小嶋伸也(以下、伸也):重い建築ではなく、移動して誰でも作れることを考えて、柔らかく、弱く、シンプルな組積造というコンセプトで設計したもの(mobile store for fashion designer、SDレビューSD賞受賞作品、2015年)でしたが、実現はしませんでした。その後、いろいろな人に興味をもっていただいたのですが、ずっと実現しないまま。それが、今年(2018年)になって、知人の紹介で実現することになりました。実現にあたっては、香取さんと話し合い、全体のボリュームや内部の構造を発表会場に合わせて設計し直しました。防災頭巾を組み合わせてドームをつくるのですが、その展開図に合わせて、香取さんが絵を描き下ろしてくれました。香取さん、この作品のコンセプトに結構共感してくださって、本当にアートと建築の密なコラボレーションができたと思っています。今回、3年越しでようやく実現できたことは、本当に感慨深いものがあって、僕たちにとっては、これが現時点での代表作だと思っています。