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Case 35:

山中湖村平野地区交差点 バス待合所

イー・エー・ユー+SUGAWARADAISUKE建築事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)




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観光産業の拠点となるバス待合所整備計画。地域の活性化と村民のアクティビティの起点となる施設を目指す。

イー・エー・ユーの安仁屋宗太氏とSUGAWARADAISUKE建築事務所の菅原大輔氏が手掛けているのはバス待合所の整備計画だ。

計画地は山梨県山中湖村にある。村内には3つの主要な交差点があり、それぞれが村の玄関口になっている。安仁屋氏は2013年度から3つの交差点の基本構想づくりから全体監修までの業務に携わっている。東京大学景観研究室が村の骨格や歴史の調査・研究をしており、連携して研究成果を整備計画に適用している。
「観光産業で成り立っている村だ。これまでは大型バスで来て、富士山の写真を撮って帰っていく。滞在型ではなかった。また観光客が個人旅行者や外国人などに変化している中で村も変わらなければならない。おもてなしの場として玄関口を整備する」(安仁屋氏)。
今回のプロジェクトの対象は3つの交差点のひとつである平野地区の交差点だ。北側、交差点、バスロータリー、南側の4つ工区に分けて整備する。そのなかのバスロータリー工区内のバス待合所と広場の設計監理を菅原大輔氏が担当している。事業主体はバス事業者の富士急行だ。
「平野地区の交差点は湖畔に面しておらず、集落の中心にある。その特徴を生かすため地域のコミュニティをつなぐ『結いの広場』をコンセプトとした。変則の5叉路であり、村民のコミュニティやアクティビティの起点にする」(安仁屋氏)。

多様な居場所をつくるとともに増改築にも対応できる木造フレームシステムを採用。季節や用途、時間帯に合わせて内外を開閉する空間構成に。

バス停は東京・新宿から発着する高速バスの終点である。1日10数便が発着するが、現在の利用者の数は少ない。旅館民宿組合の窓口は裏手にあり、利用している人たちには不便だ。また寒冷地域だが、待合所もない状態だ。

新設するバス待合所は旅館民宿組合の観光案内施設やトイレを内部に含む。空間構成は外部、庇下の空間、内部の中間領域、内部空間からなり、季節や用途、時間帯に合わせて内外を開閉する。
「動線と柱が交差しない三角グリッドを採用し、多様な居場所をつくるとともに増改築にも対応できる木造フレームシステムを採用する。異なる用途になる可能性も考え、構造壁はコンパクトにして端に寄せる。基礎立ち上がりを外まで出しており、ベンチの脚にしている」(菅原氏)。
ロータリー工区は北工区とともに地域の中心、顔になる場所である。一体的な空間にするために舗装パターン、建物の向き、周辺を含めた動線を考慮して計画している。北工区は2棟の古民家を改修した多目的施設であり、イー・エー・ユーと文化財保存計画協会が基本設計、デザイン監理を行い、地元の建築設計事務所の実施設計で2017年夏に完成している。
南工区は1.8m~2mのレベル差があり、それを解消するために広場を設ける。「ご神木祭り」という地域の祭りができる広場として再整備する。
山中湖村の観光客は減少しているが、2013年に富士山が世界遺産に登録されている。これを機会にこれまでの観光スタイルとは異なるスタイルに切り替えなければという思いが村民の中にある。
「バス待合所は観光産業の拠点であり、地域を活性化する施設だ。観光客と村民の距離感を近くし、記憶に残るような場所にしたい」(菅原氏)。
山中湖村の観光地としてのポテンシャルは高い。ただ富士山の裾野は広く、ライバルも多い。デザインの力が試されている。

山中湖村平野地区交差点
所在地: 山梨県南都留郡山中湖村
全体監修: 山中湖村デザイン戦略会議
   
北工区・南工区
基本設計・デザイン監理: イー・エー・ユー、文化財保存計画協会
実施設計: 馬場設計
敷地面積: 4,118.35㎡
延床面積: 375.71㎡(古民家3棟合計)
階数: 平屋・2階建て
構造: 木造
施工: 北工区-2017年7月竣工、
南工区-2018年7月(予定)
   
バス待合所
用途: バス待合所
設計: 建築-SUGAWARADAISUKE建築事務所
構造-TECTONICA
設備-ZO設計室
照明-灯デザイン
建築面積: 126.27㎡
延床面積: 105.83㎡
階数: 平屋
構造: 木造
施工: 2018年3月(予定)

安仁屋宗太(あにやそうた)
株式会社イー・エー・ユー
1980年沖縄生まれ。
2005年東京大学大学院社会基盤学専攻(景観研究室)を修了後、イー・エー・ユー勤務。
橋などの土木構造物や広場などパブリックスペースのデザインを担当。
主なプロジェクトは、長崎・中央橋(2010年グッドデザイン賞)、広島・太田川大橋(2015年土木学会デザイン賞最優秀賞)、中央区・桜小橋(2017年10月開通)など。



菅原大輔(すがわらだいすけ)
SUGAWARADAISUKE建築事務所
1977年東京生まれ。
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了後、シーラカンスアンド・アソシエイツ、Jakob+Macfarlane、Shigeru Ban architect Europeを経て2007年独立。
「物語る風景」をコンセプトに、まちづくりからから建築、ブランディングから被災地支援に至るまで、分野を横断したデザインを行う。
日本建築学会新人賞ほか、受賞歴多数。
早稲田大学創造理工研究科博士後期課程在籍、日本大学・東洋大学非常勤講師、山梨県景観アドバイザー。