建材一体型太陽光発電(BIPV)とは?脱炭素化の鍵「発電ガラス」の可能性について

公開日:2026年1月23日

世界各国でカーボンニュートラルを目指す動きが加速するなか、建築物の脱炭素化が重要なポイントとなっています。こうしたなか、BIPVの一つである「発電ガラス」が注目されています。

BIPV(Building Integrated Photovoltaics:建材一体型太陽光発電)は、屋根材や外壁材、窓ガラスなどの建材が、本来の機能を保ちながら太陽光発電を行う技術です。建材自体に発電機能を持たせることで、建物のデザインを損なうことなく再生可能エネルギーを導入できる選択肢として利用されています。

特に都市部では、デザイン性を損なわずに発電機能を付加できる点が評価され、オフィスビル、商業施設、公共施設、駅舎などでの採用が進んでいます。外観の意匠性が求められる建物において、BIPVは設計上の制約と省エネ要件の両立を可能とする技術です。

BIPVには屋根材一体型、壁材一体型などさまざまな種類がありますが、本記事では、採光と発電を同時に実現する「発電ガラス」について、発電ガラスの仕組み、建材としての性能、導入事例などをご紹介します。

社会全体の取り組みと太陽光発電が注目される理由

中間目標のイラスト

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、社会全体で環境への取り組みが加速するなか、各国政府や都市においてもその対応が強く求められる時代となっています。

特に日本においては、政府が「2050年カーボンニュートラル」の実現を国際公約として掲げ、その中間目標として「2030年度までに温室効果ガス排出量を46%削減(2013年度比)する」との目標を設定しています。

この国家目標の達成には、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の導入・拡大が不可欠です。

日本政府のエネルギー政策(第7次エネルギー基本計画)が示す太陽光発電導入の加速目標

国のエネルギー政策の根幹をなすのが、再生可能エネルギーの導入目標です。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画 では、2040年度の電源構成において再生可能エネルギーが占める比率を4〜5割程度とする目標が示されました。

このうち、太陽光発電だけで全体の23〜29%を賄うという、数値目標が設定されています。 この目標が示唆するのは、太陽光発電の導入ペースをこれまで以上に加速させる必要があるという事実です。2023年度時点での太陽光発電の比率は9.8% であり、目標達成には今後数年間で累積導入量を大幅な導入拡大が求められています。

改正建築物省エネ法による太陽光発電導入の後押しと義務化の拡大

政策目標だけでなく、法的な規制も太陽光発電の導入を後押しする大きな要因です。特に重要なのが、2022年に公布された改正建築物省エネ法です。
この改正により、2025年4月以降に建築確認申請が行われる新築の建築物については、原則としてすべて省エネ基準への適合が義務化されることになりました。

これまでは、大規模な非住宅建築物を中心に省エネ基準への適合義務が課されていましたが、その対象が小規模な住宅やビルを含むほぼすべての新築建築物に拡大されます。その結果、断熱性能の向上(断熱)や高効率な設備の導入(省エネ)だけでは基準達成が困難となるケースが増加すると予想されます。

事業用・公共用など建物の建築時に広がる「太陽光設置義務化」の動き

国レベルの政策や規制に加え、地方自治体レベルでのより踏み込んだ動きも活発化しています。

その象徴的 な例が、東京都が制定した建築物環境計画書制度です。この制度は、建築物の環境負荷低減を促進することを目的に、一定規模以上の新築の建築物などに対して環境配慮を求めるものであり、地域ごとの条例に基づき、地球温暖化対策や循環型社会の実現に重要な役割を果たしています。

また、民間企業においても近年、投資家や消費者は企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みを重視するようになりました。

その結果、企業にとって自社所有のビルでの太陽光発電は、単なる省エネ対策に留まらず、環境問題への積極的な姿勢を社会に示すためのPR戦略としても重要性を増しています。

環境への貢献を可視化する手段として、採用を検討する企業が増加傾向にあります。

狭小国土と課題を抱える日本における太陽光発電のスペース問題

太陽光発電の画像

世界的な潮流の中で太陽光発電への注目は高まっていますが、太陽光発電には必要不可欠なものがあります。

太陽光発電に必要なもの――それは「スペース」です。

当然ながら太陽光発電には広い受光面積が必要になります。広大な土地を必要とするメガソーラーは、山岳地帯が多く平地の少ない日本の国土においては、設置に適した場所が限られます。特に広大な土地を確保することが現実的ではない都市部では、発電スペースの創出が重要になります。

