今回は、Vol.3に引き続き、ペアガラスの断熱性について解説します。
ガラスの断熱性は、JIS R 3106 に基づいて計算された『熱貫流率』で表されます。
- ●『熱貫流率』って何のこと?
- 壁や窓などの各部位で、両側の気温が異なるときに、
暖かい側から冷たい側に向けて、
熱が壁や窓などを通過します。
ガラスの内外の温度差が1度あったときに、
1時間あたり、ガラス1m 2 を通過する熱量を
ワットで表したものが『熱貫流率(U値)』で、
数値が小さいほど断熱性に優れていることを表します。
単位は、「W/m 2・K」で、
「ワット・パー・ヘイベイ・ケルビン」と読みます - ●各種ガラスの熱貫流率
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品種(板厚構成) 熱貫流率 U値
(W/m 2・K)単板FL5 5.9 フロートペアガラス
FL3+A6+FL33.4 フロートペアガラス
FL3+A12+FL32.9 サンバランス
SBQ3+A12+FL31.7 ガス入りサンバランス
SBQ3+Ar 12+FL31.4 ※ FL:透明フロート板ガラス SBQ:Low-E ガラス A :空気層 Ar :アルゴンガス層
- ●中空層の断熱効果
- 2枚のガラスの間に封入されている空気の熱伝導率(熱の伝わり易さを示す値)は、
ガラスに比べて約30分の1と小さいため、熱移動が小さくなります。
この中空層を大きく取る程、熱移動が小さくなって、断熱性が向上します
(上表のフロートペア3+A6+3 と3+A12+3では、A12 の方が、U値が小さいですね)。
中空層は12~15ミリ以上になると中空層内の空気が動きはじめます。
この空気の動きによる熱移動現象を対流伝熱といい、熱移動量が一定量となるため、
断熱性はそれ以上向上しません。
一般的な空気層の最大厚みである12ミリは、ここからきているのです。
また、空気の代わりに熱伝導率の低い気体(アルゴンガスなど)を封入すると、
断熱性は更に向上します。 - ●単板ガラスと複層ガラスの断熱性比較
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ある寒い冬の日、外は気温7℃ですが、家の中は、
暖房で室温22℃です(温度差15℃)。
リビングの窓は、テラスタイプ幅3.5×高さ2.2mなので、
サッシ見付を除くとガラス面積は約6.7m 2。
日中、7 時間暖房をして、室温を一定にした場合の、
FL5(U 値5.9W/m2・K)とサンバランス3+A12+3(U値1.7W/m2・K)の
窓から逃げる熱量を比較しましょう。FL5 の窓から逃げていく熱量は、
5.9W/m 2・K×6.7m2×15℃×7hr ≒ 4151W
サンバランスの窓から逃げていく熱量は、
1.7W/m 2・K×6.7m2×15℃×7hr ≒ 1196Wなんとその差は、実に2955W!
これは大型石油ファンヒーターを"中"程度のパワーで一時間余分に運転させたのと
同じぐらいの熱量をロスすることになります。
もったいないですね。やっぱりサンバランスにしましょう!