窓ガラスの結露対策 結露が発生する原因と予防

公開日:2023年3月20日

建物の管理における悩みの種のひとつが「結露」です。

冬場に発生するイメージがある結露ですが、梅雨や夏場にも発生する可能性があります。
さらに、結露を放置した結果、健康や室内環境に大きな被害が生じてしまうケースも少なくありません。

そのため、年間を通して適切な対策を行い、まずは結露の発生を防ぐことが重要です。
本記事では、窓ガラスに焦点をあてながら、結露が発生する原因と予防や対策の方法について解説します。

窓ガラスの結露とは

冬の朝などに、窓ガラス表面に水滴が付着している現象を「結露」と呼びます。
結露発生時の条件によっては、窓ガラス表面だけでなくサッシや窓枠にまで水滴が付着することもあります。

窓回りに生じる結露を防ぐためには、まずはその発生メカニズムを理解することが重要です。

窓ガラスに結露が発生する原因

窓ガラスに結露が発生する原因は、実は非常に単純なものです。

発生の原因を知ることは、適切な対策を行うための近道でもあります。
ここでは、結露の発生メカニズムについて解説します。

空気中の水蒸気量と温度差によって発生

結露の発生には、空気中の水蒸気が大きく関係しています。

空気中に含むことができる水蒸気の最大量を「飽和水蒸気量」と呼びます。

飽和水蒸気量は温度と大きく関係しており、温度が下がるほど空気中に含むことのできる水蒸気量は減少します。
冷たいものに暖かい空気が触れるなど、急激な温度差が生じると、冷やされた空気の飽和水蒸気量が減少するため、溢れた水蒸気がそのままでは存在できず凝結し水へと変わるのです。

そのため、冬には結露が発生しやすくなります。
室内の暖かい空気が、屋外の空気に冷やされた窓ガラスに触れることで、窓ガラスの表面に水滴が現れるのです。

また、氷の入った冷たいグラスの表面に水滴が現れる現象は、結露によるものとしてよく知られています。
窓ガラスにおいても、同様のメカニズムで結露が発生します。

夏場や梅雨の時期にも、共に高い湿度と気温の影響を受けた窓ガラスが、冷房によって冷やされた空気に触れることで結露が発生します。

窓の結露を放置した場合

窓ガラスに結露が発生していると分かっていても、定期的に拭き取るといった対応は過度に手間がかかり、難しいものです。
手入れが行き届かず、そのまま放置してしまっている建物は少なくありません。

しかし、わずかに濡れているだけであっても、放置することは健康や建物に害をもたらす可能性があります。
ここでは、2つの点から放置による問題を解説します。

カビ発生の原因に

結露の放置は、健康に重大な被害をもたらす可能性があります。

結露のうち、窓ガラスや壁の表面など目に見える場所で発生するものが「表面結露」です。

この表面結露を放置すると、結露した部分では湿った状態と暖かな室内の空気という条件が重なり、カビが発生しやすい状態になります。

特に、外壁の裏側となる壁面や床面に発生する結露の中で、普段目につかない場所に生じたものには注意が必要です。
結露に気付かず、いつのまにかカビに覆われていたという場合も少なくありません。

カビはアレルギーやぜん息、シックハウス症候群を引き起こす原因のひとつであると言われています。
放置した結露が原因で、体調を崩してしまう恐れもあるのです。

家屋を傷める原因にも

さらに結露は、建物そのものにも悪影響を与えます。

建物そのものに影響が出るパターンとして、窓ガラスや壁などの表面で結露が発生し、水が隙間から壁や床などの建材の中へと入り込んでしまうケースが挙げられます。

また、空気が壁や天井などの内部に侵入し冷やされることで起きる「内部結露」には、特に注意が必要です。
内部結露が発生すると、建物の構造に関わる部分が常に湿った状態となってしまいます。
建材が水分を含むと、本来の機能を果たせないばかりか、脱落や破損の恐れもあります。
木材で内部結露が発生した場合には、シロアリによる被害を受けやすく、構造部材を腐らせる原因となります。
構造部材にまで影響が及ぶと、建物全体の耐震性や堅牢性の低下にもつながりかねません。

結露対策に効果的な方法

結露を放置することによるリスクについては、ここまで解説してきた通りです。
しかし、結露の発生に対して、常に完璧に対応するのは難しいものです。

そのため、結露の発生を予防する取り組みを行うことが重要です。
ここでは、すぐに取り組める対策からリフォームによる対策まで、さまざまな角度から結露防止の対策をご紹介します。

対策① 除湿をする

結露対策を行う上では、空気中の水蒸気の量を減らす=部屋の湿度を下げることが重要です。
簡単に取り入れられる対策として、窓を開けて換気をし、空気の入れ替えを行うことが挙げられます。

乾燥しやすい冬場であっても、水回りや部屋干しを行う場所では湿度が高くなります。
さらに加湿器などを使用して、空気の入れ替えを行わないままで長時間過ごすと、知らないうちに室内の湿度が非常に高くなってしまうこともあります。

