防火・耐火ガラス

建物を設計する際、火災に対する予防処置を施しておくことは最も重要な要素ですが、一般的なフロート板ガラスは火災の熱によって割れてしまい、脱落してしまうと炎の出入りを抑えることはできません。

■防火設備(20分間遮炎性能)について

以下の体系図は、建築物に求められる防火規制の中で、ガラスを使用する場合に要求される性能と主な商品の関係を示したものです。
耐火建築物、準耐火建築物において外壁の延焼のおそれのある部分、あるいは防火地域又は準防火地域内にある建築物で耐火建築物および準耐火建築物以外のもので、その外壁の延焼のおそれのある部分に開口部を設ける場合は、20分間の遮炎性能を有する窓(防火設備)とする必要があります。

ガラスを使用する場合に要求される性能と主な商品の関係図

  • 延焼のおそれの
    ある部分
  • 防火設備の規定
    (仕様規定、性能規定)
  • 防火設備の構造方法
    (仕様規定)
  • 防火設備の大臣認定
    (性能規定)

延焼のおそれのある部分

隣地境界線、道路中心線、または同一敷地内の2以上の建築物相互の中心線から、1階部分は3m以下、2階以上の部分は5m以下の距離にあたる部分が該当します。

延焼のおそれのある部分のイラストA
延焼のおそれのある部分のイラストB
延焼のおそれのある部分のイラストC

なお、隣地境界線と壁面が正対しない場合には、角度に応じて緩和することができます。

防火設備の規定(仕様規定、性能規定)

防火設備は、政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるか、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。

防火設備の規定に関する説明図

防火設備の構造方法(仕様規定)

防火設備に適合する構造方法(仕様規定)は、平成12年建設省告示第1360号 「防火設備の構造方法を定める件」 により、規定されています。
従来から規定されていたスチール、またはステンレス製枠と網入板ガラスの組み合わせの他に、近年の改正により、耐熱強化ガラス・マイボーカJ がご使用いただける組み合わせがあります。
枠の種類、開閉形式、ガラスの種類や構成、寸法、納まりなどが詳細に決められていますので、以下、および告示本文や一般社団法人 建築開口部協会の発行資料をご確認の上、内容を遵守してください。

  • ※「防火設備の構造方法を定める件(告示)」 の参考資料(令和6年4月17日発行)

耐熱強化ガラス・マイボーカJ を告示の例示仕様としてご使用いただける範囲の概要

ガラス​ 寸法範囲
(躯体開口)
商品名​ 種別 板厚、構成
マイボーカJ 単板 6.5、8ミリ 幅:700~1200mm
×
高さ:850~2400mm
材質:鉄材(スチール)又は鋼材(ステンレス)
開閉形式:はめごろし戸(FIX窓)
サンバランス
マイボーカJ
複層 マイボーカJ
(6.5、8ミリ)
+中空層+
Low-Eガラス
(5、6、8、10ミリ)

対象告示: 平成12年建設省告示第1360号 「防火設備の構造方法を定める件」
(最終改正:令和5年国土交通省告示第225号)

<告示本文 (抜粋)>

第一の六

枠を鉄材又は鋼材で造り、かつ、次のイ又はロのいずれかに該当する構造としたもの

  1. ロ.次に掲げる基準に適合するもの
    1. (1)はめごろし戸であること。
対象となる枠は、スチールまたはステンレスサッシのはめごろし戸(FIX窓)です。
    1. (2)次のいずれかに該当するガラスが用いられたものであること
    1. (i)耐熱強化ガラス(厚さが6.5ミリメートル以上であり、かつ、エッジ強度が250メガパスカル以上あるものに限る。以下同じ。)
耐熱強化ガラス <マイボーカJ> 6.5ミリ、8ミリは、エッジ強度250MPa以上を満足しており(JIS R3223耐熱強化ガラス・Ⅱ類の認証取得)、ご使用いただけます。
    1. (iii)複層ガラス(耐熱強化ガラス、耐熱結晶化ガラス又は積層ガラス(中略)及び低放射ガラス(厚さが5ミリメートル以上であり、かつ、垂直放射率が0.03以上0.07以下であるものに限る。以下同じ。)により構成されるものに限る。以下この号において同じ。)
ガラス構成 <マイボーカ・サンバランス>がご使用いただけます。
Low-Eガラス Low-Eガラスは板厚5ミリ以上で、「アクアグリーン」、「ピュアクリア」、「スーペリアクー ル」、「ブルーグレー」の4種が対象になります。
    1. (3)次に揚げるガラスの種類(複層ガラスにあっては、これを構成するガラスのうち一の種類)に応じてそれぞれ次に定める開口部に取り付けられたものであること。
    1. (i)耐熱強化ガラス 幅が700ミリメートル以上1200ミリメートル以下で高さが850ミリメートル以上2400ミリメートル以下であるもの
寸法範囲 寸法範囲は、躯体開口部の寸法で、幅700~1200mm、高さ850~2400mmです。
ガラスの寸法範囲は、より狭くなります。

