町工場にメイカーズの場をつくる
綾瀬の基板工場浜田晶則建築設計事務所
中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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地域に開かれた町工場が、新しいものづくりのかたち「メイカーズ・ムーブメント」へとつながっていく。
ウェブ世代によるデジタル製造という新しいものづくりが始まっている。メイカーズ・ムーブメントという潮流であり、オープン・イノベーションとして日本のものづくり全体を変えていくポテンシャルをもっている。
一方で日本のものづくりを支えてきた町工場は閉じられたネットワークのなかにある。その町工場を開いていけば、町工場の知識や技術とメイカーズ・ムーブメントがリンクしていく可能性は高い。
設計に当たり浜田氏がいだいた問題意識のひとつは、準工業地域における工場と住宅の断絶をどう調停するかであった。計画地周辺は工場と住宅が混在している。ただ工場も住宅も地域に対して閉じたビルディングタイプであり、この2つが共存するメリットはない。
施設の目的、コンセプトを反映した構造としての木造軸組、部品としての家具・建具で、能動性、可変性、汎用性、開放感を追求。
構造形式は木造を選び、正方形のグリッドを用いている。集成材の軸組みと建具を基本とし、可動の建具や雨戸でモードチェンジすることができるようにする。汎用性や展開可能性を持ったシステムにすることで、同じ設計コンセプトで異なる規模やプログラムにも適応できるようにするためだ。
ただ、グリッド上部は
立体トラスを組み、幕天井を張っている。張り方によって光の入り方や天井高を制御する。基本は均質な正方形グリッドだが、断面方向は均質なグリッドにしないのだ。空間に多様性を生み出し、居心地の良さをつくるためだ。固有性も見えてくるような場所をつくることを狙っている。
中崎 隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー。1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆、ならびに展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。
設計: | 浜田晶則建築設計事務所 |
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構造設計: | 小西泰孝建築構造設計 |
用途: | 工場・事務所 |
所在地: | 神奈川県綾瀬市 |
主体構造: | 木造 |
主要仕上: |
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敷地面積: | 272.52㎡ |
建築面積: | 155.52㎡ |
延床面積: | 322.50㎡ |
工事予定期間: | 2016年1月~7月 |

浜田 晶則(はまだ あきのり)
1984年富山県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。
浜田晶則建築設計事務所代表。
teamLab Architects共同代表。
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