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Case 42:

MULTI PURPOSE SPACE

81A -
文:中崎隆司(建築ジャーナリスト)




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多様性を受け入れながらゆるやかなつながりの秩序を生み出していく。「集まる」と「モードチェンジ」をコンセプトにした校舎増築プロジェクト。

81A -の伊藤州平氏が手掛けているのはインターナショナルスクールの増築プロジェクトだ。

計画地は長野県軽井沢町の緩やかな傾斜を持つ別荘地にある。
全校生徒数約200名の私立高校であり、9割の生徒が外国人である。授業は履修制の少人数で行われ、また全寮制であり教師も一緒に生活している。
約260㎡の木造平屋建ての中に、20~24名でひとつの授業ができる教室3~4室、全校生徒が集まれるホール、ステージを使った演劇の授業に対応したパフォーマンススペース、という3つのプログラムを前提とした、多用途な使用が可能な建築が求められた。
「求められた機能を実現しようとすると閉じた小さな部屋とオープンな広いスペースが必要だ。そこで『集まる』と『モードチェンジ』の2つのコンセプトを考えた」(伊藤氏)。
片廊下の直方体モデルに切り込みを入れて複数のボックスに分け、それらが面で接しないようにリング状に巻いて全体をつくる。セミクローズドモードの場合は吸音性能を施した可動間仕切りを閉め、3つの教室として使用する。オープンモードの場合は可動間仕切りを開け、大きなスペースにする。また組み合わせで可動ステージを置いたパフォーマンススペースがとれ、中央部分のオープンスペースは音のバッファ・ゾーンにもなる。
3つの教室の大きさと形は異なる。全体が大きく見え過ぎないように向きを敷地の傾斜に合わせている。また内部の壁は様々な仕上げにし、向きを変えている。

アクティブラーニングを支援する教育環境として、使う人が自分で自分の場所を見つける、活動を自律的に行うことを想定。

「プロポーションを変えることでその空間でできることも変わる。意識的に操作することで利用者が使う前にそのことがわかるようにしている。また壁面は仕上げも向きも異なる面がランダムにあることで使い方は広がる」(伊藤氏)。

教師も様々な国の出身者であり、その授業のスタイルも様々である。それによって空間の使い方も異なってくる。また全寮制であり、日常生活の場としても機能しなければならない。
「閉じて打ち合わせをする。開けて自由に使う。開け閉めをユーザーが自由にして使用する。使う人が自分で自分の場所を見つける。活動を自律的に行っている総体がしっかり現れることが重要だと思う」(伊藤氏)。
屋根は1枚の大きな薄い面を主とし、壁との取り合いを工夫して光と風を取り込む。
「建築のボディはプログラムや敷地の形状などの関係で緻密に調整してつくる。そのような文脈とは関係なく抽象的な造形にすることによって、特異なものとして認識できるような建ち方の操作をしたいと考えた」(伊藤氏)。
日本の学校建築はアクティブラーニングのベクトルに沿って、片廊下に教室が並ぶ均一な教育環境からフレキシブルなラーニングコモンズエリアのある教育環境に変化している。
「ニュートラルにしすぎずに建築側がもう少しアクティビティが生まれることに対して、いい意味での制限をかけるボリュームの操作、断面を考えたい。インタラクティブなことが起きるような、少し強い空間がある教育環境をつくりたいと思っている」(伊藤氏)。
多様性を受け入れながらゆるやかなつながりの秩序を生み出していく。新たな教育環境の試みに期待したい。

MULTI PURPOSE SPACE
所在地: 長野県
用途: 高等学校(教室、ホール)
建築設計: 8 1 A -
構造設計: 野村圭介
敷地面積: 1300㎡
建築面積: 260㎡
延床面積: 260㎡
階数: 地上1階
構造: 木造
伊藤氏

伊藤 州平(いとう しゅうへい)
1981年北海道生まれ
2003年東海大学工学部建築学科(吉松秀樹研究室)卒業
2005年東海大学大学院工学研究科建築学専攻(吉松秀樹研究室)修了
2008-2017年 シーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)勤務
2017年8 1 A -(ハチジュウイチエー)設立
2018年東海大学非常勤講師