寸法範囲画像

    1. (4)火災時においてガラスが脱落しないよう、 次に揚げる方法によりガラスが枠に取り付けられたものであること。
    1. (i)ガラスを鉄材又は鋼材で造られた厚さが3ミリメートル以上の取付部材(ガラスを枠に取り付けるために設置される部材をいう。以下この号において同じ。)により枠に堅固に取り付けられること。
    2. (ii)取付部材を鋼材で造られたねじ、ボルト、リベットその他これらに類するものにより枠に250ミリメートル以下の間隔で固定すること。
取付部材 取付部材(押し縁)は、スチールまたはステンレス材、厚さ3mm以上で、ねじピッチ250mm以下で固定する。
    1. (iii)ガラスの下にセッティングブロック(鋼材又はけい酸カルシウム板で造られたものに限る。以下同じ。)を設置すること。
ずり下がり防止用
セッティングブロック
火災時のガラスのずり下がりを防止するため、鋼材またはけい酸カルシウム板のセッティングブロックを設ける。
    1. (iv)ガラスの取付部分に含まれる部分の長さ(以下「かかり代長さ」という。)を次に揚げるガラスの種類に応じてそれぞれ次に定める数値以上とすること。
    1. (一)耐熱強化ガラス又は耐熱結晶化ガラス 7ミリメートル
    2. (二)複層ガラス 13ミリメートル
ガラスかかり代 ガラスのかかり代の寸法は、単板で7mm以上、複層ガラスでは13mm以上とする。
    1. (5)火災時においてガラスの取付部分に隙間が生じないよう、取付部分に次に揚げる部材をガラスの全周にわたって設置すること。
    1. (i)シーリング材又はグレイジングガスケットで、 難燃性を有するもの(シリコーン製であるものに限る。)
    2. (ii)加熱による膨張する部材(黒鉛を含有するエポキシ樹脂で造られたものに限る。以下「加熱膨張材」という。)
副資材 シーリング材、加熱膨張材をガラスの全周にわたって隙間なく設置する。
シーリング材、グレイジングガスケットは難燃性シリコーン製とする。

防火設備の大臣認定(性能規定)

サッシやガラスなどの構成材料を一体とした窓やドアの製品ごとに指定評価機関での防火試験に合格することで、国土交通大臣の認定を受けることができます(個別認定)。
防耐火性能試験の方法は指定評価機関の評価業務方法書に定められていて、ISO規格に基づいた加熱曲線で防火設備は20分間加熱します(特定防火設備は60分間加熱)。合否の判定基準は所定加熱時間の間、イ~ハを満足することです。

  1. イ.非加熱側へ10秒を超えて継続する火災の噴出がないこと。
  2. ロ.非加熱面で10秒を超えて継続する発炎がないこと。
  3. ハ.火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を生じないこと。

個別認定は、通常サッシメーカーが、窓やドアの商品毎に認定を受けています。
使用できるガラスの仕様については、認定を取得したメーカーへお問い合わせください。
また、新たに防火設備大臣認定の取得をご検討される場合には、事前にAGCまでご連絡ください。