また、大規模な太陽光パネルの設置は景観への影響も大きく、地域社会との合意が難しいなど多くの課題があるのも事実です。

導入容量不足を解決する建物活用とBIPVの重要性

前述の通り、メガソーラーに適した土地は減少しつつあります。この「導入容量のギャップ」を埋めるためには新たな発電スペースの創出が重要になります。

そこで着目されるのは「建物」です。屋根だけでなく、壁面や窓といった未利用の場所が多く残されていることから、発電スペースの創出としてBIPVの役割がますます重要になってくると考えられます。

BIPV(建材一体型太陽光発電)とは

ここでBIPVの定義を改めて確認します。

BIPVは「Building Integrated Photovoltaics」の頭文字を取った略称で、日本語では「建材一体型太陽光発電」と訳されます。これは、太陽電池を建物の一部として組み込み、建材としての機能と発電設備としての機能を一体化させた技術の総称です。

BIPVの最大の特徴は、発電した場所で電気を消費する「オンサイト発電(エネルギーの地産地消)」を実現できる点にあります。これにより、社会生活における電力の最大の消費エリアである都市部において送電ロスを低減できるだけでなく、電力網への負荷を軽減し、災害時の非常用電源としても機能する可能性を秘めています。

BIPVには、屋根材や壁材と一体化した不透明なパネルなど、多種多様な製品が存在します。

建物の構造的課題と「発電ガラス」が切り開く太陽光発電の新たな可能性

建物での太陽光発電導入を検討するにあたっては建物の構造的制約について理解しておく必要があります。

「耐荷重の問題」

太陽光パネルを屋根に設置する場合、建物の強度が十分でないと構造上の問題が発生する可能性があります。

「デザイン・外観への影響」

パネルの設置によって建物の美観を損なう場合があり、特に景観が重要な地域などでは懸念されることがあります。

「風圧力・耐風性の確認」

太陽光発電パネルや発電ガラスは風で飛ばされる、破損するリスクがあります。特に高層建築では、風圧や台風の影響に耐えられる設計が求められます。

「建築物の高さ制限」

太陽光パネルやガラスを設置することで建物の高さが増したり、屋根の形状が変更されたりする場合、用途地域や特定の制限(高さ制限、斜線制限など)を超えることはできません。

屋根の形状が変わることで、近隣建物の採光や通風に影響を与えるため、建築基準法第53条(高さ制限等)に基づく事前確認が必要です。

「景観法との関係」

一部地域では、景観法や都市計画による建築基準法の追加条件に従い、建物の外観に関する規制が適用される場合があります。

特に文化財保護地域や景観保全地域では、地域の景観に悪影響を与えない設計であることを確認する必要があります。

設置場所や状況にもよりますが、これらの問題を解決する太陽光発電の設備として「発電ガラス」が注目されています。

「発電ガラス」はガラス本来の透明性や採光性を活かし、窓やカーテンウォールといった開口部に適用可能な建材としての実力を備えながら発電が可能です。

窓やファサード、トップライトに発電機能を備えた建材に置き換える「発電ガラス」により、新規用地ゼロで発電面を創出できるだけでなく、エネルギー自給率の向上につなげられることから、新たに建設される建築物への導入が進んでいます。

建築用ガラスの性能 × 太陽光発電の性能

発電ガラスとは何か?構造とカスタマイズ性が切り拓く新たな発電ソリューション

発電ガラスが、建材としての強度や安全性を保ちながら、どのようにして電気を生み出すのでしょうか。その多くは、2枚のガラスの間に太陽電池セル(発電素子)を封入した「合わせガラス」と同様の構造を持っています。この構造により、万が一ガラスが破損した場合でも破片が飛散しにくく、安全性能を満たすことが可能です。

発電の原理自体は、一般的な太陽光パネルと変わりません。太陽光が太陽電池セルを構成する半導体に照射されると、電子が動いて電気が発生する「光起電力効果」を利用しています。この基本的な物理現象を、透明なガラスの中で実現しているのが発電ガラスです。

