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case8:鋸南の家 GLASS&ARCHITECTURE Design Files
file.31 風のわたるディテール
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概要 基本図面
木製サッシ、障子、雨戸をすべて戸袋に引き込むことができるという、建物南側にある幅約5mの大きな開口部。開口部の詳細に込められた大技・小技の数々を教えてもらった。
「窓を通じて風を取り込み、大屋根で風を受け流す」
 
サッシを開け放した状態での庭の眺め。
土手越しに水平に広がる田んぼの風景を、深い庇とデッキの床・壁が切り取る。
 
 

――風景を取り込む大きな窓が印象的ですが、その特徴について教えてください。

石井  最初に敷地を拝見したときに印象的だったのが、建物の正面にある土手と、その向こうに広がる田んぼ、そして遠景の山々という風景なんです。地面の高さからでは田んぼは見えないので、土手をなめつつ田んぼを見る風景をイメージして、地面から1mほど床を上げました。この高さは、かなり慎重に決めたものです。一方で建物の北側背後には小高い丘が控えています。そこで建物は低く抑え、丘から田んぼへと続く地形の流れに対して素直なボリュームを置くことを心がけました。窓を通じて風を取り込み、大屋根で風を受け流すことができるのではないかと考えたのです。

 
西側外観。建物は高床式で、北側の2階部分は大きく跳ね出している。深い庇を持つ南側の開口部とゆるやかな大屋根が、南側から吹く風を受け流す。
     

――開口部は、床と庇で額縁状に囲まれていますがその意図は?

石井  深い庇により内部に影をつくることで外と内に明暗のコンラストを生み出し、より外の色彩が鮮やかに見えるようにしたかったんです。また蒸し暑く雨も多い日本の気候風土には、庇の存在が不可欠という考えもあります。さらに庇を美しくつくりたいという思いもあり、庇だけが外部に飛び出すのではなく建物まるごと庇のように扱うことを狙いました。

――特に気になるのは、雨戸から障子まで戸袋に納めてしまう開口部のディテールです。どのようになっているのでしょうか。

石井  傾斜した天井に沿わせるために段差がありますが、基本的には木製建具の一般的な納まりです。内側から、障子、複層ガラス建具、網戸、雨戸の4種、各5枚引きの構成になっていますが、すべての列ごとに建具の高さが異なるところが特殊でしょうか。


 
南側デッキからオープンスペースを見る。2階寝室の開口部やトップライトからの光が奥行きをつくり出す。

 

南側開口部。障子、複層ガラス建具、網戸、雨戸と各5枚、計20枚の引き戸が並行する。

南側開口断面図 →詳細はこちら
 
南側開口部の水平詳細断面図 →詳細はこちら

 

――床と接する部分はどのようになっているのでしょうか。

石井  ステンレスの丸鋼レールと戸車を使用しています。網戸・雨戸も基本的には同じ納まりですね。障子は現場で溝をついてもらい、その上を滑らせています。

――木製サッシはすべて既製品ではなく制作されたものですか。

石井  家具と建具は榎本木工所にお願いして制作してもらいました。既製品に比べると気密性は落ちるのですが、それほどコストをかけずに納まりに融通を利かせることができます。また、家具とサッシで同じ材質の木材を使うこともできます。最近は木製サッシをつくられた経験のある職人さんは減っています。

――気密性に対する対策はどのようにされているのでしょう。

石井  サッシの縦框を相じゃくりとして噛み合うように納め、噛みあわせ部にゴムのパッキンをつけています。ただ温暖な地域でもあるので、あまり気密への配慮はしていません。サッシ下部はぎりぎりまで戸車を深くつけていますが、それでもすきま風は入ります。以前下框部分にモヘアをつけたこともあるのですが使っているうちに外れてきたり摩耗したりもしますから、割り切ることにしています。


写真:鳥村鋼一
 
開口部スケッチ
木製サッシ上端部詳細スケッチ。
→詳細はこちら