ライゾマティクス新オフィス移転計画
設計:中川エリカ建築設計事務所文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)

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働く人が働き方に合わせて空間をつくり変えていく。新しいクリエイティブ・ワークプレイスの提案
ワークプレイスのテーマのひとつは組織的知識創造の場をつくることだ。社員のモチベーションの向上、スタッフ間のコミュニケーションの活性化、知識の融合や一体感などが期待されている。そのような空間はクリエイティブ・ワークプレイスなどと表現されている。クリエイティブ・ワークプレイスをつくる時の重要なポイントは、働く人が働き方に合わせて空間をつくり変えていく余地を残すことだ。
プログラムでゾーニングするのではなく、すべての場所をフラットにして、働く人が運用しながら自分たちの場所にしていくオフィス。
ひとりひとりが個性をもって働きながらスタッフ間のコミュニケーションの機会が多くなるように、スタッフ数の専用席以上に席を増やして配置している。ひとりあたり2、3席を用意することで場所を選びながら使っていくことができる。また、執務と打ち合わせスペースに差をつくっていないため、例えばクライアントとのブレストやスタッフ間の打ち合わせ、個人作業が同じテーブルで行われることになる。使い方が重なり合う余地があることで集まる機会も増えるという読みだ。プログラムで ゾーニングするのではなく、すべての場所をフラットにし個人の使い方や集まり方によって場所が生まれ混合していくような空間にしているのだ。
組織は固定化されない。人が入れ替わると集まり方も変わる。このプロジェクトで、中川氏は「使うという創造性」の一歩目を設定している。使用者は一歩目がわからないと踏み出せない。ただ中川氏は全てを設定していない。つくる側と使う側が異なることから、かならずずれが生じ、持続性の限界を迎える時が訪れるからだ。
使用者が一歩目の設定を咀嚼し、運用しながら自分たちの場所にしていく。そして人が入れ替りながら更新されていくのだ。
中崎 隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー。1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆、ならびに展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。
発注者: | 株式会社ライゾマティクス |
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所在地: | 東京都渋谷区 |
主用途: | 事務所 |
既存面積: | 388.18㎡ |
ビッグテーブル: | 95.90㎡ |
構造: | 既存RC造リノベーション (リノベーション部分:木造在来) |
完成時期: | 2015年4月 |
設計者: | 中川エリカ建築設計事務所 |
設計協力者: | 小西泰孝建築構造設計 |

中川エリカ(なかがわえりか)
1983年東京都生まれ。2005年横浜国立大学建築学部建築学コース卒業、 2007年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了、オンデザイン勤務を経て、 2014年中川エリカ建築設計事務所設立。2012年JIA新人賞受賞。 2014年~横浜国立大学大学院(Y-GSA)設計助手。