設計上の大きな利点は、そのカスタマイズ性にあります。太陽電池セルの種類、ガラスサイズ、配置間隔などを調整することで、発電効率と可視光透過率(透明度)のバランスをプロジェクトの要求に応じて最適化できます。

例えば、眺望を重視する窓ではセルの間隔を広くとり、西日対策やプライバシー確保が求められる壁面ではセルを高密度に配置するなど、部位ごとに異なる性能を持たせた設計が可能です。AGCの発電ガラス「サンジュール」も、こうしたカスタムメイドに対応した製品の一つです。

セル+ガラス

発電ガラスと太陽光パネルの違い:設置場所・採光性・意匠性の観点からの比較

発電ガラスの導入を検討するうえで、太陽光パネルとの違いを正確に理解しておくことは重要です。両者は同じ「光起電力効果」を利用して発電しますが、建材としての特性において明確な差異があります。

以下では「設置場所」「採光性」「意匠性」という3つの観点から、その違いを具体的に解説します。

【設置場所】

太陽光パネルは、その多くが屋根や地上といった平面的な場所に設置されます。これに対し、発電ガラスは建材そのものであるため、トップライト(天窓)や窓、カーテンウォール、バルコニーの手すりといった垂直面にも「組み込む」ことが可能です。

発電ガラスは、建物の屋根面積が限られている場合や、壁面を有効活用したい場合に、発電可能面積を大幅に拡大できます。

【採光性】

両者の最も決定的な違いは採光性です。従来型の太陽光パネルは不透明であり、設置された場所の採光は完全に失われます。一方、発電ガラスは太陽電池セルの配置を工夫することで、ガラスとしての透明性や採光性を確保することができます。

これにより、室内へ自然光を取り入れながら発電するという、従来は両立し得なかった価値を実現します。眺望の確保や開放的な空間設計が求められる部位においても、発電の選択肢を諦める必要はありません。

【意匠性】

意匠性も大きな差別化要因です。太陽光パネルは規格化された製品を建物に取り付けるため、デザイン上の制約が生じることがあります。しかし、発電ガラスは開口部の形状やサイズに合わせてオーダーメイドで製造することが可能です。

発電ガラスは設計者が意図するデザインを損なうことなく、発電機能をシームレスに統合できます。建物全体の美観を維持、あるいは向上させながら、環境性能を高めることができる点は、設計者にとって大きなメリットだといえるでしょう。

使用箇所画像

発電ガラス導入の具体的な導入事例 ~奥野製薬工業様 施工導入~

発電ガラスの導入は企業の環境意識や社会的責任を社会に示す重要な取り組みとしても注目されています。実際に発電ガラスを建物に採用した先進的な事例として、奥野製薬工業株式会社様の取り組みをご紹介します。

1905年創業の奥野製薬工業様は環境配慮型の設備投資を積極的に推進し、研究開発拠点の屋上には太陽光パネルを設置するとともに、建物の窓の一部にはAGCの建材一体型太陽光発電ガラス「サンジュール」を導入しました。

同社が「サンジュール」の採用を決断した背景には、主に3つの評価ポイントがありました。

「意匠性の高さ」

発電ガラスを建物のデザイン要素として巧みに取り込むことで、優れた外観と企業の環境意識を調和させています。単なる発電設備ではなく「見せる設備」として、企業の先進的な姿勢を社会に発信する役割を担っています。

「垂直設置への対応力」

建材一体型であるため、特殊な部材を必要とせず、一般的な窓枠にも設置が可能です。この施工性と汎用性の高さが、設計の自由度を広げる上で高く評価されました。

「活用スペースの柔軟性」

今回の窓への採用に留まらず、将来的には外構フェンスや庇(ひさし)、トップライトなどへの展開も視野に入れています。限られた敷地や建物のスペースを最大限に有効活用できるポテンシャルも、採用の決め手となりました。

このように、奥野製薬工業様の事例は、発電ガラスが単なる電力供給手段ではなく、企業の価値観や環境配慮の姿勢を体現するために活用されている好例といえるでしょう。

発電ガラス市場と今後の成長予測について

発電ガラスを含むBIPV市場は、再生可能エネルギーへの関心の高まりと、建築分野における環境性能向上の需要を背景に、世界的に力強い成長を続けています。

この技術が、もはや一部の先進的な事業で採用される特殊な製品ではなく、建築市場の主流になりつつあることを、以下で客観的なデータと共に解説します。

発電ガラス市場の成長予測と今後の市場規模

複数の市場調査会社の報告書は、BIPV市場が今後10年間にわたり高い成長率で拡大していくという点で一致した見解を示しています。

これらの予測は、各国の環境政策、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及、そして企業のESG経営への関心の高まりが市場成長の強力な追い風となっていることを裏付けています。