そこで有効なのが、換気です。

数分間と短い時間だけでも窓を全開にし、湿気のこもった空気を逃がすことで室内の湿度は一気に低下します。
室内外の温度差を少なくする効果もあり、より結露しにくい状態をつくることができます。
また、手動での換気に加えて、換気扇を併用することも効果的です。

手間をかけずに除湿できる、除湿機の使用も効果的な結露防止対策のひとつです。
除湿機の中には、湿度を適正に保つ機能を備えるものも増えており、結露を抑えつつ、過度に乾燥しないよう保つことができます。

対策② 断熱をする

結露防止に効果的なもうひとつの対策が断熱です。

特に外気温の影響を受けやすい窓回りの断熱性能を高めることは、結露防止に大きな効果があります。
窓ガラスの断熱では、ガラスと室内空気の間に空気層を作ることが重要です。

簡単にできる方法としては、断熱性の高いカーテンを使用し、窓ガラスと室内空気の間に空気層を作る方法が挙げられます。

また、建物の構造や使用状況によっては、簡易な方法だけでは結露の発生を防げないケースもあります。
その際に検討したいのが、断熱性能を向上させるリフォームです。

特に結露の発生しやすい窓は、Low-Eガラスなど断熱性能を持っている窓ガラスに変えるなど、窓そのものに断熱性能をプラスすることで結露によるリスクを低減できます。
選ぶガラスの種類によって効果はさまざまで、必要な機能や予算に合わせた選択が可能です。

他にも、窓枠を室内側に増設して新たに窓を設置し、空気の層を作る二重窓も結露防止に大きな効果があります。

これらの方法は、短期間で工事が完了し生活への影響も最小限です。

さらに、窓ガラスの性能を向上させることは、結露の発生を防ぐだけでなく、暑さや寒さを軽減する効果も期待できます。
窓のリフォームは他の対策方法と比較して高価ではあるものの、室内環境の改善という点においても大きなメリットがあります。

ビルの窓の結露の場合は?

建物の構造種別や規模によっても、結露の発生しやすさは異なってきます。

ここでは、オフィスビルで発生する結露の特徴や、効果的な対策について解説します。

ビルも家屋と同じく結露が発生しやすい

一般的に、家屋と比べ断熱性・気密性ともに優れているオフィスビルですが、対策が取られていない場合は、家屋同様に結露が発生してしまいます。

ビルで結露が発生する大きな理由として挙げられるのが、高い気密性ゆえに空気が流れにくいことです。
また、断熱性に優れていても窓回りは外気の冷たさの影響を受けやすく、対策なしでは結露が発生してしまいます。

さらに、鉄筋コンクリート造の建物は特に結露に悩まされやすい特徴を持っています。
コンクリートの特性である高い気密性によって、より空気が逃げにくく、他の構造と比較し結露が発生しやすいのです。

大がかりなリフォームをせずとも対策が可能

家屋とは異なり、ビルにおいてはすぐにできる簡易な対策で結露の発生を抑えることは困難です。
かといって、大規模リフォームやリノベーションに踏み切るのは簡単なことではありません。

ここでは、ビルでも効果的に結露対策が行える2つの手法をご紹介いたします。

短工期&抑えたコストでできる既存窓の複層ガラス化

住宅と同じく、大きな効果をもたらすのが「窓のリフォーム」です。

ガラス1枚で構成された窓に比べ、2枚のガラスで層が作られた複層ガラスを使用した窓は非常に高い断熱効果を備えています。
加えて、断熱性能によってエアコンの効きも良くなり、節電の観点からも大きなメリットがあります。

また、築年数の古い建物では、1枚のガラスで窓が構成されている場合が少なくありません。
建物の窓すべてを複層ガラスに変更しようとした際、悩ましい存在が取り外すことのできないFIX窓です。

このような窓に対しては、既存の窓ガラスの上から貼り付けるだけでLow-E複層ガラスと同等の性能を得られる<アトッチ>を使用し、断熱を行うと効果的です。

室内側に二重窓を設ける

ガラスを窓に貼り付ける方法以外にも優れた断熱効果を付加し、結露の発生を予防できるのが窓の室内側に枠を取り付け、新たにもうひとつ窓を設ける「二重窓」へのリフォームです。

既存の窓と新しい窓の間に大きな空気の層を作り、室外の冷たさと室内の暖かさのギャップを抑えます。

まとめ

窓ガラスにフォーカスして、結露の発生するメカニズムから、住宅やビルなど、建物の種類ごとに予防や対策の方法を解説してきました。

結露は、放置してしまうと建物や健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

拭き取りなどのこまめな対応以上に、あらかじめ発生させないための対策が重要です。
断熱と除湿の両面からアプローチすることで、結露発生の予防効果が期待できます。

簡易な対策によって改善効果がみられない場合には、窓のリフォームをおすすめします。