防火標準加熱温度曲線図と防火試験例画像

防火基準について

木造建築物の多い日本では、これまで多くの都市災害を経験してきました。そのため、建築基準法・同施行令では火災に対して厳しい規定が設けられています。

  1. 対象地域による防火規定
  2. 建築物に対する防火規定
  3. 火災発生時の避難及び消火活動の規定

これらの規定のうち、では開口部に対する防火対策として板ガラスが関連します。では非常用進入口に替わる窓として板ガラスが関連します。

部位別の防火ガラスの選定

建物の部位により求められる防火基準が異なります。安全でかつ開放的な防火ガラスをお使いください。

  • 防火設備用ガラス
  • 特定防火設備用ガラス
  • 1時間耐火間仕切り壁
  • 30分耐火屋根用ガラス

防火設備用ガラス

防火戸には、防火設備と特定防火設備の2種類があります。
防火設備は、主として開口部からの延焼防止を目的として、主に外壁の開口部に用いられる防火戸(一部防火区画にも使用)です。防火設備には、20分間の防火性能(遮炎性、遮煙性、非損傷性)が求められます。

網入板ガラス ヒシワイヤ/クロスワイヤ

<ヒシワイヤ/クロスワイヤ>は、成型過程のガラスの溶融生地に、金属網を挿入した網入板ガラスです。封入されている金網によって破片が脱落しにくく、火炎や火の粉の侵入を防ぐ効果があります。
防火設備や30分耐火屋根に使われる最もポピュラーな防火ガラスです。

耐熱強化ガラス マイボーカ/マイボーカ J

<マイボーカ>および<マイボーカ J>は、高い防火性能と強度を実現したワイヤレス防火ガラスです。防火ガラスとして一般的に使用されている網入板ガラスでは実現できない、クリアで透明感があり、透視性に優れた防火ガラスです。
<マイボーカ J>は、告示(平成12年建設省告示第1360号 、最終改正:令和5年国土交通省告示第225号)に規定されている防火設備の例示仕様のガラスとして、個別に大臣認定を取得せずにご使用いただくことが可能です。

低膨張防火ガラス ピラン

<ピラン>は、ホウケイ酸ガラスを熱処理して耐熱性を高めた、透明度が高く網のない低膨張防火ガラスです。
群を抜く耐熱性で、特定防火設備に最適です。高い透明性と耐火性が同時に求められるショーウィンドウや、地下街のショップなどにおすすめです。

特定防火設備用ガラス

防火戸には、防火設備と特定防火設備の2種類があります。
特定防火設備は、特に長時間の遮炎を要求される防火区画や防火壁の開口部、避難階段への出入口などに用いられる防火戸で、60分間の防火性能(遮炎性、遮煙性、非損傷性)が求められます。

低膨張防火ガラス ピラン

<ピラン>は、ホウケイ酸ガラスを熱処理して耐熱性を高めた、透明度が高く網のない低膨張防火ガラスです。
群を抜く耐熱性で、特定防火設備に最適です。高い透明性と耐火性が同時に求められるショーウィンドウや、地下街のショップなどにおすすめです。

1時間耐火間仕切り壁

1時間耐火間仕切り壁には、主として火災による建物の倒壊防止、延焼防止を目的として1時間の耐火性能(遮炎性、遮煙性、遮熱性、非損傷性)が求められています。試験は、加熱温度がISOに規定されている標準加熱温度曲線となるよう1時間の加熱を行います。遮炎性能だけでなく、非加熱面の温度が、当該面に接する可燃物が延焼するおそれのある温度以上に上昇しないことが求められます。

耐火・遮熱積層ガラス ピロベル

<ピロベル>は、板ガラスとケイ酸ソーダ系樹脂を交互に積層した、耐火・遮熱積層ガラスです。火災時の熱放射を遮断、避難経路・時間を確保します。ガラス飛散防止や耐貫通性に優れ、高い遮音性も実現できる、透明耐火間仕切り壁として、防火区画から閉鎖的なイメージを払拭します。

30分耐火屋根用ガラス

耐火建築物等の屋根に設置する天窓(トップライト)は、令第107条により屋根として30分の耐火性能を求められます。また、平成12年建設省告示第1399号に、この技術的基準に適合する屋根の構造方法として、「鉄材で補強された網入ガラスで造られたもの」が規定されています。

網入板ガラス ヒシワイヤ/クロスワイヤ

<ヒシワイヤ/クロスワイヤ>は、成型過程のガラスの溶融生地に、金属網を挿入した網入板ガラスです。封入されている金網によって破片が脱落しにくく、火炎や火の粉の侵入を防ぐ効果があります。
防火設備や30分耐火屋根に使われる最もポピュラーな防火ガラスです。