省エネ

これからの建築は冷暖房や照明などのランニングエネルギーを適切にコントロールし、環境負荷を抑えていく必要があります。
窓は、建築物を構成する一つの大事な部位であり、窓を通して熱が出入りするので、主要材料である窓ガラスは省エネルギーへの関わりの大きな部材の一つです。

我が国におけるエネルギー消費量の動向をみてみると、業務部門・家庭部門のエネルギー消費量は大きく増加しており、建築物における省エネルギー対策の抜本的強化が必要不可欠な状況にあります。
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向け、建築物分野の省エネ対策を加速させるため、2022年に建築物省エネ法が改正されました。
2025年4月以降に着工する原則全ての住宅・建築物について省エネ基準適合が義務付けられます。また、省エネ基準適合義務化に先立ち、2024年4月から大規模非住宅建築物の省エネ基準が引き上げられました。

表:建物区分ごとの省エネ基準適合義務の対象表

建築物省エネ法に適用される基準は以下の通りです。

適用基準 住宅 非住宅
①省エネ基準
(エネルギー消費性能基準)
一次エネルギー消費量基準 BEI≦1.0 BEI≦0.75
(工場など)
BEI≦0.8
(事務所、学校、ホテル、百貨店など)
BEI≦0.85
(病院、飲食店、集会所など)
外皮基準 外皮平均熱貫流率(Uₐ値)
⇒地域の区分に応じた基準値
平均日射熱取得率(ηₐC値)
⇒地域の区分に応じた基準値
適用除外
②誘導基準 一次エネルギー消費量基準 BEI≦0.8 BEI≦0.6
(事務所、学校、工場など)
BEI≦0.7
(ホテル、百貨店、病院、飲食店、集会所など)
外皮基準 外皮平均熱貫流率(Uₐ値)
⇒地域の区分に応じた基準値
平均日射熱取得率(ηₐC値)
⇒地域の区分に応じた基準値
PAL*≦用途と地域の区分に応じた基準値
③住宅事業建築主基準 一次エネルギー消費量基準 BEI≦0.85
(建売戸建住宅、目標年度:令和2年度)
(住宅のみ)
BEI≦0.8
(注文戸建住宅、目標年度:令和6年度)
BEI≦0.9
(賃貸アパート、目標年度:令和6年度)
外皮基準 強化外皮基準(ZEH水準)
  • 住宅の性能基準
  • 建築物(非住宅)の性能基準
  • ZEH、ZEBについて
  • エコガラスと建材トップランナー制度

住宅の性能基準

住宅の性能基準には、外皮に関する評価手法として外皮平均熱貫流率(UA)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)が、設備に関する評価手法として一次エネルギー消費量が定められています。外皮の熱性能は、外皮表面積あたりの熱損失(換気による熱損失量を除く)である外皮平均熱貫流率(UA値)と、外皮表面積あたりの日射熱取得量である冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)を算出し、地域ごとの基準値以下であることが求められます。

住宅における地域毎の外皮性能の基準値は、以下の通りです。
住宅における各種断熱基準(外皮平均熱貫流率)と適合する窓性能・仕様は、以下の通りです。

表:地域毎の外皮平均熱貫流率と冷房機の平均日射熱取得率

住宅の開口部の熱貫流率と日射遮蔽対策の仕様基準は以下の通りとなってます。

地域の区分 基準の水準 開口部の熱貫流率
の基準値
[W/(㎡・K)]
日射遮蔽対策の基準値
戸建住宅 1~3地域 誘導基準 1.9
省エネ基準 2.3
4地域 誘導基準 2.3
省エネ基準 3.5
5~7地域 誘導基準 2.3 • 窓の日射熱取得率が0.59以下であるもの
• ガラスの日射熱取得率が0.73以下であるもの
• 付属部材を設けるもの
• ひさし、軒等を設けるもの
省エネ基準 4.7
8地域 誘導基準 • 窓の日射熱取得率が0.53以下であるもの
• ガラスの日射熱取得率が0.66以下であるもの
• 付属部材を設けるもの
• ひさし、軒等を設けるもの"
省エネ基準
共同住宅 1~2地域 誘導基準 1.9
省エネ基準 2.3
3地域 誘導基準 2.3
省エネ基準 2.9
4地域 誘導基準 2.9
省エネ基準 3.5
5~7地域 誘導基準 2.9
省エネ基準 4.7
8地域 誘導基準 北±22.5度の方位を除く開口部に次のいずれかの対策を講ずるもの
• 窓の日射熱取得率が0.52以下であるもの
• ガラスの日射熱取得率が0.65以下であるもの
• 付属部材を設けるもの
• ひさし、軒等を設けるもの
省エネ基準

