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Case 40:

シラチャのサービスアパートメント

海法圭建築設計事務所
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)




    …クリックすると具体的な詳細が表示されます。

団地とホテルの中間のようなサービスアパートメント。日本人コミュニティのための豊かな生活環境を目指して。

海法圭氏が手掛けているのはサービスアパートメントのプロジェクトだ。計画地はタイのシラチャにある。自動車産業などの工業地帯であり、日本人駐在員が多い町である。

現地での家族連れ日本人駐在員向けのサービスアパートメントの需要増加を見込んで、新規事業を始める日本企業から設計を依頼された。
敷地面積は約7,000㎡、延床面積は約16,000㎡の計画規模だ。一住戸当たりの面積は約105㎡、85家族が生活する場所をつくる。
日本人駐在員の妻は専業主婦が中心であり、子供は乳幼児から小学生までが多い。妻は母親として過ごす時間が多くなるが、母親たちのコミュニティは狭く、人付き合いに閉塞感を抱いている。そのような母親たちが主役の感覚になれる場所であり、多感な時期の子供たちが楽しく活動できる場所でもある空間を提供したいというのがクライアントの要望だ。
敷地が不整形であることにもよるが、できるだけ周辺になじむように異なる高さとボリュームの分棟形式にした。散らばらせることによって街のような集合住宅にしたい。それによって母親たちの帰属意識やコミュニティに対する意識の単位がばらばらになり、多重的な集合体になればいい。またそれぞれの棟のプランも異なるようにし、施設内転居など流動性も担保したい」(海法氏)。
ホテルユースの要素も取り入れる。様々な時間軸の滞在時間を持った人たちが共存することになる。
「ビルディングタイプとして団地とホテルの中間のようなもの。言い方を変えると日常性と非日常性が密接して混在しているような場所だ」(海法氏)。
フットサルのコートやプール、既存の樹木を活かしたアプローチのガーデン、ツリーハウスを中心とした森の遊び場、果樹園など特徴的な空間や庭を散りばめている。

タイの気候、風土を考慮した屋外・半屋外の空間を活かしながら、住戸のプライバシーも守る。様々な風景の環境、大きさ、天井高の場所をつくる。

「まず敷地にグリッドを引いて、ぐるぐるとゆがめながらボリューム・スタディした。そうすることで大きさの異なる11か所の空地を発生させた。母親と子供の動いている姿をできるだけ皆で共有していく。見る見られるの関係をつくり、さらに見える場所と隠れる場所を混在させたかった。相互関係をデザインして皆ができるだけそれぞれの場所でそれぞれの時間を過ごしていると思える場所にしたい」(海法氏)。

廊下を「ロングスペース」と名付け、ベンチなどを置き、様々な滞在スペースにする。基本の幅は3mだ。住戸プランにも対応する形で性質の違う場所をつくる。場所の連続体にしようという意図だ。
「住戸のプライバシーは守りながら、開口の開き具合を変える。プライバシーを守ることでロングスペースに出やすくなる。タイの太陽の動きは日本と異なる。廊下は方角に関係なく設置でき、各住戸に対する接し方も自由にできる。様々な風景、大きさ、天井高の場所をつくる」(海法氏)。
建物全体に風が通るように風の流れを意識して設計している。ペリメーター沿いを積極的に緑化し、ファサードと合わせて生活の窓外風景も緑があふれるようにする。
「住戸部分はRC造だが、ロングスペースは鉄骨造にする。タイではテラス席など半屋外は鉄骨造の構造のみで壁を張らない。その町の感じを採用した。RC造と鉄骨造の混構造がずるずると回っていくという構成にしている」(海法氏)。
セキュリティも重要な項目であり、塀を巡らせている。ただ運河に面している箇所などはメッシュ・フェンスにするなど塀のしつらえを場所ごとに細かく切り替えている。また1階まで車の屋台が入れるエリアを一部設け、地元の人とコミュニケーションが取れるようにする。
タイの気候、風土を考慮した、日本人コミュニティための豊かな屋外・半屋外の空間を持つ生活環境が生まれようとしている。

シラチャのサービスアパートメント
計画名: シラチャのサービスアパートメント
所在地: タイ,チョンブリ,シラチャ
用途: RC造、鉄骨造混構造
構造: RC造、鉄骨造混構造
建築設計: 海法圭建築設計事務所 + Studio MITI
構造設計: 佐藤淳構造設計事務所
設備設計 環境エンジニアリング
外構設計 稲田多喜夫
敷地面積: 6,986㎡
建築面積: 3,962.9㎡
延床面積: 16,503.85㎡
海法氏

海法 圭(かいほう けい)
1982年宮城県生まれ
2005年東京大学工学部建築学科卒業
2007年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了
2007~09年株式会社西沢大良建築設計事務所勤務
2014年~東京大学非常勤講師
2014年~芝浦工業大学非常勤講師