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case10:大林組技術研究所本館 テクノステーション GLASS&ARCHITECTURE Design Files
file.38 “ガラス制振壁”によるミニマムな守衛所
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概要 基本図面
ガラスの上にふわりと屋根が浮かぶ守衛所。この透明感のある意匠を実現するために採用されたのが、ガラス制振壁だ。ガラスを構造体として活用できる、その仕組みとは?
「粘弾性体が変形し、エネルギーを吸収する」
 
守衛所を正面から見る。浮かぶように見える屋根。
 

――守衛所に「ガラス制振壁」を使われた意図を教えてください。

和田 入退館を確認するという機能上視認性が重要で、かつ敷地の入口にあるため研究所の顔にもなります。そこで建物にガラスを採用することになりました。屋根を浮かせ、その下で人を受け入れる形を実現したい。そう考えたときに登場したアイデアが“ガラス制振壁”です。

奥田 ガラス制振壁は、開放性やデザイン性、透明性というメリットを持ちながら制振能力を担うものです。粘弾性体とガラスの組み合わせによるもので、風や地震に対するガラスの動きで粘弾性体が変形し、エネルギーを吸収するシステムです。

 
(左図)ガラス制振壁の概要。大林組、住友スリーエム、AGC硝子建材による共同開発だ。
(右写真)粘弾性体は透明でやわらかくゴムのような質感。粘りがある。通常のシールに採用する
       シリコンなどに比べてやわらかい。
 
構成部材
 
ガラス制振壁の構成 ※上記画像クリックで拡大表示
 

――どういった原理なのでしょうか。

奥田 基本構成は、粘弾性体とガラスと固定板の3つです。粘弾性体は透明で、耐候性と自己接着性にすぐれた材料です。粘弾性体の機能は“粘”と“弾”があります。“粘”は揺れを吸収し、おさめる機能。“弾”は剛性をあげ、揺れにくくする機能です。ガラスは力の伝達機能を受け持ちます。固定板は部材同士をつなぐ金物です。粘弾性体はガラスの中心に対して線対称、上下左右に取り付けます。配置パターンは6種類。ガラス制振壁の設置箇所や期待する性能により変わります。粘弾性体が多いほうが、制振効果は高いです。

和田 こちらの守衛所の場合、粘弾性体はガラスの上下に入っており、縦目地は通常のシールです。そして屋根はコンクリートの壁の上部にある直径5cm程度の細い柱で支えています。大まかに言うと鉛直力は柱が支え、水平力はガラス制振壁が受け持つような形式ですね。

 
(左)  ガラス上下辺に粘弾性体を取り付けた「ガラス制振壁」による開口部。
(右上)コンクリートの壁の上部をガラス制振壁で透かしている。
(右下)ガラス制振壁下部のディテール。構造がわかるよう、一部を透過としている。
 
守衛棟断面詳細図
 

――ガラスはどのようなものを使われていますか?

和田 インテリアを兼ねる部分はLow-Eペアガラス。完全に外部となっている部分はシングルのフロートガラスです。ペアでもシングルでも使えます。

奥田 ガラス全体が瞬間的に破砕する強化ガラスは防犯上の観点からも使わない方がよいですね。性能証明のための試験も強化ガラスは使わない前提でフロート板ガラスと倍強度ガラスのみで行いました。

――今後に期待できそうな技術ですね。

奥田 ガラス制振壁はこれまで木造中心に適用事例が9例あり、こちらの守衛所が10例目です。10年以上研究を重ねてきて、最初の設置例は2003年でした。これまでは新築の戸建住宅や伝統文化財の耐震改修などに活用してきました。今回(財)日本建築総合試験所で建築技術性能証明を取得したので、普及が期待できます。

 
■ガラス制振壁の実験ビデオ(提供:大林組)
 
(動画)面外方向加振状況
 
(動画)面内方向加振状況(ズーム)
 
面外方向に力をかけて安全性を確認。試験体は幅1800mm×高さ1800mm、ガラス厚12mm。下辺をガラス面と垂直方向に20cm動かしている。振動台の動きに応じて粘弾性体とガラスが動く。最大層間変位角1/17。
 
同試験体面内方向に力をかけて制振性能を確認。試験体の側面下部分をズームしたもの。ガラスと粘弾性体、固定板の挙動がわかる。最大層間変位角1/20。