<参考情報>

■建築物省エネ法における省エネ地域区分について

各市区町村における省エネ地域区分は、以下をご参照ください。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/chiikikubun-sinkyuu.pdf

建築物(非住宅)の性能基準

非住宅の性能基準は、外皮基準と一次エネルギー消費量基準があります。規制措置である省エネ基準適合性判定及び届出では、非住宅用途では、外皮性能基準は適用されませんが、誘導措置では、外皮基準を満たすことが必要となります。

非住宅の外皮基準は、非住宅の窓や外壁などの外皮性能(PAL*)を評価する基準をPAL*の基準値は建物用途に合わせて地域区分ごとに以下のように定められています。
PAL*は、ペリメータゾーン(屋内周囲空間)の年間熱負荷をペリメータゾーンの床面積で除した値です。床面積算出方法は、外周長×5mとし、かつ、屋根とピロティ面積はそのまま算入します。

PAL* = ペリメータゾーン/ペリメータゾーンの床面積

PAL*の基準値は建物用途に合わせて地域区分ごとに以下のように定められています。

表:PAL*の建物用途ごとの基準値

PAL*の計算例(事務所モデル・基準階)およびガラス熱性能値と基準階事務室PAL*値の関係については、以下をご確認ください。

<参考情報>

■建築物省エネ法における省エネ地域区分について

各市区町村における省エネ地域区分は、以下をご参照ください。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/chiikikubun-sinkyuu.pdf

ZEH、ZEBについて

建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味でゼロ又は概ねゼロとなる建築物として、住宅ではZEH(net Zero Energy House)、非住宅ではZEB(net Zero Energy Building)と位置付け、ZEH、ZEBへの取り組みが推進されております。

<ZEHの概念図>

図:ZEHの概念図

<ZEBの概念図>

図:ZEBの概念図

エコガラスと建材トップランナー制度

エコガラスとは、板硝子協会が推奨するガラスで、板硝子協会の会員であるAGC(株)、日本板硝子(株)、セントラル硝子(株)の3社が製造するLow-E複層ガラスの共通呼称です。窓ガラスからの熱の出入りを防ぎ、室内を快適に保つとともに冷暖房の効率を上げ、発生するCO2排出量を削減できる地球環境に優しいガラスです。JIS R 3209:2018 複層ガラスに規定される断熱性による区分により「エコガラスS」と「エコガラス」に分かれます。

「エコガラスS」と「エコガラス」の区分は、以下の通りです。

エコガラスSは熱還流率(U値)1.5以下、エコガラスは1.5超、4.0以下

建材トップランナー制度とは、経済産業省資源エネルギー庁が、製造事業者に対して、製品の省エネ性能向上を義務付ける制度です。2014年に窓(複層ガラス及びサッシ)が対象となりました。製造事業者は目標年度(2030年度)までに、目標基準値を達成できるよう努力が求められております。目標基準値(ガラス中央部の熱貫流率1.67[W/(㎡・K)]以下)を達成している複層ガラスには基準値達成マークを表示することができます。マーク表示は、熱貫流率が1.5[W/(㎡・K)]以下のLow-E複層ガラス(エコガラスS)に行います。今後、建材トップランナー制度の目標基準値達成マークが複層ガラスの商品選択において大きな判断材料になります。

建材トップランナー制度の基準値達成マーク

<参考情報>

■HEAT20について

HEAT20は、長期的視点に立ち、住宅における更なる省エネルギー化をはかるため、断熱などの建築的対応技術に着目し、住宅の熱的シェルターの高性能化と居住者の健康維持と快適性向上のための先進的技術開発、評価手法、そして断熱化された住宅の普及啓蒙を目的として2009年に発足しました。
HEAT20では、NEB(ノンエナジーベネフィット)及びEB(エナジーベネフィット)に関して検討し、省エネルギー基準を上回る外皮性能グレードを設定、推奨しております。
詳細は以下をご参照ください。

総合カタログ 技術資料編