは屋外側から施工し、運搬・移動と、はめ込みのための上方のクリアランスは確保できるが、内部スクリーンでしかも天井高さよりガラスの高さのほうが大きいというのは施工上大きな困難を伴う。建物内部でガラスを垂直に立てたまま移動できないばかりか、回転させるのも不可能である。ここではガラス施工を床の仕上げコンクリートの打設前に行うことによってクリアランスを確保し、ガラス移動も、きわめて低床の台車を用いて傾斜した状態で行うなどの工夫によりこの施工を可能にしている。 |