case7:ヤマハ銀座ビル
GLASS&ARCHITECTURE Design Files
file.27 金箔合わせガラスの採用
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概要 基本図面
伝統と革新の融合——企業イメージを表現するために、新開発の高透過金箔合わせガラスをファサードに採用。銀座の街に溶け込み、かつ印象的なファサードを実現させた。
「職人技を、現代のテクノロジーで封じ込めているのです」
左/正面ファサード昼景。右/同夕景。ファサードには濃淡の異なる2種類の金箔合わせガラスと透明、乳白色の計4種のガラスを用いており、時間帯や天候によって見え方が変わる。昼間は景色や天候の移ろいを映し出し、夜間は内部空間を表出する。
写真:鈴木研一


−− ガラスをファサードに使われたのは、なぜでしょう。

茅野  まずはヤマハから「伝統と革新の融合」と「音や楽器を感じさせる」という2つの大きなテーマの提示がありました。そこで我々は、ガラスのショーケースの中に巨大な楽器が収納されている、というイメージを提案したんです。

−− ガラスに金を挟み込むというアイデアが出てきた経緯を教えてください。

茅野  ヤマハからは、クールな雰囲気を持つガラスという素材を暖かい印象にすることはできないか、という宿題をいただきました。その答えとして我々は、合わせガラスの間に何かガラスを有機的に感じさせる素材を挟むことで、ガラスの冷たさを消しながら、その長所を引き出すことができるのではないかと考えました。

−− ここで金箔という素材を採用された理由を教えてください。

茅野  ガラスに挟み込む素材をいろいろと試して、機能と見え方の両方の理由から金箔を選択しました。ガラスが透けて見えるように金箔を均一に撒いていますが、これは金箔を茶漉しのようなものに入れて、職人さんが息をひそめて一気に撒く、という方法でつくられています。つまり職人技を現代のテクノロジーで封じ込めているんですね。

鈴木  外装に金箔を使った合わせガラスを採用するのは日本で初めてなので、20年ほどの再現期間で試験を行い、耐久性を検証しています。

 
金箔を撒く職人
 
中間膜を引き剥がし接着力を検証するピール試験と、
耐熱性などを検証する耐熱・耐久試験。

茅野  最後まで悩んだのは、ガラス同士を接合するジョイント部(目地)の処理でした。ガラス以外のものの存在感をなくすためにシリコンのシールだけで終わらせようとも考えていましたが、合わせガラスの保護としてシールが切れてもガラスエッジに直に雨がかからないよう、幅22ミリの目板というカバー材をつけることにしたのです。

白井  実際にできあがると、22ミリというスケールは通常のサッシなどに比べてもかなり小さいので、意外に存在感がないんです。また、ガラス周囲付近に金箔をつけると劣化の問題が出てくるので、端部に余白を残しています。目板があることでその余白も見えなくなり、結果的にはデザイン的にもカチッとした印象になりました。

金箔合わせガラス構成図