2030年・2050年に向けたBIPV市場の躍進と建築分野での標準化の展望

BIPV市場の長期的な成長を支えているのは、2030年の中期目標、そして2050年のカーボンニュートラル達成という、国内外の揺るぎない長期目標です。これらの目標は、単なる努力目標ではなく、多くの国で法的な枠組みや具体的な政策行程表によって裏付けられています。

建築分野においては、新築建物のエネルギー基準の段階的な引き上げや、既存建物の省エネ改修の促進といった形で、この長期目標が具体化されています。

この大きな流れの中で、建物の外皮自体がエネルギーを生み出すBIPVは、将来の建築物における標準的な構成要素の一つとなっていく可能性が高いと考えられます。

発電ガラス導入に向けて利用できる補助金制度

発電ガラスの導入を検討する上で、初期投資費用は重要な判断材料となります。幸い、政府もBIPVの普及を後押しするため、導入費用を軽減するための補助金制度を設けています。設計提案の際には、これらの制度を活用することで、施主の負担を軽減し、事業の実現可能性を高めることが可能です。

代表的な制度として、環境省が所管する「窓、壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業」が挙げられます。この事業は、建材一体型の太陽光発電設備の導入を支援することを目的としており、発電ガラスも対象となります。

この制度の大きな特徴は、発電ガラスの製品費だけでなく、設置に係る工事費なども含めて補助対象となる点です。補助率や上限額は設備の種類によって異なりますが、施主にとって導入を後押しする大きな要因となるでしょう。

窓、壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業(※1)の詳細は以下のとおりです。

対象設備 補助率 補助上限額
窓と一体となった太陽光発電設備 補助対象経費の3/5(60%) 5,000万円
壁等と一体となった太陽光発電設備 補助対象経費の1/2(50%) 3,000万円
  • ※2025年7月24日までの公募期間となっており、次回公募は未定

発電ガラスが建築とエネルギーの未来をどう変えるか(まとめ)

日本のエネルギー政策目標の達成には、太陽光発電の導入量をさらに拡大することが不可欠です。しかし、特に都心部においては、従来型の太陽光発電設備を設置するための場所を確保することが大きな課題となっています。

発電ガラスは、これまで採光や眺望のためだけに使われてきた窓や壁面を発電スペースとして活用する技術です。建物の外皮に発電機能を組み込むことで、新たな設置場所を確保することなく再生可能エネルギーの導入を進めることができます。

2025年度からの省エネ基準適合義務化や、東京都などで先行する太陽光設置義務化の動きは、企業に対して新たな対応を求めています。発電ガラスは、これらの要件に対応しながら、建築意匠の自由度を保つための選択肢の一つです。

建物の限られたスペースを有効活用し、設計上の制約と省エネ要件を両立させる手段として、発電ガラスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

建材一体型太陽光発電ガラス(BIPV) サンジュール

ロゴ:サンジュール

AGCが提供する発電ガラス「サンジュール」は、こうした未来の建築を実現するための一つの具体的な解決策です。サンジュールは、単なる規格製品ではありません。ガラスの寸法や構成、発電セルの種類や配置を、個別の計画ごとに自由に設計できる、その個別設計への対応力の高さが最大の特徴です。これにより、設計者が思い描く意匠と、建物に求められるエネルギー性能を高い次元で両立させることが可能となります。

サンジュールは2001年の事業開始以来、国内外で約260件(2023年3月時点)に上る豊富な納入実績を持っています。

私たちは、設計段階のご相談から、製造、施工、そしてアフターメンテナンスに至るまで、一貫してお客様の事業計画を支援します。ZEBの実現、ESG経営の推進、そして新しい時代の建築意匠の創造に向けて、ぜひ「サンジュール」の導入をご検討ください。

より詳しい製品情報や施工事例については、以下の製品ページをご覧ください。
AGC サンジュール 製品ページ