case11:AGC株式会社 鹿島工場新中央工務棟 GLASS&ARCHITECTURE Design Files
file.41 “ETFEフィルムによる開口部の「居住性」と「環境デザイン」
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基本図面 開口部詳細図
窓部位を構成する新しい材料には解決すべき課題も多い。ここで代表的なハードルとその解決策を。また新しい材料だからこそ実現できるデザインについて。
開口部外観
 

——ズバリ言ってETFEフィルムの窓部材としての弱点は何でしょうか。

A/O: 製品としての歴史の長い板ガラスに比較して、という意味で言えば主として設計・施工上で解決すべき点はいくつかあります。ひとつは「遮音」です。遮音性能は質量則にもとづくため、ガラスに比べ比重の軽いフィルムに遮音性能を期待することは極めて難しいといえます。今回の物件では、室内仕上げに吸音性の高いものを選択することも解決策のひとつでした。
もうひとつは「熱」です。太陽光の直射熱ではなく、炎のような局部的な高温です。ETFEフィルムは防火地域内の「延焼の恐れのある部分」の開口部材には使えません。

——ではガラスに勝る点は?

A/O: 設計次第で今までにない形を創ることができること。建築開口部は都市計画や地域地区条件により制約を受けますが、内部開口部や間仕切りにはフィルムによる形状の自由さを発揮できます。また外部開口であってもドレンチャー設備や防火シャッターの併用により自由さを獲得できる可能性があります。
しかしそもそもこの材料の機能をガラスと比べることにはあまり意味がないと思います。新しい素材の新しい使い方への挑戦は建築設計の楽しさでもあります。

 
2階ロビーから吹き抜けを通して見る
 

——そういえばこの建物の1階エントランスを入った時、吹き抜け上階のETFEフィルムを通して入ってくる光がとてもすがすがしく新しい感覚でした。

A/O: ガラスを通して入ってくる通常の光の感覚とは少し異なりますね。1階ロビーにはAGCのホワイト系のカラーガラスを内装壁面に使いましたが、それとの相乗効果があるのかもしれません。

 
2階から1階ロビー見下ろし